Rq句

February 2622016

 大渦へ巻き込む小渦春かもめ

                           山内美代子

もめ(鷗)が少し春めいてきた海に遊んでいる。人の肌にはまだまだ寒い海風だが野生の鳥たちは羽毛に包まれて平然と群れ遊んでいる。人の眼には遊んでいると見えるけれど本当は生きるための厳しい生業の中にあるのかも知れない。小さな渦に狙った餌が巻き込まれその渦も大きな渦に吸い込まれてゆく。鷗の餌の追走は果たせるだろうか。人の目にひねもすのたりのたりに見える春の海だが、野生のものにとっては厳しい現実がある春先の海ではある。作者は事の成り行きを見守って佇んでいる。趣あるこの墨彩画と俳句集には他に<定年や少しあみだに冬帽子><雲雀笛園児揃ひの黄の帽子><折り合ひをつけて暮して合歓の花>など生活に詩情が溢れた作品が並ぶ。「藤が丘から」(2015年)所載。(藤嶋 務)




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