April 282016
どないもこないも猫掌に眠りけり
矢上新八
「猫の恋」があり「猫の子」が季語としてある。猫とはなんとまあ季節に従順な生き物なのか。野生や本能を失いつつある人間とは比べて思う。この頃は野良猫でも地域猫と呼んで去勢や避妊手術を施すことも多いと聞くが、私が子供のころは空き地や電柱の下に空き箱に入れて捨てられた猫や親からはぐれた生まれたばかりの子猫がみいみい鳴いていることが多かった。たまりかねて拾って帰っても「捨ててらっしゃい」と親から厳命されて元の場所に返しに行ったことも一度や二度ではなかった。生まれたての子猫を掌に載せて、おまけにすやすやねむっているの「どないもこないも」できない気持ちはよくわかる。「しゃーないなあ」と家猫にしたのだろうかこの人は。関西弁が柔らかい句集。『浪華』(2015)所収。(三宅やよい)
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