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January 1712016

 鉛筆の芯に雪解の匂ひかな

                           武井伸子

筆の芯に鼻を近づけると甘い匂いがします。これを雪解の匂いとしたところに飛躍があって新鮮です。たしかに、雪解は早春の草木がかすかに発する息吹を運んでくれるのかもしれません。キーボードやタブレット使用が一般的な現在、鉛筆を使う人はめっきり減りましたが、昨日今日は大学入試センター試験です。全国693箇所で56万本の鉛筆が動くとき、それぞれの会場には甘い香気が漂うのでしょう。受験生は、今まで蓄積してきた知識を鉛筆の芯に託して、堅固な意志を鋭角に削られた鉛筆の先に宿します。問一、問二、問三、「やれそう、やれる」という手応えは、受験生を緊張から解放してランナーズハイに似たある種の快楽へと誘います。「雪解」は春の季語ですが、受験生たちは、いち早くその匂いを実感しているのではないでしょうか。「ににん」(2016年・冬号)所載。(小笠原高志)


January 1612016

 橙の灯いろしぼれり牡蠣の上

                           飴山 實

ともはやおいしそうな句だ、そして美しい。橙を牡蠣の上にきゅっとしぼった、と言っているだけなのだが、大ぶりの牡蠣にやさしい光をまとった橙の雫が数滴落ちて、牡蠣の身はよりいっそうふっくらと輝いている。牡蠣好きにはたまらないがやはり、灯いろ、の方が、灯色、より果汁のとろりとした自然な感じが出て、しぼれり、へのつながりも絶妙だ。生牡蠣にはレモンが添えられることが多いが、以前橙酢というのをいただいてそれがお刺身にとてもよく合ったことを思い出した。個人的には生牡蠣は何もかけずに塩味で食べるのが好みだが、今度橙を試してみたいと思う。『鳥獣虫魚歳時記 秋冬』(2000・朝日新聞社)所載。(今井肖子)


January 1512016

 可惜夜のわけても月の都鳥

                           黛まどか

惜夜(あたらよ)は明けてしまうのが惜しい夜という意味。余白に恋の一夜を感じさせる。川は大川(隅田川)の波間に岸辺の灯り、雲間には月光が辺りを照らしきらめいている。眠れないのか都鳥が乱舞している。因みに都鳥はユリカモメのこと。冬鳥で河口近くや海岸に生息し、春になると頭が黒くなる。伊勢物語の「名にし負はばいざ言問はむ都鳥 わが思ふ人はありやなしやと」と昔から恋にからめた鳥として知られる。語りても語り尽せぬ二人の夜が更けてゆく。月よ都鳥よ値千金の今宵の時を止めてくれ。可惜夜は可惜夜ゆえに尊さがあるのだが。他に<行きたい方へそれからのしゃぼん玉><さくらさくらもらふとすればのどぼとけ><さうしなければ凍蝶になりさうで>など所載。『忘れ貝』(2006)所収。(藤嶋 務)




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