2016ソスN3ソスソス5ソスソスソスソス句(前日までの二句を含む)

March 0532016

 鳩は歩み雀は跳ねて草萌ゆる

                           村上鞆彦

われてみれば確かに、鳩は首を前後に動かしバランスをとりながら歩いているが、雀はふくらんだ小さな体ごと両脚をそろえて跳ねている。鳥は大きさや生活エリアによってウォーキング派とホッピング派に分かれるというが、なるほどホップすると大きい鳥は体力を消耗しそうだし雀のよちよち歩きは見ていても危なっかしい。そんないつでもどこにでもいる鳥の動きの違いに気づくのも、気づいてすこしほっこりするのも早春ならではだろう。草萌、によって見える青が、鳥たちの動きを引き立てている。今日は啓蟄、空も風も大地もその色をゆるめつつあるが、目覚めたあれこれが這い出して来るのはもう少し先かもしれない。『遅日の岸』(2015)所収。(今井肖子)


March 0432016

 雁帰る千年分の涙溜め

                           山下知津子

年分の涙というから個としての自分亡きあと人の世の代々までの哀しい涙である。雁は北の大陸で繁殖し十月半ばを過ぎるころ日本へ渡ってくる。この雁が春三月ころから大陸への帰途につく。ざっくりと秋分に来て春分に帰ると覚えている。思えば2011年3月11日に東北に大震災が襲った。あれからもう五年、今年もまた春が巡って来た。忘れえぬ悲しみの涙を溜めつつ、空の高みを「棹になり鉤になり」雁が帰ってゆく。他に<三月のわが誕生月をかなしめり><あの日まで杉花粉のみおそれゐし><生も死も抱きてしだれざくらかな>など。「俳句」(2014年5月号)所載。(藤嶋 務)


March 0332016

 立子忌の坂道どこまでも登る

                           阪西敦子

日は雛祭り。星野立子の忌日でもある。立子の句はのびのびと屈託がなく空気がたっぷり感じられるものが多い。例えば「しんしんと寒さがたのし歩みゆく」という句などもそうである。まず縮こまる寒さが「楽し」という認識に自然の順行が自分に与えてくれるものを享受しようとする開かれた心の柔らかさが感じられるし、「歩みゆく」という下五については山本健吉が「普通なら結びの五文字には何かゴタゴタと配合物を持ってきたくなる」ところを「歩みゆく」さりげなく叙するは「この人の素質のよさ」と言っているのはその通りだと思う。掲句の坂道を「どこまでも登る」はそんな立子のあわあわとした叙法を響かせているのだろう。立子の忌日に似つかわしい伸びやかさを持った句だと思う。『俳コレ』(2011)所載。(三宅やよい)




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