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June 0162015

 バス停の屋根は南瓜の花盛り

                           富川浩子

かにも初夏らしいが、ちょっと珍しい情景。微笑を浮かべる読者が多いだろう。バス停にグリーンのカーテンをかけて、乗客に涼を呼ぶ効果をねらったものかもしれない。だが、戦中戦後の一時期を知っている私などには、涼を呼ぶどころか暑苦しさしか迫ってこない。バス停の屋根どころか、当時は民家の屋根にまで南瓜が栽培されていた。むろん、食料不足を補うための庶民の智慧がそうさせたものである。そして、南瓜が熟れるころともなると、どこの家庭でも食事ごとにほとんど主食として南瓜が食卓に上がったものだった。来る日も来る日も南瓜ばかり。嘘みたいな話だが、人々の顔が黄色くなっていった。だから私より上の年代の人のなかには、いまだに南瓜を嫌う人が多い。同じ句を読んでも、感想は大いに異なる場合があるということです。『彩 円虹例句集』(2008)所載。(清水哲男)




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