2016N514句(前日までの二句を含む)

May 1452016

 葉桜や好きなもの買ひ夕餉とす

                           小川軽舟

成二十六年の一月一日から十二月三十一日まで、一日一句の俳句日記を一冊にまとめた『掌をかざす』(2015)より五月十四日の一句。新緑の風の中、ベランダにテーブルを出して乾杯、という気になるのも今頃だ。そういえば今週始め連休明けの月曜日、そろって仕事が休みで外食でもとぶらりと出かけたのだが結局ベランダでビールとなった。外食に比べれば高いお刺身でも安上がり、などと言いつつスーパーに行きそれぞれ好きなものを選ぼうということになり、揚げ物を家人が手に取っても止めておけばとは言わず、普段買わないようなお惣菜をあれこれ買って帰りテーブルに並べた。買ったものばかりをパックのまま、という後ろめたさはなく美味しいビールが飲めたのも、葉桜がまだ軽やかに光っているこの季節だからこそだろう。前出の俳句日記のあとがきに「俳句はささやかな日常を詩にすることができる文芸である」とある。日々のつぶやきで終わらない四季折々の詩が並んでいる。(今井肖子)


May 1352016

 鷭飛びて利根ここらより大河めく

                           菅 裸馬

(バン)の体長はハトくらいの大きさ。腋と下尾の白斑が目立つ。全国の池、湖沼、水田、湿地等で繁殖する。草の中や水辺を歩いたり水を泳いで餌を漁る。尾を高く上げクルルクルルとよく鳴きながら泳ぎ、水面を足で蹴って助走してから飛び立つ。この草の中でクルルクルルと鳴く声は「鷭の笑い」と言われてきた。五月から七月にかけて、水草や稲株の間の水中に枯草を重ね皿形の巣をつくり五ないし十個の卵を産む。利根は水源から渓流、清流、肥沃な中流を経て大河の様相となり太平洋へと注がれてゆく。ススキ生い茂る岸辺に鷭がクルルクルルと鳴く声を聞けば利根はさすがに大河の様相を成している。『合本・俳句歳時記三十版』(1990・角川書店)所載。(藤嶋 務)


May 1252016

 コーラ飲むがらがら蛇のようにのむ

                           寺田良治

らがら蛇がいいなあ。コーラを飲むときはラッパ飲みと相場は決まっている。中学生の頃はゲップを我慢しながら瓶を高く上げて飲んでいた。ムリしてそんな飲み方をしたのは、広告や映画のカッコいいアメリカにあこがれていたからか。掲句のがらがら蛇の「がらがら」の音がコーラが喉を通過するときのぎくしゃくした感じにぴったり。ガラガラヘビはテキサスあたりの西部劇に登場する生き物だし。「えっ?!」と思うけど納得感もある。取り合わせとしても擬音語としても効いている。コーラを飲むときのついついこの句を思い浮かべながら飲んでしまいそう。今はもう半分も飲めないと思うけど。『こんせんと』(2015)所収。(三宅やよい)




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