June 0962015

 踏石の歩巾に合はぬ夕薄暑

                           松島あきら

などに一定の間隔で置かれた踏み石は基本的には歩幅に合わせて計算されているようだが、石の大きさが歩幅に加味されていない場合もあり、テンポ良く歩くのはなかなか難しい。小さく小刻みに渡ればいいのだが、なんだか踏み石に歩幅が制限されているようで面白くない。二つ三つ歩くうちに、タイミングをつかんでも、そのうちまたズレてくる。薄暑とはうっすら汗ばむ陽気という比較的新しい気分を表す季語である。これを心地よいと捉えるか、わずかに憂鬱と捉えるかは個人差によるところが大きい。そのあたりも含め、言葉にするほどでもなく発生する現代人のささやかないらだちに見事に一致するように思われる。『殻いろいろ』(2015)所収。(土肥あき子)




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