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July 1472016

 かき氷前髪切った顔同士

                           工藤 惠

しぶりに会った友達同士、顔を見合わせて「髪切った?」同時に言って何となく笑いあう。向かい合ってかき氷を食べていても前髪を切った互いの顔を正面から見るのがまぶしくて、下を向いてかき氷を一匙一匙丁寧にすくって食べる。そんな光景が目に浮かぶ。前髪を切ると、 顔がむき出しになる気恥ずかしさがあって美容院でも「前髪、切りすぎないでくださいね」と美容師に念押しする女の子をよく見かける。色鮮やかなかき氷はなんといっても若者の食べ物。私などはあの氷の山を食べつくす気力はもうない。『雲ぷかり』 (2016)所収。(三宅やよい)


July 1372016

 凉しさの累々としてまり藻あり

                           佐藤春夫

海道の阿寒で詠まれた句である。北海道ゆえに夏なお凉しいはずである。湖畔に行くと、波に揺られながらまり藻がいくつか岸辺に漂っている。累々と浮かんでいる緑色のまり藻が、視覚的にも凉を感じさせてくれる。まり藻は特別天然記念物である。私は学生時代の夏休みに北海道一周の旅の途次、阿寒湖畔に立ち寄り、掲出句と同じような光景に出くわしたことをよく記憶しているが、現在はどうか? 現在は、立派な展示観察センターができていて、まり藻を詳しく観察することができるし、マリモ遊覧船で湖上を島へと渡ることもできるらしい。当時、傷んでいるまり藻は展示室でいくつか養生されていて、回復すると湖に戻してやるということをやっていた。その旅ではみやげもの店で売っているニセモノのマリモを買ったっけ。マリモは別の種類のもの(フジマリモ)が、山中湖や河口湖などに生息しているという。春夫には他に松江で詠んだ句「松の風また竹の風みな凉し」がある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)


July 1272016

 月涼し風船かづらふやしては

                           宇野恭子

夜は半月。球体の月が唯一直線を描く夜。風船かづらは、ムクロジ科の蔓性植物。小さな白い花が咲いたかと思うと、またたく間に緑の紙風船のような実がふくらむ。頼りない巻きひげはしかし、しっかりと虚空をつかみ天へ天へと伸び進む。うだるような夏の暑さにも負けず、涼やかな緑色の風船は、この世のものとも思われない軽やさで増えていく。それは夏の夜に月の力を得て、分裂でもしているようで、まるで小さな宇宙船が鈴なりに空へ吸い込まれていく姿にも思われる。見上げれば明るい月が手招くように、やさしい光りを差し伸べている。この不思議な風船になかには、やはり風変わりな種が収められる。黒い種にはどれも律儀にハートの刻印が押され、次の夏を待っている。『樹の花』(2016)所収。(土肥あき子)




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