March 112016
囀や階段下の秘密基地
小山繁子
春が来て繁殖期を迎えた雄鳥が囀っている。子供達にとっては春休みは宿題の無い解放された時間である。無心に遊ぶ子供らにふと彼の日の自分を見てしまう。還暦をとうに過ぎた年代にはあの少年少女時代の諸々が懐かしく胸に迫る。大きな時代の流れに翻弄されはしたが子供には子供の遊びの世界があった。冒険ごっこ探偵ごっこと様々な遊びを発明していった。遊具こそ無かったが川原も路地裏も彼らの楽天地であり階段下は格好の秘密基地であった。今しも彼の日の我ら少年探偵団の秘密会議が始まった。誰が捜索している訳でもないのに階段下に身を潜めてこそこそ熱っぽく言葉を交わしている。汚れなき大空には雲雀がぴーちくぱーちく囀っている。他に<咲満ちて朝の光の辛夷かな><菜の花の風をこぎ出す三輪車><黒板の消忘れあり鳥雲に>などあり。俳誌「春燈」(2015年6月号)所載。(藤嶋 務)
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