g句

June 1862016

 水澄し見る水の上水の中

                           そら紅緒

舞虫(まいまいむし)ともいわれるミズスマシ。ランダムな曲線を描きながら水面を忙しく動き回っている。じっくり見たこともないのであらためて調べるとなかなか興味深い体の作りだ。特に眼、二つの複眼はそれぞれ水中用と水上用に仕切られ計四つに分かれているのだという。掲出句を読んだ時は、水面から上を見たり下を見たりしながら進んでいるのかと思ったがそうではなく、あの素早さで動きながら水底も空も同時に見えているということだ。あらためて声に出して句を読んでみると、重なる四つの、み、と七七五のリズムに、想像もつかないミズスマシの視界を体感しているような不思議な世界に引き込まれる。作者は沖縄在住、句集名は沖縄の言葉で「蝶」のことである。『はあべえるう』(2015)所収。(今井肖子)




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