2016N513句(前日までの二句を含む)

May 1352016

 鷭飛びて利根ここらより大河めく

                           菅 裸馬

(バン)の体長はハトくらいの大きさ。腋と下尾の白斑が目立つ。全国の池、湖沼、水田、湿地等で繁殖する。草の中や水辺を歩いたり水を泳いで餌を漁る。尾を高く上げクルルクルルとよく鳴きながら泳ぎ、水面を足で蹴って助走してから飛び立つ。この草の中でクルルクルルと鳴く声は「鷭の笑い」と言われてきた。五月から七月にかけて、水草や稲株の間の水中に枯草を重ね皿形の巣をつくり五ないし十個の卵を産む。利根は水源から渓流、清流、肥沃な中流を経て大河の様相となり太平洋へと注がれてゆく。ススキ生い茂る岸辺に鷭がクルルクルルと鳴く声を聞けば利根はさすがに大河の様相を成している。『合本・俳句歳時記三十版』(1990・角川書店)所載。(藤嶋 務)


May 1252016

 コーラ飲むがらがら蛇のようにのむ

                           寺田良治

らがら蛇がいいなあ。コーラを飲むときはラッパ飲みと相場は決まっている。中学生の頃はゲップを我慢しながら瓶を高く上げて飲んでいた。ムリしてそんな飲み方をしたのは、広告や映画のカッコいいアメリカにあこがれていたからか。掲句のがらがら蛇の「がらがら」の音がコーラが喉を通過するときのぎくしゃくした感じにぴったり。ガラガラヘビはテキサスあたりの西部劇に登場する生き物だし。「えっ?!」と思うけど納得感もある。取り合わせとしても擬音語としても効いている。コーラを飲むときのついついこの句を思い浮かべながら飲んでしまいそう。今はもう半分も飲めないと思うけど。『こんせんと』(2015)所収。(三宅やよい)


May 1152016

 筍を隠す竹林ぶおと鳴る

                           八木幹夫

の季節はもう終わりだろうか。それにしても「筍が好き」という人はあっても、逆に「筍は嫌い」という人に出会ったことはない。タケノコ、もって瞑すべし。小生も御多分に洩れず、筍の時季にはわしわしと一年分を食べてしまう。ナマでよし、煮てよし、焼いてよし、である。掲出句は、まだ筍が土からアタマをのぞかせるか否かの時季の景であろう。(地上に出た筍を盗難されないように、枯葉や草で隠すケースも考えられるが、ここではそうは解釈しない。)湿った竹林のあちこちで、「これから地上に出るぞよ。用意はよいか。」と言って「ぶお」という音があがり始めているのであろう。筍の可愛いオタケビが聞こえてくるようだ。唐鍬を担いで、ものども竹林へ走れ!である。武満徹は「尺八の音は、竹林を吹き抜けてくる風の音である」という名言を残したが、筍も子どもなりに一丁前に「ぶお」と幼い声をあげているのだろう。今年も筍を買ったり頂いたりして、たっぷりご馳走さまでした。幹夫(俳号:山羊)には他に「野苺の闇まっすぐに我に来る」がある。89句を収めた手作りの山羊句集『海亀』(2016)所収。(八木忠栄)




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