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July 1472015

 扇風機うしろ寂しき形して

                           伊藤庄平

本に初めて輸入された電気扇風機は1893(明治26)年。スイッチひとつで風が送られる装置は蒸し暑い夏にどれほどありがたかったことだろう。クーラーに圧倒されながらも、現代でも羽根のないタイプなど新機種が登場する。しかし、掲句で描かれる扇風機は新型とはほど遠い昔ながらの扇風機だ。しかも、おしゃべりになった今どきの家電は、お風呂は「沸きました」と知らせ、電話は「着信一件です」と報告するなかで、扇風機は今も昔もひたすら寡黙を通している。風を送り続けるということが「作業」というより「労働」を感じさせるからだろうか。振り続ける首筋にそこはかとない哀愁が漂う。〈入日より取り出すやうに林檎捥ぐ〉〈母子草その名を知りてより折らず〉『初蝶』(2015)所収。(土肥あき子)




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