2016ソスN1ソスソス30ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

January 3012016

 縁側におはじき一つ山眠る

                           日原正彦

の句にあるのは遠い記憶の中の穏やかな日差しだ。おはじきは深い海の色に小さく光っている。少しささくれ立った木の温もりを手のひらに感じながらの日向ぼっこは心地よく、見るともなく見ているのは遥かな山の静けさ。読み手の中にもそんな冬日和の景が浮かんでくる。なんとなく捨てないで持っていたおはじきを今、手のひらにひんやりとのせてみた。はじいて遊んだ記憶はさらに遠いが、縁側と共に懐かしい。同じ集中に〈水仙の彼方に光る副都心〉とある。どちらの句も近景と遠景を一句の中に組み合わせて巧みであり、冬日の持つやさしさと鋭さがそれぞれ描き分けられている。(2015)『てんてまり』所収。(今井肖子)


January 2912016

 五位鷺と寒雨の水面見てをりぬ

                           東藤涼子

醐天皇が神泉苑の御遊のとき五位の位を授けたという謂れで「五位鷺」。日本では本州以南で繁殖する留鳥である。分類としてはコウノトリの仲間のサギ科。全長六十センチメートル内外。頭と背は緑黒色,腹面は汚白色,翼は灰色。繁殖期には後頭から二本の長い白色の飾り羽がたれるのが特徴。夜行性で,夕方,水辺で首を縮めて獲物を待ち構える。狙う獲物は魚やカエルなどだが折しもの冷たい雨に思う様には獲物にありつけない。ただ悪戯に流れる時の中で五位鷺も作者もひたすらに水面を眺めて佇むのみである。野生は斯くに厳しい。<霙降り湖の船遅れけり><丸帯を卓に敷きたり節料理><待春の岸辺よ鳥類図鑑欲し>。俳誌「はるもにあ」(2015年3月号)所載。(藤嶋 務)


January 2812016

 冬うらら猫とおんなじものを食べ

                           寺田良治

倍青鞋の句に「水鳥の食はざるものをわれは食ふ」という句がある。空を飛んで遠くの国から渡りをする水鳥が食べるものは軽くて清い印象がある。その裏には肉をはじめあらゆるものを食べて生きている人間の猛々しさが隠されているのだろう。水鳥とおなじものを人が食するのであれば仙人のような気がするが、「猫とおんなじもの」は生活感が漂う。豪華ではなく、ささやかな食を猫と分け合って食べている様子とともに自分の食生活へのペーソスが感じられる。ごちそうや珍味と呼ばれるものに魅力も感じず、お前と同じもので十分だよと膝に乗せた飼いネコに話しかける。「猫まんま」はいいけど、キャットフードはいやだな。『こんせんと』(2015)所収。(三宅やよい)




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