早い地方では来週から甲子園への予選がはじまる。夏はきぬ。(哲




2015ソスN6ソスソス12ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

June 1262015

 翼あるものみな飛べり夏の夕

                           井上弘美

類は空中を飛ぶために前足を発達させ翼を得たと言われる。翼あるものみな飛ぶ、飛行機だって両翼を持っている。ギリシャ神話のイカロスは鳥の羽を集めて、大きな翼を造った。高く、高く飛んでしまったため太陽に近づくと、羽をとめた蝋(ろう)が溶けてしまったそうだ。とある夏の夕暮れにねぐらへ帰る鴉を飽きることなく見送って妄想を燻らせる。わが人体を如何に浮遊させんか、、、さてそれからの吾が夢は一体どこへ羽ばたくのやら、夜が短い。他に<母の死のととのつてゆく夜の雪><月の夜は母来て唄へででれこでん><花食つて鳥は頭を濡らしけり>などあり。『井上弘美句集』(2012)所収。(藤嶋 務)


June 1162015

 ぎりぎりの傘のかたちや折れに折れ

                           北大路翼

月11日は「傘の日」らしい。台風や雨交じりの強風が吹いたあと、道路の片隅にめちゃくちゃになったビニール傘が打ち捨てられているのを見かける。まさに掲句のように「ぎりぎりの傘のかたち」である。蛇の目でお母さんが迎えにくることも、大きな傘を持ってお父さんを駅に迎えに行くこともなくなり、雨が降れば駅前のコンビニやスーパーで500円のビニール傘を購入して帰る。強い衝撃にたちまちひしゃげてしまう安物の傘は便利さを求めて薄くなる今の生活を象徴しているのかもしれない。掲句を収録した句集は新宿歌舞伎町を舞台に過ぎてゆく季節が疾走感を持って詠まれているが、傘が傘の形をした別物になりつつあるように、実体を離れた本意で詠まれがちな季語そのものを歌舞伎町にうずまく性と生で洗い出してみせた試みに思える。「饐えかへる家出の臭ひ熱帯夜」「なんといふ涼しさ指名と違ふ顔」『天使の涎』(2015)所収。(三宅やよい)


June 1062015

 飛魚や隠岐へ隠岐へと海の風

                           渡部兼直

日、魚屋の店先にならんでいる、光っているイキのよい飛魚を見つけて買った。「飛魚」は夏の季語。南の種子島から、夏にかけては北海道南部まで北上して行くらしい。大きな胸鰭で海面すれすれに、先を競うように舳先をカッコよく飛ぶ。沖合でのあの姿には惚れ惚れと見とれてしまうし、格別旅情をかきたてる。飛魚が魚というよりも海風そのものになって、隠岐を目ざしてまっしぐらに飛ぶという句である。飛魚の干物のうまさはたまらないものがある。クサヤは最高。掲出句には思い出がある。九年前、東京からわれら詩人四人で、境港から出航して隠岐へ船旅をしたことがある。その際、米子在住の兼直さんが同行して案内してくれた。秋だったが、沖の強い海風を食らいながら島へ渡ったのだ。そのとき舳先を波しぶきあげて、スーイスイと飛魚が飛ぶのを目撃した。そのときの旅がモチーフになっている句かと思われる。お人柄もそうだが、自在で楽しい詩を書く兼直さんは俳句も作る。『続ぽえむかれんだあ』の序に「『俳』のない句では俳句にならない。ただ『短句』である」とある。むべなるかな。他に「飛魚の翅の雫や眉に風」がある。『渡部兼直全詩集2』(2015)所収。(八木忠栄)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます