亞令書籍リスト

(全部で332冊)

「ヒドリ」か、「ヒデリ」か　宮沢賢治「雨ニモマケズ」中の一語をめぐって　　入沢　康夫　
　　装幀=亞令
　　四六変（122×190）　130ページ　　2010年5月25日発行　定価2090円　(本体1900円)　ISBN978-4-87995-795-5 C1095 \1900E

憶断論破！　その一語をめぐって諸方から湧き出た珍説・奇説――賢治の真意は何処にあったのか。

アイギ詩集　りぶるどるしおる24　　ゲンナジイ・アイギ/訳=たなか　あきみつ　
　　栞=沼野　充義　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　205ページ　　1997年3月10日発行　定価2670円　(本体2428円)　ISBN978-4-87995-400-8 C1398 P2500E

チュヴァシ語・ロシア語で詩を書きつづけながらも、本国では長く詩集刊行がならなかった詩人の本邦初訳。ヨーロッパでの評価が高く、〈ヴォルガのマラルメ〉と称される

青のあわだつ　毛毛　脩一　
　　装画=中田　ふみ、中田　茂伸　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　138ページ　　2018年10月25日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-977-5 Cl092 \2600E

矛盾を含んでいるために成立する
　　　　　　　　　　――すべての〈存在〉
壊れた櫂を抱擁する／うすあおい漁師の身のこなしに似た／昏
い藻の　わずかなゆらめきに似た／私には知ることのできない
ちいきな身ぶりのどれか／そのひとつに／または白いこころに
残ったやわらかなひだのひとつにこっそりと誰かが／触れて

青のチューブを絞って　佐藤　和生　
　　装幀=亞令
　　A5変フランス装（210×138）　92ページ　　2006年9月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-684-2 C1092 \2500E

未来が眼前の深淵と化した日から、
新たな人間として、跛の足で歩き出す老人。
稼動中の生命の分解作用を見据えながら、
生の終盤戦に没頭する。

青の飛行　枝川　里恵　
　　装画=ミズ　テツオ　装幀=亞令
　　A5　114ページ　　2008年8月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-744-3 C1092 \2500E

何かが始まろうとしている。今、この時。かすかに見えて来るもの聞こえて来るものをたよりに、萌(きざし)の現れを追う。幾年かまえ、そして、彼方の未だ風にくるまれていた時まで。

赤鴉　吉岡　実　
　　発行=吉岡　陽子　装幀=亞令
　　B6変袋入（172×105）　100ページ　　2002年5月31日発行　非売品　ISBN978-4-87995-544-9 C1092

本書は、1990年に亡くなった吉岡実氏の十三回忌にあたり、弧木洞（発行人・吉岡陽子）より刊行された。限定72部、非売品。制作・書肆山田、装幀・亞令。2001年に吉岡家から発見された、吉岡実氏の手稿本《詩集　赤鴉》を活字化したもので、第一歌集「戯欷」及び第一句集「奴草」からなる。幾つかの作品は、吉岡実氏によって発表され、活字化されているが、大部分の作品は未発表のものである。

あかときまで　黒岩　隆　
　　装幀=亞令
　　菊変略フランス装（212×138）　74ページ　　2011年8月30日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-828-0 C1092 \2200E

あの早い朝、見えるものと見えないものの境を光がにじませた……砂浜に片方だけの下駄……
ここにいます
ここにいます

茜ときどき自転車　岡田　哲也　
　　装幀=浜田　洋子、亞令
　　菊変（212×142）　122ページ　　2013年6月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-877-8 C1092 \2500E

でこぼこ道でゴトンと揺れる。
荷台にやや持ち重りのするものを載せた
おんぼろ自転車。
それでも
もう一度腰をあげてペダルを踏み込んで行く。
風の中、霧の中、そして陽射しの中、
明日へと。

明るい青色の石　蟹澤　奈穂　
　　装画=蟹澤　奈穂　装幀=亞令
　　A5変（196×138）　102ページ　　2013年3月5日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-870-9 C1092 \2500E

強くにぎりしめていた
あなたのてのひらを開くと
明るい青色の石があらわれた

…それは明日という夢の底に落ちてゆく時を前にして震えている。そして、まだ見えない遠くへ投げられる。

あかるい水になるように　岬　多可子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　116ページ　　2020年7月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-000-6 C1092 \2500E

夜のみっしりと重い庭――闇の底を、身をよじ
りながら這っていくもの。遠いほうへ、灯りの
ともる遠いほうへと。それぞれに　自分の傷を
痛んでいる一一草の傷から流れ落ちるひとしず
く……いつかずっと先　あかるい水になる……

第2回大岡信賞受賞

あけぼの杉の竝木を過*ぎて　りぶるどるしおる87　　石井　辰彦　
　　装幀=亞令
　　四六変（188×124）　154ページ　　2020年5月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-998-0 C1392 \2800E

独り歩を運び、抑えがたい叫びをのみこむ
石井辰彦
涸れもせず尽きもせぬ、なげきのぞみうれい。

沈むとも捨て置け艀船(はしけ)　満載の積荷はただの人間**だから/流星雨、地に降りしきる。枯ればみし心を少しだけ入れ換へる/白みゆく空***を見上げる。泣きながらあけぼの杉の竝木を過*ぎて/　*しんにょうの点ふたつ　**門構えのなか日ではなく月　***穴冠の下部が八

*しんにょうの点ふたつ

朝　朝倉　勇　
　　栞=高橋　順子　装画=朝倉　勇　装幀=亞令
　　A5変（178×148）　92ページ　　2021年5月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-011-2 C1092 \2500E

水辺のしめった土の上に
ちいきな足あとがついています
鳥が歩いていったのですね
百グラムほどの重みを
地球は感じてあげていたのですね
朝はやく

阿呆教徒への詩　法橋　太郎　
　　装画=奥井　ゆみ子　装幀=亞令
　　A5変（210×128）　124ページ　　2006年6月30日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-674-3 C1092 \2400E

この世の晴れることのない霞のなかで転ぶ。
ただただ転びつづける。
昨日のわたしと今日のわたしの隙間に洩れるすすり泣き…砂の砦…
姿を見せない鳥の声…葉を落とした樹…水たまりに落ちる水の音…
深い谷…
稚拙な大人たち年老いた子供たち…
一心に考える、考えつづける。
理由なく今を生きているということを。
今がなくなるまで今を生きているということを。

あめだま　能祖　將夫　
　　装画=三嶋　典東　装幀=亞令
　　A5変（210×142）　114ページ　　2016年10月7日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-944-7 C1092 \2200E

わけのわからないままに、この世というところ
に押し出されてきた日から、夕陽に似た何かを
頼りに歩いている。てくてくと。どこに向かっ
て? 　少しだけ息を深くして、風をまねてみる。

雨に翳り　大高　久志　
　　装幀=亞令
　　A5変（198×148）　110ページ　　2021年7月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-015-0 C1092 \2500E

人が生きようとしていた。暗い夜にとぼしい明かりを灯し
て。もがき、身をよじり、そぼふる雨の中を歩きつづける。
歩きつづけようとしている――雨はあがるかもしれない。

ARROWHOTEL　北爪　満喜　
　　装幀=亞令
　　A5変（209×136）　154ページ　　2002年10月30日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-558-6 C1092 \2600E

どこかとても暗いところを漂う――ワタシ。痣のような矢印。

アンチゴネ　りぶるどるしおる43　　アンリ・ボーショー/訳=宮原　庸太郎　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　477ページ　　2001年7月25日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-517-3 C1397 \3000E

人は、人々は、何によって動くのか。ボーショーは想う、かれらは未来を創る、未来こそがかれを叛逆させる。無法不当な現実を前に、愛と考察によって断然と一つの現在を選択する。その現在が呼び出す未来の背叛、思いおよばぬ悲惨にもかかわらず……私達はそれを繰り返す。

E/T　りぶるどるしおる41　　岡井　隆　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　164ページ　　2001年10月25日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-530-2 C1092 \2000E

白き人はかなしみのうへに坐りをり「覗き込んでは嫌」しづかなり　岡井隆　書き下ろし、百首。妻は、一番近いところに居る〈他者〉だが、由来、謎ぶかいことで知られる。夫から、年がはなれてゐる「若い妻」をモデルにして歌を書いた。苦しい作業だったとみえて夜々にみる夢はさんざんに乱れた。

X（イクス）　神原　良　
　　装画=打田　峨　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　96ページ　　2014年8月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-901-0 Cl092 \2000E

この星で迷ったまま僕は一握の炭素になる――けれど、
いつか、宇宙の星々のどこかで僕たちはまたすれ違うだろう。
X（イクス）、おまえを本当に愛している、そのとき僕は告げるだろう。

いざ最悪の方へ　りぶるどるしおる34　　サミュエル・ベケット/訳=長島　確　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　154ページ　　1999年11月25日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-471-8 C1397 \2000E

宙を切り身を細らせる隕石、そのかけらが放つ閃光にも似たベケット最後のつぶやき。ことの始まり、すなわち終りの始まり、終りの終りに視線を定めるベケット。〈なにを――なんと言うか――〉自己・言葉の交響とその消尽を見届ける。

異質学の試み　バタイユ・マテリアリストI　　りぶるどるしおる36　　ジョルジュ・バタイユ、吉田　裕　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　305ページ　　2001年1月30日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-501-2 C1310 \3000E

私は娼婦がドレスを脱ぐようにしてものを考える。その運動の頂点で、思考は破廉恥さそのもの、猥雑さそのものだ。バタイユ
どこまでも地上・地下にとどまる背理的なもの・醜く残酷なもの・動物的なもの・あからさまな物質性について考える。シュルレアリスム批判を中心に。

石の匣　宮田　澄子　
　　栞=伊藤　桂一　装画=鳥越　晶　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×140）　100ページ　　2010年10月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-810-5 C1092 \2500E

不意に庭木戸がゆれる。無の闇に消え行った幾多の哀楽の時の再来か。歩みの後先にまつわるシジミ蝶。未だ見え来ぬ時のなかへと踏み入るのか。ちいさなたましいが問う…
「こことつぎのあいだには何があるの」

伊太利亜　りぶるどるしおる52　　岡井　隆　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　172ページ　　2004年2月25日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-599-9 C1092 \2800E

現代短歌のフロンティアを拓きつづける　岡井隆　創作の極限にいどむ
短歌を横書きで創作する――それは、短歌、広くは言葉による創作への深い問いでもある。何を書くか・如何に書くかという問い方のはるか彼方に、問いと答えの捜索としてのこの果敢な試みがある。

一顆明珠　有田　忠郎　
　　装幀=亞令
　　A5変函入（210×128）　80ページ　　1994年2月15日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-327-8 C1092 \2400

〈声のなかに剃刀をもつ男　かれは夜明けの石段をのぼり　名辞の生まれる直前の世界ヘ入ろうとしていた〉死によって溶融する時間の中心に生の澄んだ核を見る

伊藤聚詩集成　詩集成シリーズ　　伊藤　聚　
　　装画=伊藤　聚　装幀=亞令
　　四六　608ページ　　2001年4月25日発行　定価8250円　(本体7500円)　ISBN978-4-87995-510-4 C1092 \7500E

脱臼する言語がとらえる脱出不可能な大氾濫世界。遠い星から届くかすかな光のふるえ。そして、存在することへの消しがたい悔恨。

イナシュヴェ　たなか　あきみつ　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　142ページ　　2013年4月25日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-873-0 C1092 \2600E

なぜ「それ」は未完―Inachevéと呼ばれるのか。

ほらボールは飛んでいくが飛んだまま到達しない
ほらわたしは死にそうだが死ぬまい
光線よわたしのもとへ戻ってこい（ケドロフ）

狂っている。そうかもしれない。…20世紀のしごと。そしてその日々が導くわたしたちの時間。

いのちの家　ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ/訳=伊藤　勳　
　　装画=ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ　装幀=亞令
　　菊変（218×140）　280ページ　　2012年3月5日発行　定価5060円　(本体4600円)　ISBN978-4-87995-843-3 C1098 \4600E

すべてが空しくなつたとき何が忘れ得ぬ苦しみをなだめ/忘れられないでゐる者に忘れることを教へてくれるのだらうか　すべてが空しくなつたとき何が忘れ得ぬ苦しみをなだめ/忘れられないでゐる者に忘れることを教へてくれるのだらうか――苦悩と悔恨の底から見つめる愛と生　ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ　1828-1882。イギリスの詩人・画家。画家として「ラファエロ前派」を形成、主導した。深い憂愁を湛えた「ペアタ・ベアトリクス」「プロセルビナ」などの画業は広く知られている。その活動はウィリアム・モリスらの仕事につながった。詩人としては、〈美〉と〈愛〉を〈いのち〉の根幹・拠所とする生命・世界観から詩作に当ったが、現実の苦悩深く、やがて心身を病む。『バラッドとソネット』『詩集』を詩集として遺している。前者に含まれる本書は、その詩精神の中核を成す作品群であり、本邦では初の完訳である。詩人クリスティーナ・ロセッティは妹

（いま／ここ）で　岩成　達也　
　　装幀=亞令
　　菊変（220×142）　164ページ　　2010年10月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-808-2 C1092 \2800E

不意に　目の端を何かが横切る（…）／どこからと
もなく二羽の小鳥が芝生に降り立ち／せわしく動き
まわり　一羽が素白な羽根裏を閃かせて　つと飛び
去る　残る一羽も／おお　hic et nunc　あとを
追うように　続いて　私の前から　飛び去って行く

『（ひかり）、……擦過。』『みどり、その日々を過ぎて。』につづく三部作――
岩成詩学、さらなる深化。

「私」――いま宇宙のなかで生きて在る、何らの根拠なく。こ
こで時の移ろいを身に負うている、何らの手だてなく。底知
れぬ無の淵にずぶずぶと沈んでゆく私、過ぎゆく事態として
の私を捉えるため、引き受けるために必死で立てられる言葉。

いろはにほへとちりぬるを　木村　迪+夫　
　　装幀=亞令
　　菊変略フランス装（218×139）　114ページ　　2002年10月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-553-1 C1092 \2500E

1000年前の光りの満ちる朝に、そして、昨日、初めての雪の朝にも、彼女は、生きた。あらがった。お袋よ、いまもこころしずかに眠れぬか。夢はあさいか？　ながいか。第21回現代詩人賞受賞

+点1つではなく2つ

いろはにほへと　菊地　隆三　
　　題字=熊谷　守一　装幀=亞令
　　菊変（194×152）　144ページ　　2013年2月5日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-867-9 C1092 \2800E

生きることをまっすぐ見つめ、死ぬことはしょうことなしにはすかいに見やり、すこうしは笑ってもみる――先ハ　アル　マダ　マダ　アル…

受けとった雲　藤本　敦子　
　　装幀=亞令
　　A5変（196×136）　104ページ　　2013年8月25日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-881-5 C1092 \2400E

わたしはここにいます
――声がしたように思う。風と空が雲をそっとゆすっているだけだった。両の掌に消えてしまったものをくるんで、ひっそりとあたためてみる。

蹲るもの　秋山　公哉　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　104ページ　　2019年9月5日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-991-1 Cl092 \2500E

今、ここに立つぼくの胸にやってくる昨
日の音。数億年前からかすかに響きつづ
ける長い長い時の流れ行く音――声を出
さずに泣いてみる／体を動かさずに叫ん
でみる／……世界は何も気付かなかった

唄　──遠い冬の　　入沢　康夫　
　　装幀=亞令
　　四六変略フランス装（188×122）　119ページ　　1997年6月10日発行　定価2530円　(本体2300円)　ISBN978-4-87995-406-0 C1092 \2300E

……私は　もう　どことも分からない街区にゐた……ちつぽけな　トランクと　ひしやげた帽子と　安カメラと……それからほとんど嗚咽している心とをぶら下げて死者たち生者たちの入り混じる地を行く。第39回毎日芸術賞受賞

うた　ゆくりなく夏姿するきみは去り　　藤井　貞和　
　　装幀=亞令
　　四六変（188×122）　144ページ　　2011年8月6日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-825-9 C1092 \2400E

音数律など定まらずとも、人はうたってきた
だがしかし、今このときこそ
〈しらべ〉に乗るうたは
何かを甦らせようとし、何かを手渡そうとする
…たとえば
…不意にいなくなった人の背影…
宙空を切り裂いてゆく白球の軌跡…

歌枕合　りぶるどるしおる57　　高橋　睦郎　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　180ページ　　2005年11月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-655-2 C1395 \2500E

一つの地名が異邦の別の土地へと想いを誘う。
高橋睦郎
忘れられた永遠の詩〔ポエジー〕の源泉の再発見

歌枕とは旅先の地霊と枕を交わし、そこに潜む詩心を聞き取ること。21世紀を生きる詩人が〈ここ〉と〈かしこ〉に底流する古く新しい歌を汲みあげ、競いあわせた前人未到の力技

現身　石川　宏　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　128ページ　　2003年10月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-586-9 C1092 \2500E

風　風がそっとつぶやく　生きるものの無言の呼びかけに応える　もんきあげはが花に酔い　あきあかねが光とあそぶ　陽はまだまだ高い……

打つや太鼓　清水　哲男　
　　装幀=亞令
　　B6変フランス装(172×106）　128ページ　　2003年8月30日発行　定価1980円　(本体1800円)　ISBN978-4-87995-583-8 C1092 \1800E

「起」「承」「転」「々」――転々と往く、野を、街を。清水哲男の俳句乱れ打ち。
退職のはるらんまんの呂律かな
からっぽの頭を北風に掲げゆく

奪われぬ声に耳傾けて　言葉と歴遊　　りぶるどるしおる47　　松枝　到　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　300ページ　　2004年1月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-597-5 C1395 \2800E

喰う。呑む。媾う。諍う。語る。求める…。考孜する松枝到　…人は、かく生きる。
歴史は何をあかすだろうか。人は、どうしてかものをたずねる。何も学ばないかもしれないが、ひそやかに耳をそばだてる。あらゆるふるまいを重ねつづけながら。

うまやはし日記　りぶるどるしおる1　　吉岡　実　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120　143ページ　　1990年4月15日発行　定価2136円　(本体1942円)　ISBN978-4-87995-206-6 C1395 P2000E

昏い空の下を彷徨する若き詩人一九三八―四〇年の日記。目常の狭窄の中にニルアドミラリの視線を放射し、句歌詩の創出と読書に情念の鼓動を仮託した精神の記録

海のエスキス　若宮　明彦　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×134）　114ページ　　2014年9月1日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-898-3 C1092 \2500E

海の話をします――
二億年来の風に揺すられて泣いている鳥…穴の空いた貝殻を握りしめて立ち尽くすみなしご…夕陽をかかえて汗だくで走る男…小さな足跡をたどり海にころげ落ちる母…波の寄せ退く渚…光を抱く沖の波間…心はどこにもみつからないのかもしれないのだけれども…

海の領分　黒岩　隆　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×138）　88ページ　　2005年8月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-645-3 C1092 \2000E

見ましたか
　見ました
　　………

水平線に悔恨のように浮んでいる白い舟
払暁の砂浜でひたっと跳ねる希望
夕凪の郵便夫が背後に点々と残す哀しみ。第2回詩歌句大賞詩部門受賞

海へ　高橋　順子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　130ページ　　2014年7月21日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-899-0 C1092 \2400E

歎きも憂いも、昨日と明日も、ことばの窓を開け閉めして古里の海に還してきた。2011.3.11――ぎざぎざの海。
海という窓は閉められぬ……
第10回三好達治賞、第52回藤村記念歴程賞受賞

永遠の蛇口　新延　拳　
　　装画=浜田　洋子　装幀=亞令
　　A5変（196×138）　114ページ　　2008年9月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-747-4 C1092 \2500E

くたびれた背広がブランコをゆらしている。遺失物になったが最終的には持ち帰られる荷物のように。記憶の蛇口をあけたりしめたりしている。パン屑を運ぶ蟻の列を見ている子犬を見ている。やがて夕日を見る、星も見るだろう。そして金木犀の香のなかを走る子どもを、風を、光を抱きしめたいと思っている。第4回更科源蔵文学賞受賞

惠以子抄　安藤　元雄　
　　装幀=亞令、中島　浩
　　A5変（196×138）　80ページ　　2022年8月12日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-86725-026-6 C1092 \3000E

鈍く光る鉄板の上
灰にまみれて横たわる
僅かばかりのおまえの骨を私は見た……
無力感の底をさまよう悲しみの歌

英語の授業　塚本　敏雄　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　108ページ　　2006年4月25日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-672-9 C1092 \2400E

はじめてweとtheyを教わった日に
〈彼ら〉と〈ぼくら〉の間にひろがった酷いような距離。
――ぼくは考えあぐねている…今この時、
遠い空の下で彼らの体に何かがぶつかる。
ぼくらの体を支えきれない悲しみが揺さぶる。茨城文学賞受賞

エデン　有松　裕子　
　　装幀=亞令
　　A5変（208×132）　96ページ　　2008年8月20日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-743-6 C1092 \2200E

どんなふうにわたしの心臓を切り裂けばいいか、教えてあげよう。
さがしているものはここにはない。こどもの頃のように、心躍らせて風のなかを歩いてゆきさえすれば、見つかる、とでもいうのだろうか。似たような場所、永遠のない場所をぐるぐる廻っている。早く誰かを見つけられればいいが。

F・ヨーゼフ　小林　弘明　
　　装幀=亞令
　　菊変（182×154）　134ページ　　2015年5月30日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-915-7 Cl092 \2600E

F・ヨーゼフとは誰なのか？
クリミア半島に立ち迷う消え消えの影。
翳りは深まりながら遁れてゆく。
幾度も幾度も試みられる接近。
掻き消えまた現われる虹を欠片として捕えようとして。
…彼は、あなたの、私の写像なのかもしれない…
…誘惑の囁きが響く…カフカの？…

エフェメラの夜陰　林　美脉子　
　　装幀=亞令
　　菊変（218×138）　74ページ　　2015年1月15日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-909-6 Cl092 \2200E

孤りきりで、一度かぎりの生存を死へと押し進める者たち。
みんな何処へ往き　何処へ　還ったのか
それぞれの星で、互いに行き交うことを知らぬ宙宇で、ひとりびとりの唄声だけが谺する…らりりるらりら…ちるりるりらら…

絵本摩天楼物語　辻+　征夫　
　　装幀=亞令
　　菊変函入（218×130）　127ページ　　1995年6月25日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-354-4 C1093 \2800

ある晩ついに幸福な時にめぐり会う〈セロ弾きのゴーシュ〉、その後日譚。穏かながらどこか思わしくない日々ののち、物語は今一度ハッピーエンドを迎えるだろうか

+点1つではなく2つ

エルヴィスが死んだ日の夜　中上　哲夫　
　　装幀=亞令
　　菊変略フランス装（218×140）　88ページ　　2003年10月25日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-588-3 C1092 \2000E

その夜、トリス・ウィスキーのハイボールをいつまでもいつまでのんで、ぱくぱく夏の夜明けのきはくな大気呼吸しながら鳥たちが散歩する引込み線のレールの上をぴょんぴょん駅に向かって歩いていった。そして一番電車にゆられて家へ帰りついたのだけど。心臓がこわれてしまっているらしくても、ただぼんやり風のなかに立っているだけのようだとしても、ほっといてもらいたい。もうすぐ、隠れていた小さなものを見つけて歓声をあげるつもりだ。第34回高見順賞、第13回丸山豊記念現代詩賞受賞

オイディプスの旅　りぶるどるしおる15　　アンリ・ボーショー/訳=宮原　庸太郎　
　　解説=マルク・カグブール　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　404ページ　　1994年7月10日発行　定価3204円　(本体2913円)　ISBN978-4-87995-331-5 C1397 \2913

種々の権威と思考が退位しつつあるこの世紀に対する自ら盲いた孤独な廃王の問い――何ものにも拠らず、内奥のまなざしのみを杖として歩み続けること/本邦初訳

鷗外・茂吉・杢太郎　「テエベス百門」の夕映え　　岡井　隆　
　　装幀=亞令
　　四六　502ページ　　2008年10月10日発行　定価5280円　(本体4800円)　ISBN978-4-87995-752-8 C1095 \4800E

若き詩人木下杢太郎は森鷗外を百もの門を他に開く古代の大都テエベスになぞらえた。斎藤茂吉もまた別の道を踏んでそこへやって来る。三人の足跡は絡み合い、ときには離れ、また重なる。混迷の時代をかきわけつつ行くその姿を、作品・日記・書簡・歴史記録から追う。図書館協会選定図書

おおきな一枚の布　服部　誕　
　　帯=以倉　紘平　装幀=亞令
　　A5略フランス装　88ページ　　2016年8月12日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-941-6 C1092 \2400E

冷徹なリアリズムと奇怪な幻想を携えて、作者は突然現れて、私たち詩仲間を驚かせた。サラリーマン生活者の苦い酒と家族の肖像が正しく刺繍されている一枚の大きな布。定年を過ぎて、作者の中の何者かが、深いいたわりをもって、丁寧にその人生の布を畳もうとしている。それはほとんど祈りに似た行為である。包まれた布から最終電車の悲鳴に似たベルが今なお聞こえて来る。出色の詩集と思う。―以倉紘平

オスロは雨　神原　良　
　　装画=内田　峨　装幀=亞令
　　A5変（194×138）　98ページ　　2013年6月5日発行　定価1760円　(本体1600円)　ISBN978-4-87995-876-1 C1092 \1600E

北方の都市の街路をさまよう。冷たい雨の下、何年も前から喪い続けてきた昨日の影を探しながら。思い出されることのない未来のある日……
僕達はまた出会う　また愛を語る

幾千年か前に君が歩を止めた坂道。幻影の街を吹き過ぎてゆく風。心を濡らすものが望まれる朝、誰もいない街路で……
僕達はまた出会う　また愛を語る

小津安二郎の家　持続と浸透　　りぶるどるしおる12　　前田　英樹　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　135ページ　　1993年1月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-294-3 C1395 \2000E

回想のシステムはどのようにして即時的な過去を「現在」へ転換させるのか
前田英樹
は煩悶する――
「現在」とは持続する「過去」の総量=世界から莫大な過去を捨象する行動の回路にほかならないのではないか。

小津安二郎における日本家屋はどのような意味を含んでいるのか。人の動きと物のありかの際を浸透して、存在し持続する過去そのものを顕しているのではないか。

音づれる聲　藤原　安紀子　
　　栞=藤井　貞和　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×138）　138ページ　　2005年1月26日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-631-6 C1092 \2400E

ぼくはユビ
はにかんで摘む

光のなかの器にひとりぼっちだ信号を送ろうきっと最後のしんごうになる

ぐうした手に　ちり
萌えのこる　あ

この石こころきみへあげる

ぼくらのちいさな足は心もとなく瞬く水脈のよう
鈴生る未をいつまでも拾いあつめてあいしている　第16回歴程新鋭賞受賞

おひさまのかぞえかた　片岡　直子　
　　装画=杉田　達哉　装幀=亞令
　　四六　282ページ　　2005年5月7日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-636-1 C1095 \2500E

明日という目的地にむかってまっしぐらに突っ走る詩人。
母としても走る。妻としても。
からだじゅうこころじゅう青あざだらけ。
いつも何かしら予期せぬものが出現し、
気づいたらもう転んでいるから。
それでも、まっしぐらにいく。
今日も。ひとりの女として。――初のエッセイ集

お遍路　高橋　順子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×142）　108ページ　　2009年6月30日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-767-2 C1092 \2400E

お四国を
鈴を鳴らして歩きたい
鈴の音が聞こえたら
穴の底の蟻地獄よ
詩よ
出てきておくれ

女のいない七月　高　啓　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×136）　100ページ　　2012年1月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-839-6 C1092 \2500E

この世でただひとつ鮮やかな意味――そんなものは存在しないのよ…それでも、おれたちは苦悶と虚妄の時を振り払って、戻れぬ坂を越えてゆく。その向うに、おれときみの日々はまだしずかに眠っている。

カヴァフィス全詩　C・P・カヴァフィス/訳=池澤　夏樹　
　　装画=ニコス・ハジキリアコス=ギカ　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　336ページ　　2018年9月25日発行　定価3850円　(本体3500円)　ISBN978-4-87995-975-1 Cl098 \3500E

歴史のアイロニーと一人の孤独な人間のありよう、
そして同性愛者の官能と悲傷――カヴァフィス詩を長く机辺に置きつづけた池澤夏樹による待望の翻訳。

詩人のまなざしが衝く人間の生きよう、その過去…現在…

カヴァフィス（1863―1933）――アレクサンドリアのギリシャ語詩人。その作品は20世紀・21世紀の世界で広く読まれ、高く評価され、深く愛されている。迷妄を重ね、希望の光がほとんど破砕されるかに思われるこの時代であるからこそ、読む者は膝を打ち、なおまた胸を刺されるのだろうか。

絵画以前の問いから　ファン・ゴッホ　　りぶるどるしおる54　　矢野　静明　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　225ページ　　2004年12月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-629-3 C1371 \2500E

その絵の前に立つとき誰もが強い衝撃を受けるのは何故か
ゴッホ/矢野静明の対峙
彼はどうして絵を描き続けたのか

どうにかして人の役に立ちたい――この願いがゴッホの絵を生み出した。放たれた矢は間違った的を射ようとして、人々の心を確かに射抜くことになったのではないか。

耀く海　平田　聡　
　　装画=百田　智行　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　140ページ　　2014年9月30日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-904-1 C1092 \2600E

逢か沖合に浮かぶ白い帆船
小さなスコップとバケツを両手に砂浜に立つ幼児
青空に白球を見失う少年
仕事帰りの疲れた体をパスに揺られている僕
――よみがえる記憶の翳りと閃光を言葉に映し、
日々の細部に宿る生の深みを彫り出す。

限られた庭にどうぞ　杉山　弘子　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×142）　114ページ　　2009年12月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-780-1 C1092 \2500E

山坂を走りつづけて
何処へ歩もうとしているのだろうか
私は青空から落下した
一人藪を刈る　蚊も一羽仕留めた。

かげろうの屋形　中江　俊夫　
　　装幀=亞令
　　菊変（220×145）　130ページ　　2012年3月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-846-4 C1092 \2800E

東作さんはかげろうの屋形で　今も生きている
――何度目のことになるか、また名を変えて、
人の世の記憶をごちゃごちゃに掻き廻している。
空はあくまで青い。
猫の「はな」はいず、
嘘をつくことにもあきたのだが…。

河口眺望　辻+　征夫　
　　装幀=亞令
　　菊変（218×132）　75ページ　　1993年11月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-319-3 C1092 \2500

堤防に立って明日へと崩れてゆく時間をみつめる。いたみがちな心は遠くヘ蹴とばしてしまう。悲哀にみちた響きをたてるだろう*芸術選奨文部大臣賞・詩歌文学館賞受賞

+点1つではなく2つ

仮象の塔または九つにわかたれたあのひとの遺骸をさがす旅　根本　正午　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×148）　104ページ　　2018年3月7日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-966-9 Cl092 \2000E

今、ここに、出現する言葉――
掣肘の壁に身をぶつけながら
到り着くべきところをもとめて
めいろをまろびゆく。

風　サン=ジョン・ペルス/訳=有田　忠郎　
　　装幀=亞令
　　菊変略フランス装（220×140）　232ページ　　2006年11月30日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-694-1 C1098 \3000E

世紀を貫く声――生あるものすべてそしていのちの影を映す生なきものすべての上に、大地の新生と文明の怪力の上に、人間の歩む街道を旅ゆく名なき者らの上に、ひとしく吹く風に託された歌――亡命と流離の底から吹き上る言葉
それは人間の大地を吹き渡る大いなる風であった
急げ!　急げよ!　世にも大いなる「風」の言葉!
教えてくれ、新しい転調の音色は何なのか?
急げ!　急ぐのだ!　人間のための証言を!

風の痕跡　岩成　達也　
　　装幀=亞令
　　四六変略フランス装（190×130）　114ページ　　2017年4月25日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-953-9 C1092 \2400E

闇を感受しようとする
一人の人間の発語――
過ぎて行く風がはこぶ深い問いかけ。
さまざまのことを感得させる
日々の傾き

風のなかをひとり　藤本　敦子　
　　栞=伊藤　桂一　装幀=亞令
　　A5変（196×138）　122ページ　　2008年6月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-738-2 C1092 \2500E

風。あなたに触り、
そのあとわたしに触れていった。
天空に突き入る鳥に、
そして地面にたよりなく踏ん張る木に。
それから…生傷のような雲を吹きやり、
光のなかのこどもとまろび遊び、
ひとり歩むわたしのかたわらを行くだろう。

彼方への閃光　國重　游　
　　栞=藤原　安紀子　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×138）　64ページ　　2006年1月25日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-663-7 C1092 \2000E

雷雨の打ち叩く、風の吹きすさぶ地上で
鳥たちだけが飛び往く海辺で
……かすかにふるえている〈時〉の孤影。

壁に描く　りぶるどるしおる59　　マフムード・ダルウィーシュ/訳=四方田　犬彦　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　172ページ　　2006年8月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-683-5 C1398 \2500E

繰り返される筆舌に尽しがたい惨事。それを記録する詩人
ダルウィーシュ
パレスチナからのこの声は記憶されねばならない

われわれはまだ生きている。来たるべきわれらの思考の誕生にふさわしいささやかなものだけを携えて。鳥となって、自分の無から存在を引っ掴む。

神々の渇き　南保　俊雄　
　　装幀=亞令
　　菊変（214×142）　168ページ　　2009年7月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-769-6 C1092 \2500E

人間という容器には愚昧の泥がよどんでいる。
無惨なまでに、あるいは滑稽なまでに。
心の底が悲しみに割れることがあるにもせよ。
こうなるには、それなりのわけがあるのだろう
…………

神の子犬　藤井　貞和　
　　装幀=亞令
　　菊変（175×152）　202ページ　　2005年8月25日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-648-4 C1092 \2800E

藤井貞和の詩
――fujii sadakazu 2005;
his poetical works
おはいりよ、不安なことば。
行くな。そこから先は、あぶない。

第24回現代詩人賞・第23回現代詩花椿賞受賞

貨物船句集　辻+　征夫　
　　跋文=小沢　信男　帯=清水　哲男　装幀=亞令
　　四六変略フランス装（172×105）　90ページ　　2001年1月10日発行　定価1650円　(本体1500円)　ISBN978-4-87995-503-6 C1092 \1500E

貨物船――これは2000年1月に急逝した詩人・辻征夫の俳号である。〈満月や大人になってもついてくる〉。翼を傷だらけにしながらも詩の宇宙を翔びつづけた辻征夫のもう一つの世界。

+点1つではなく2つ

烏が啼くか　π　竹田　朔歩　
　　栞=井坂　洋子　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　179ページ　　2010年4月5日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-791-7 C1092 \2800E

『烏が啼くか　π』は、暮らしの中で心の天秤が上下動することを拒み、もっと広い時空へダイブする手段として書いているように思える。その詩篇はひとつの運動体の軌跡といっていいかもしれない。――井坂洋子

からすのえんどう　阿部　はるみ　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×134）　102ページ　　2021年10月5日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-019-8 C1092 \2500E

輪ゴムが
路上に落ちている
三日前と同じところに―記憶の深みから浮上する、
その一瞬。整序することの困難な無数の瞬間。けれ
ども忘失を拒むいくつかの情景たち。透徹するまな
ざしとやわらかな情念だけがそれに気付くのだろう。

第29回丸山薫賞受賞

カラダという書物　りぶるどるしおる74　　笠井　叡　
　　装幀=亞令　本文組版=中村　鐵太郎
　　四六変（190×120）　295ページ　　2011年6月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-821-1 C1373 \2800E

ダンサーにとって〈カラダ〉とは何か。笠井叡宇宙の感覚器官としての人間身体を問う。

たとえばミミズやバラの花や魚の、大地や海との一体的ありよう。これは人間には不可能である。自然としての身体を持ちながら。なぜだろう…人間身体と生命のありようを徹底考察する。図書館協会選定図書

カラダと生命　超時代ダンス論　　りぶるどるしおる80　　笠井　叡　
　　写真=神山　貞次郎　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　460ページ　　2016年2月15日発行　定価3520円　(本体3200円)　ISBN978-4-87995-933-1 Cl373 \3200E

身体とともに時代の中に在るということ
考え尽す　笠井叡
時空を超えて、今あろうとする命、ということ

混迷と変容の真只中に在る21世紀の人間――植物生命動物生命を摂取することで鉱物を体内に獲得する人間生命は、今や、悠久の鉱物生命の一環としてのみ在り得るのではないか。
図書館協会選定図書

川音にまぎれて　唐作　桂子　
　　装画=花田　伸　装幀=亞令
　　A5変（196×130）　106ページ　　2013年10月5日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-884-6 C1092 \2400E

たどるのが厄介でもこの道をたどりつづける。少し笑み少し泣き少し憤りながら。やわらかなるべきものをもみしだき川音のなかに投げ入れる。ひそかな呼び声とともに。

換気扇の下の小さな椅子で　清水　哲男　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×128）　74ページ　　2018年12月5日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-979-9 Cl092 \2200E

往時、俺たちは皆ターザンだった。
アーアー、アーアー。
木から木へと飛び移り、夕暮れになって山から降り
てきた。いつしか山に入らなくなり、夕暮れにはう
ずくまって換気扇の下でタバコを吸うようになって、
　アーアー、アーアー。あの雄叫び
は煙のように漂うだけになっていた、というわけさ。

第26回丸山薫賞受賞

間氷期　是永　舜　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×124）　146ページ　　2021年4月15日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-86725-010-5 C1092 \2600E

童子ふたり梅の林に遊び消ゆ
荒くれの雛の間に入る忍び足
行く春や子猫の骨のか細さよ
うたれ哭けやさしき夏の雨脚に
麦揺れてゐる少年の日の吐息
海月知る海鼠の恋や間氷期
冬鷗ヒトの萎びた背を嘲ふ

俳句が映す宇宙

凱歌　笹田　満由　
　　装幀=亞令
　　四六変（186×116）　46ページ　　2012年9月15日発行　定価1100円　(本体1000円)　ISBN978-4-87995-855-6 C1092 \1000E

沈黙よ、歌え――
遠くひそかに…光をこらえて…

学校　抄　大平　常元　
　　装幀=亞令
　　菊変（214×138）　48ページ　　2012年2月25日発行　定価1320円　(本体1200円)　ISBN978-4-87995-841-9 C1092 \1200E

おーい　と　よびかけてみた
　　　　……よびかけてみる

ガラス容器　大平　常元　
　　栞=長谷川　龍生　装画=青野　文昭　装幀=亞令
　　菊変函入（220×148）　218ページ　　2008年9月10日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-746-7 C1092 \3000E

迷わずに
つゆ草を踏みわけて　来てくれ給え

ぼくは　終日　はためく　旗の下で　旗ざおをゆすっています
旗ざおをゆすりながら　道に迷ったギリシャの青年と
時間について　話し合っているのが　見える筈です

椅子を一つ　空けておきます

言の葉の舞。とつ追いつのフーガ。で、やや鈍色のヴェクトル。遠心、求心、して収斂。J・ケージ、く、くしゃみ。E・サティ、しゃ、しゃっくり。言の葉紡いで絵と物語りの揺曳、はてたたなわる神話。心モノにどうかして。ああ親和力よ。言の葉迷宮を縫い、詩人対象に静脈浮き彫り、カタルシス遂げ、極上のウィット、エスプリが見者を陶酔にいざなう。その芳醇なコク。言葉よ、といい口噤む紫水晶の朝の奥つ城。――みやこうせい

ガンジスの女　りぶるどるしおる58　　マルグリット・デュラス/訳=亀井　薫　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　192ページ　　2007年5月30日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-703-0 C1397 \2000E

不可能の愛に憑かれた欲望と狂気と疲弊の日々。デュラス　そしてわれらを、言葉となって襲う記憶の砕片。

〈ときどき、死にたくならない？/ええ、思うわ…〉立入を禁止された時間とも言うべき昏い視界で、さ迷い行き過ぎ、隣り合うことに気づかぬ人々/戦慄のシネ・テクスト。

奇異雑譚　阿部　芳久　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×140）　92ページ　　2007年5月30日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-705-4 C1092 \2400E

鏡が映す不可解な私の像――
闇の中で
ブランコを軋らせる唇の赤い少年。
取り残されている自分。
この惑星の上に。
劫初から。
…それとも、
鏡の前に立つ自分の姿こそ錯覚なのか。

危険な下り坂　岩辺　進　
　　装幀=亞令
　　A5変（188×148）　80ページ　　2006年9月20日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-685-9 C1092 \2200E

危ないじゃないか！
生れ落ちて、空のてっぺんから墜落して
そろりそろりとこの坂を下っているんだから
そんなに急ぐなよ
いつか空を飛ぶかもしれないんだから
第47回中日詩賞・新人賞受賞

季語練習帖　りぶるどるしおる86　　高橋　睦郎　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　220ページ　　2019年2月25日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-981-2 Cl392 \3000E

新しい季語をもとめて人々の踏みきたる野にあそぶ。
高橋睦郎
1111句の句作と作句ノート101章。

季語―20世紀世界詩に深く影響した俳句の中核に在る季語は、句の生命の中心であり、また宇宙の混沌から生命の沃野を守ろうと必死で立つ前衛でもあるはずだ。

昨日知った、あらゆる声で　阿部　嘉昭　
　　栞=藤井　貞和、小池　昌代　装幀=亞令
　　B6変(182×122）　108ページ　　2008年2月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-728-3 C1092 \2000E

私を打ってゆく淋しさがある…名指しできぬ多くの声がこの躯/思考を貫いて、そうして…無垢の時間=歌が流れだす。――バレんなよ、わたし…

極地　後藤　美和子　
　　栞=小池　昌代　装幀=亞令
　　A5変（195×132）　120ページ　　2003年9月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-580-7 C1092 \2000E

ここに集められた詩は、握ればみな、てのひらに収まってしまうほどの、ちいさな粒です。ちいさな粒だけれど、不思議に重い。磨かれることもなく、不埒な表情をして、そこに在るがままに、凝固しています。――小池昌代

去勢されない女　LA MALCASTRE*E　　りぶるどるしおる20　　エマ・サントス/訳=岡本　澄子　
　　栞=冥王　まさ子、金井　美恵子　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　222ページ　　1995年8月15日発行　定価2670円　(本体2428円)　ISBN978-4-87995-357-5 C1398 \2428

苦しみと齟齬にみちた人間関係をあらわにするだけの現実を放郷することによって、もうひとつの現実を創出し、内空間をみたす言葉を追う悲痛な小説/邦訳第二作

*アクサンテギュ付きのE

キラキラヒカル――入沢康夫自選ライトヴァース集　入沢　康夫　
　　装幀=亞令
　　四六変フランス装（190×122）　122ページ　　2019年5月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-985-0 Cl092 \2500E

こころをかくす

脆く壊れやすい一生を授けられて、なお壊れやすい心をどこ
にしまっておいたらよいものか。いっそのことに、くたくた
の合財袋の底からひっぱりだし、素裸に剝き、磨き立て、た
なごころにころがしながら歩んだら、誰にもそれとは見とが
められなかった！　木の枝々にとまる赤い天使たちと悲しい
顔してしゃがむ一人の黒いこびと以外には。内緒の話だが…

金木犀の焔　枝川　里恵　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　121ページ　　2001年5月31日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-513-5 C1092 \2000E

擬制の含み笑い　南保　俊雄　
　　装幀=亞令
　　菊変（212×142）　136ページ　　2011年2月28日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-814-3 C1092 \2500E

生と世界を理解しようとし、理解したつもりで、あらゆる矛盾に満ちた行動を重ね続ける生きもの――人間。その生態の過酷滑稽、非理と謎。

草すなわちポエジー　野村　喜和夫　
　　帯=前田　英樹　装幀=亞令
　　B5変（236×162）　90ページ　　1996年9月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-389-6 C1092 P2884E

野村喜和夫の探究は、現代日本語が言語として包含し、内在させる最も深い創世の力を、社会化したあらゆる意味の錯綜の奥から一気に露出させてくる――前田英樹

久美泥日誌　野村　喜和夫　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　96ページ　　2015年11月15日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-929-4 Cl092 \2400E

かつての日
きみはぼくの前に出現した。
まばゆいばかりの姿で。

今、
星を食べる者、行く先を知らぬまま歩く者、
――老いた私。
脳の皺のそちこちに、
魂の中心にぽっかりあいた穴に、
見え隠れする
きみ。

黯(くら)らかな静寂(しじま)、すべて一滴の光　奥間　埜乃　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×130）　118ページ　　2021年12月10日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-86725-022-8 C1092 \2600E

夜、眩暈、そして耳鳴り――
人称の混濁の底へと沈んでゆく［わたし］。崩壊はしない
――覚えておいてハニー、あれが日付変更線よ

胡桃を割る人　財部　鳥子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×142）　126ページ　　2008年6月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　

しずかに目をつむってお聞きなさい――
…満月が減ってゆく音…ものいわぬ人がさしのべる手の呼びかけ…百歳の祖母が七月の無音を空に放つ…峠の奥からもうれつな緑のあいさつ…言葉のまわりで黙してはまたざわめきたつものたち…
――書物を伏せ、手のひらの木の実をそっとにぎってみる。

黒い破線、廃市の愛　鈴村　和成　
　　装幀=亞令　写真=鈴村　和成
　　菊変（218×144）　160ページ　　2006年11月30日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-693-4 C1092 \2600E

砂地に、ひとりの男が足跡を点々と置いてゆく。
人知れず引かれた破線のように。
黙示録の諧調をうち砕く黒い破線――時が旋回する…
はだしの子らが雨と光の中をはしる…
夜闇の奥で女が爪を小さくひからせる…
廃市に愛の影がゆらぐ…

グラナダ詩編　関口　涼子　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（190×148）　100ページ　　2007年8月10日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-710-8 C1092 \2400E

遠廻りして行く
フェルナンド・ペソア――
私たちは後を追う。私たちは観察する。上昇する蒸気…行き交う幻影…遠く反響する声…かつて語られた愛の物語…今しがた通り過ぎた街は待ち合わせの場処ではない、その街はどのような場処として生きるのだろう。到着すべき街は、今は不在の生としてあるのだろうか。もう一つの不在の生が、生を不在から掬い出すのだろうか。

経験の定義あるいは指の痛み　新延　拳　
　　装幀=亞令
　　A5変（196×140）　102ページ　　2021年11月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-021-1 C1092 \2500E

罐蹴りにも飽きて…陽のあたたかみが残っ
ているブランコ…少しこいでみる、ゆれて
きしむ音…迷い仔犬…かたっぽだけ落ちて
いる手袋…ホケットの中の木の実…そう…

私はただここにいる
生身の自分として
等身大の哀しみとして

閨房詩篇　笹田　満由　
　　栞=河津　聖恵　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　48ページ　　2007年8月10日発行　定価1100円　(本体1000円)　ISBN978-4-87995-709-2 C1092 \1000E

天使
現われる…
この豊穣な荒地に。

結局、極私的ラディカリズムなんだ　鈴木志郎康表現論エッセイ集　　りぶるどるしおる76　　鈴木　志郎康　
　　編集協力=渡辺　洋　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　264ページ　　2011年11月10日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-837-2 C1370 \2800E

映画も写真も！漫画も詩も！
鈴木志郎康
人が表現するって何なんだ―と考える

ジョナス・メカス、小川紳介、木村伊兵衛、つげ義春、吉岡実、藤井貞和、伊藤聚らの作品をつぶさに追い、また自らが何故に映像作品・詩作品を創りつづけるのかを考える。

けもの道　風の辻　釣部　与志　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　144ページ　　2011年10月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-831-0 C1092 \2500E

俺の歩行ときたら　もつれ躓き足掻いていた…禽獣たちの飛行・走行・泳行からはげしく指弾される。明日へ吹く風に促されて、このままよろめき行きつづけるしかないのだろうが。

ケンポナシの木蔭で　岩辺　進　
　　写真=岩辺　進　装幀=亞令
　　四六変（156×128）　96ページ　　2015年11月10日発行　定価1320円　(本体1200円)　ISBN978-4-87995-927-0 C1095 \1200E

野原を歩む
鳥たち花たち虫たちと蜂飼う人と……
広い野原の日々に小さな輝きを見せるものたち。

言語の闇をぬけて　りぶるどるしおる17　　前田　英樹　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　257ページ　　1994年9月20日発行　定価3204円　(本体2913円)　ISBN978-4-87995-341-4 C1310 \2913

言葉が話され聞かれ、書かれる――意味はどの瞬間にどのようにして出現するのか。ソシュール・ベルクソン・ドゥルーズの思索に分け入る言葉の存在論的基礎の考究

航海日誌　LOGBUCH　　りぶるどるしおる5　　ハンス・アルプ/訳=高橋　順子　
　　解説=岡村　多佳夫　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　104ページ　　1991年8月30日発行　定価1922円　(本体1748円)　ISBN978-4-87995-253-0 C1398 \1748

理知により成形された表現形態を拒み、口ごもりながら揺れる視線を手放すことなく、不定形の局面を創出し、名づけられぬものを出現させる芸術家による言語表現

交換　相澤　啓三　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×142）　104ページ　　2006年5月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　

偶然が取り落した希望の無精卵を抱いて、
ぼくは永く生きのびた。
死を視野に失意、苦悩、絶望と戯れている。
せくな――。
狙撃者の照準に否応なく歩み入るのだとしても、
今ともにあるもののぬくもり。
交換される〈ことば〉は、
巨大な空虚に呑み込まれるとしても、
やがてほとばしり出るもののことぶれ。

光源なき灯台　相澤　啓三　
　　装幀=亞令
　　A5変フランス装（210×142）　218ページ　　2012年12月10日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-864-8 C1092 \3000E

韻律の桎梏ありて晩年の四行詩連(カトラン)といふ自在リルケの
内股の冷気うつそりつくばへり内発のリズム失せて残生

交信　峯尾　博子　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×138）　98ページ　　2014年9月5日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-902-7 Cl092 \2400E

いまだ名前の知れないものの揺らぎ、消えていったものたちが残すさわめき――空深く迷う片羽の鳥、私に訪れる交信の誘い。第21回埼玉詩人賞受賞。

黄泉幻記　林　美脉子　
　　装幀=亞令
　　菊変略フランス装（218×136）　114ページ　　2013年5月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-875-4 C1092 \2500E

無声のものたちの
降り積もり溢れ出る言葉をとらえる。
時に傍らで私に先駆するものたちの
また時には
遙か銀河に身を預けるものたちの
無音の声を聴く。

声の生地　鈴木　志郎康　
　　装幀=亞令
　　菊変（220×142）　186ページ　　2008年4月10日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-734-4 C1092 \2800E

それは
わたし。
躯が灰になると消える記憶。
ギューン、ギュルルン、ギュルルン、パッ。
パッ、パッ、パッ。パッ、パッ。
わたしは詩を書いた。
わたしは詩を書いている。
生きる自由だ、
詩は。
瞬間の自由だ、
未完の自由だ、
ビュン、ビュビューン
ビュン、ビュビューン
ラ、ラ、ラ

第16回萩原朔太郎賞受賞

凍る℧(モー)　イーディス・シットウェル詩集　　イーディス・シットウェル/訳=藤本　真理子　
　　装幀=亞令
　　四六　262ページ　　2010年6月30日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-797-9 C1398 \3000E

イギリス現代詩の孤塔/待望の邦訳

人類の暗い種蒔き時――20世紀のあらゆる苦渋と悲惨を皮肉に、直截にとらえながらも、凍え死んだ人々の上に降る陽光、死が孕む生を見届けようとする/国境と時代を越えて、私達の凍えがちな心に衝撃波を送る詩の言葉。

*Ωを上下逆にした文字

梢にて　江代　充　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×138）　132ページ　　2000年7月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-487-9 C1092 \2500E

数多くの啼鳴・ひそやかなさえずり・あわい叫び・鋭い沈黙は、それと知られることがない。一羽の鳥が翼を展げるとき、彼はあらゆる可能性を抱く世界となって地にくっきりと影を落とすが、世界は彼を見ることがない。彼が梢に翼を休めるとき、求められた友は彼の心の雫となってしたたるであろうが、偶然の落下であるかのように、彼の動揺に気づくことはない。第8回萩原朔太郎賞受賞

黒球　りぶるどるしおる26　　江代　充　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　143ページ　　1997年8月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-415-2 C1395 \2000E

その日、そこで一本の樹を見る――その日、そこで一人の女を殺める――その日付、そしてそこにいる「わたし」は何なのか。崩壊寸前の言葉によって生の意味と向き合う

古典漂泊　関根　賢司　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×144）　224ページ　　2006年3月5日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-666-8 C1095 \2800E

読書のほんとうの喜びは人との出会いにあるのだろう

生きてあることは不可解な謎にみちみちている。謎はさらに深くなりまさるようだ。現在はとても視えにくい。だが、疑いようもなく生はある。この謎とたずさえて、書物の世界をさまよってみる。

言葉たちは芝居をつづけよ、つまり移動を、移動を　野村　喜和夫　
　　栞=佐原　怜　装幀=亞令
　　菊変（214×140）　250ページ　　2008年10月10日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-749-8 C1092 \2800E

その時、炸裂するものがあって、
一つの意味は百もの無意味に分岐した。
無意味は、けれども、
記憶のささくれにさわり、血を滲ませる。
遠く背後にしたと思われる起点が
不意に魁偉な姿で立ちはだかり、
永く狂いつづけている世界と佇立するぼく自身をうながす
――いや、ここからが出発なのだ、と。

子供の情景　熊沢　加代子　
　　帯=高橋　順子　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　114ページ　　2005年11月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-658-3 C1092 \2500E

一人鍾愛の音楽に身をゆだねているうち、
木の言葉や子供たちのおしゃべり、
土と水の記憶などにまじって、詩が
長い時間をへだてた後に浮いてきたのですね。
そよぐことは戦ぐこと、
そんなしなやかな決意を秘めながら
詩を書くことは素敵です――高橋順子

ゴーギャン変奏曲　佐藤　和生　
　　装幀=亞令
　　A5変フランス装（210×138）　122ページ　　2003年7月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-581-4 C1092 \2500E

「こんばんは、ゴーギャンさん　どこから来て　どこへ行くのですか？」
ゴーギャン没後百年。かれがわたしたちに、わたしたちの心に遺したもの。

戈麦（ゴーマイ）詩集　りぶるどるしおる38　　戈　麦/訳=是永　駿　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　208ページ　　2000年11月28日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-498-5 C1398 \2500E

苦悩と怨嗟を拒む姿勢を保ち過去の悲哀の中に未来を発見する戈麦。人生のもっとも痛ましい〈時〉を見つめる。

午後の航行、その後の。　高　啓　
　　装画=宮﨑　恵子　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　80ページ　　2015年12月25日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-931-7 Cl092 \2400E

流れにつかり、小舟を推す。
片腕に
悪い心を詰め込んだ袋をぶら下げ
むずかる幼い者を抱きながら。
――きみは生きたいように生きることができるか。

誤読の飛沫(しぶき)　りぶるどるしおる50　　岩成　達也　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　238ページ　　2013年1月25日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-863-1 C1310 \2800E

いまここに生きて在ることに「無限」はどのように現れるのか。
岩成達也気ままな、しかし必至の読書がもたらす思考の滴の行方を追う。

ルーセル/ル・コルビュジェ/ムーア/前田英樹/黒田成幸チョムスキー/ヴァレリー/リクール/アウグスティヌス/ウィトゲンシュタイン/レヴィナス/ボッロミーニ/エゴン・シーレ……

最後の恋　まなざしとして　渡辺　洋　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×122）　100ページ　　2014年10月30日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-906-5 C1092 \2000E

何かを拒むことで過ぎてゆく時間――ハミングしながら洗濯物を干して／青空に飛びおりる…悲しみを捨てるバケツをください…僕は、きみがいることのむこうがわにまでしみとおってゆくまなざしとならなければならない。

サイゴンのシド・チャリシー　小沼　純一　
　　装幀=亞令
　　A5変フランス装（210×136）　64ページ　　2006年11月25日発行　定価1980円　(本体1800円)　ISBN978-4-87995-692-7 C1092 \1800E

きこえてる？
　　　　せき　せきがきこえる…
　　　　太くやわらなかなベースのライン　どこだろ
　　　　う海の向こうのどこかの洪水　遠くはなれ
　　　　た戦場の銃声　忘れていたききかけの告白
…頭のなかをころがるいくつかの音、いくつもの声

桜病院周辺　岬　多可子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　114ページ　　2006年8月10日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-679-8 C1092 \2400E

シャボン玉を吹くちいさいひとのちいさい口。
だいじにだいじにお水も飲む。
それから　急に　足元が揺れる――
桜色の神経をふるわせて、
きしんでいるもの、整理のつかないものを端から喰っていく。第37回高見順賞受賞

匙　青山　雨子　
　　装幀=亞令
　　A5変（196×136）　106ページ　　2021年8月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-017-4 C1092 \2500E

いないと思ったら
ここにいると思ってくれ
　　　　　　生きている姿は見せない
　　　　　　　　　　　　見せないが
　　　　　　　　　　　どこかにいる
　　　　　　くずれていく
　　　　　　くずれていく
　　　　　　　　　　　波

サム・フランシスの恁麼　竹田　朔歩　
　　帯=長谷川　龍生　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×142）　122ページ　　2007年9月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-720-7 C1092 \2500E

自己の存在の記憶を、ひとつひとつ確めている人である。自己がいったい何者であるか。さらに加えて変革の鞭をふるいつつ表白の領土において尚一層の造形性を高めようとしている。
禅のように、修練の両輪である。
きびしい難路が待ちかまえている。
人間の素肌に触れて立ち向う「実存」とひろがる夢幻の「芸の彩どり」のバランスシート。これからの人生に大いなる可能性の明日を生む。――長谷川龍生
第41回小熊秀雄賞受賞

さよなら、ほう、アウルわたしの水　奥間　埜乃　
　　栞=藤原　安紀子　装幀=亞令
　　A5変（210×132）　90ページ　　2019年2月15日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-982-9 Cl092 \2200E

さあ、［わたし］しかいない―――慟哭は
脱臼し、震盪、散乱、攪乱、浸潤する…
……降りしきる喪が析出する詩語の飛沫。

さんざめき　りぶるどるしおる56　　ニコライ・コーノノフ/訳=たなか　あきみつ　
　　解説=ヴァチェスラフ・クーリツィン　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　188ページ　　2005年11月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-657-6 C1398 \2500E

なにもかも裏目に出る以上、歌よ、驟雨のように流れよ……いやわたしは信じない、だけどたぶん、ああ、また信じ込むだろう……
マーマ！　おばあちゃん！　友よ！　親愛なる諸君！
これはいったい何……
コーノノフ
突入する言葉の渦・行き悩む者を囲む現実の渦
ロシアで最も長い詩行を書く詩人。彼がもたらすのは単なる言葉の洪水ではない。捉え難く正視し難い世界に丸ごと接近しようとする意思なのだ。

The Wasteless Land. VII　田中　宏輔　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×132）　120ページ　　2012年10月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-856-3 C1092 \2500E

引用詩集

The Wasteless Land. II　田中　宏輔　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×132）　156ページ　　2007年12月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-726-9 C1092 \2500E

世界の内に刻まれた無数の言葉の氾濫。
孤独な魂が、わたしの魂を、しじゅう、他のだれかの魂と取り換える。/詩論詩の試み。

The Wasteless Land. III　田中　宏輔　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×132）　64ページ　　2007年12月20日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-727-6 C1092 \2000E

詩人の内に滾る未生の言葉の噴出。
これらのこれらのこれらの言葉がたったひとつの単語として複雑で遠大な意味にむかう

The Wasteless Land. IV　田中　宏輔　
　　帯=阿部　嘉昭　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×130）　136ページ　　2009年5月30日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-765-8 C1092 \2200E

どうして、ぼくは、きみじゃないんやろうね。
どうして、きみは、ぼくじゃないんやろうね。

もしも、もしも、もしも、……、ぼくたちは、百億の嘘と、千億のもしもからできている。

The Wasteless Land. V　田中　宏輔　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×130）　144ページ　　2010年10月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-806-8 C1092 \2500E

日知庵から大黒に行く途中たくさんの居酒屋の前を通って高瀬川を渡って、木屋町通りを歩いた。

The Wasteless Land. VI　田中　宏輔　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×130）　122ページ　　2011年10月10日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-830-3 C1092 \2200E

断面のビルの蠅。ビルの蠅の断面。蠅の断面のビル。断面の蠅のビル。ビルの断面の蠅。蠅のビルの断面。

シェーマス・ヒーニー　ナチュラリストのパラダイム　　シェーマス・ヒーニー/著訳=小野　正和、清水　重夫　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　181ページ　　1993年5月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-291-2 C1098 \2500

アイルランド生れの現代詩人ヒーニー―処女詩集〈ナチュラリストの死〉の翻訳及び論考によってその喪失ヘと駆立て喪失ののちを見つめる詩想と詩語の旋回を紹介

子宮と賤　笹田　満由　
　　装幀=亞令
　　四六変（188×120）　48ページ　　2003年11月25日発行　定価1100円　(本体1000円)　ISBN978-4-87995-593-7 C1092 \1000E

列島の荒地からの21世紀の空へのかすかな谺

至高の妄想　巻上　公一　
　　帯=谷川　俊太郎　栞=町田　康　装幀=亞令
　　B6変（182×120）　216ページ　　2019年12月25日発行　定価2970円　(本体2700円)　ISBN978-4-87995-994-2 Cl092 \2700E

はじめっからことばが意味を道連れに音
楽してるから、読んでると愉快になる。
悪戯っ子みたいに自由な、思いがけない
現代詩の登場だ！―――谷川俊太郎

「ヒカシュー」の詩

1979年にシングル「20世紀の終りに」でデビューしてから
40年、ヒカシューは時代の最先端を疾走するバンドであり続
けている。その音楽の独創性が多くの人々を捕えてやまない
ことは言うまでもないが、リーダ一巻上公一の刺激的な歌詞
＝詩を忘れてはならない。現代詩として読まれるべきそれら
の作品を一冊の本の形で全ての詩を愛する読者にお届けする。

第1回大岡信賞受賞

子午線の火　有田　忠郎　
　　装幀=亞令
　　四六変略フランス装函入（186×120)　61ページ　　1999年11月15日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-470-1 C1092 \3000E

虚空に南から北へとさしわたされたひとすじの道。彼は歩む、太陽を肩に。なけなしの勇気を眼の高さに保ち、風とパンと今日を運ぶ。

『死者』とその周辺　りぶるどるしおる79　　ジョルジュ・バタイユ/訳=吉田　裕　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　244ページ　　2014年6月10日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-897-6 C1397 \2800E

剥き出しにされ身じろぎならない性と死と　バタイユ　極限の生を見つめ描破する苛烈な視線
バタイユの作品で最も悲劇的で猥雑な作品―エロティックな経験と不可分に結び付いている死の経験を、凶暴なまでの生/性の衝動、淫蕩、歓喜と惨劇として書き尽くす物語。図書館協会選定図書

静かなアメリカ　吉増　剛造　
　　装幀=亞令
　　B5変函入（190×182）　304ページ　　2009年11月30日発行　定価4180円　(本体3800円)　ISBN978-4-87995-779-5 C1095 \3800E

対話（堀内正規氏・大岡信氏・石川九楊氏・多木浩二氏・唐十郎氏との）を中心軸として幾重にも幾重にも旋回する思考と言葉/詩とエッセイ。

永い
冬眠を
していて、
ふっと、
薄靄の
香りに
気がつく
ように
して、
眼を
さました、
……そんな
書物。
「詩の地面」
の声を
聞く、
永い
旅の記録。

静かな場所　りぶるどるしおる70　　吉増　剛造　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　142ページ　　2010年4月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-790-0 C1395 \2500E

ほつれてゆく時のかすかな音をとらえる　吉増剛造　記憶の底から身をよじり解き放たれようとするものたちの影

三十数年をへだてて、水が澄むようにして〈この場所〉は再び覚知される。異国の、地球の、野の涯に佇立する、淋しい底知れぬ恐怖に逢着する言葉。

静かに、毀れている庭　岬　多可子　
　　装幀=浜田　洋子、亞令
　　A5変（210×138）　136ページ　　2011年7月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-823-5 C1092 \2500E

三百年前、この場所には何があったのだろう。さまざまなものが影を隠してしまったにしても、終ったわけではない。諦めたわけでもない。毀れているにしても、ここが私たちの場所。ちいさな声がころがる……在ることの重いしずく。第4回小野市詩歌文学賞詩部門受賞

詩的分析　りぶるどるしおる63　　藤井　貞和　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　432ページ　　2007年9月30日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-718-4 C1395 \3000E

《詩のことば》なんか存在しないのかもしれない　詩人藤井貞和はつぶやく　きわめて意識的な言語体験が重ねられるだけではないか、と

音数律が無くとも村々はうたごえを喪わなかった。ことばは文字に写されなくとも表わすことをする。この視界に人は生きてきた。この足場から、もう一度問うてみる――詩の成立を促す人の営みそのものを。

詩について　──蒙昧一撃　　りぶるどるしおる29　　中村　鐵太郎　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　316ページ　　1998年5月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-435-0 C1395 \2500E

言語と詩の経験の深淵に分け入る中村鐵太郎。終わりなき問いの冥府巡り。詩史と言葉による表現を根源的に問い直す試論/江代充/西脇順三郎/夏目漱石/小島数子/古井由吉/河野道代/中平卓馬/森内俊雄/吉岡実/前田英樹

死ぬことで　りぶるどるしおる75　　ロジェ・ラポルト/訳=神尾　太介　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　114ページ　　2013年3月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-871-6 C1398 \2500E

生きること。生きることを考えること、言葉にし書くこと。
ラポルト
立証されることがないであろう生への問を問い続ける。

続けること。意志して生き続けること。自らとそうでないものの境をたどりつつ。それは、問い詰められ、これ以上ないまでに素裸にされた生が、何かに転換されることなのか。

詩の逆説　りぶるどるしおる48　　入沢　康夫　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　432ページ　　2004年3月30日発行　定価3850円　(本体3500円)　ISBN978-4-87995-600-2 C1395 \3500E

詩に一生をかけるなんて時代錯誤だろうか？　本当にそうだろうか？　入沢康夫　そもそも詩は可能なのか？　
現代を生きる人間の現実と詩を書くことの関係を問う。問いは〈詩は表現ではない〉という逆説に直面するであろう。詩は、時代の只中で未完であることを背負い続ける生の必死の意思表示であるしかない。

死のジグソーパズル　佐藤　和生　
　　装幀=亞令
　　A5変フランス装（208×137）　96ページ　　2001年9月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-525-8 C1092 \2500E

人生を完璧に整形するはずのトライ。あらゆるトライ。あきらめのわるい奮闘。すべての砕片をあるべき場に嵌め込むはずの。

死の舟　りぶるどるしおる8　　吉増　剛造　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　217ページ　　1992年3月5日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-270-7 C1092 \2500E

意味と論理の氾濫する地に歩をきざみ行きながら、天空に遍満する言葉の火影を掬い、聞きとりがたい声の息吹に耳を澄ます――根源的了解の誕生に立会う詩と散文

詩は戦っている。誰もそれを知らない。　宗近　真一郎　
　　装幀=亞令
　　四六　358ページ　　2020年6月25日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-997-3 C1095 \3000E

けっこうな難路であるようだ。雨空の電線
に深紅のリボンが結ばれている―「詩」が
書かれる。現れ出でるものがあり、読む者
に届こうとする。読者は何を受け取るのか。
詩と思考が手さぐり行く隘路に伴走し、そ
の支えの無い宙空をかきわける現場記録。

詩の
「いま・ここ」
を問う
問い尽くす

詩の「いま・ここ」と全身で向き合い、「戦後詩」とい
う拘束、「自然」の再定義などの課題をめぐり、現代思
想や映画とのクロスオーバーを重ねるクロノロジー。
詩と世界の偶有性に目をそむけず、詩の言葉と世界の
ありようの必然的相互性をつねに択びなおしてゆくこ
と――それだけが、隠された戦いへの回路ではないか。

写真・柳沢信　1964-1986　　柳沢　信　
　　編集・構成・解説=柳本　尚規　編集協力=安保　登美子　装幀=亞令
　　A4変上製函入（255×252）　119ページ　　1990年11月10日発行　定価9350円　(本体8500円)　ISBN978-4-87995-227-1 C1072 \8500

光の中に紛れがちな影、影の底から踊り出る見えない光…人の心の深部に眠っているそれぞれの映像を覚醒させる作品96点

『赤光』の生誕　岡井　隆　
　　装幀=亞令
　　四六　476ページ　　2005年5月30日発行　定価4180円　(本体3800円)　ISBN978-4-87995-637-8 C1095 \3800E

斎藤茂吉の歌集『赤光』はどのようにして生まれ出たのか。問いがたどりつくのは、幾つもの事実そして幾つもの謎だ。それらは、『赤光』がむしろ運命的に生誕せしめられたのだ、ということを指し示すかのようだ。
茂吉の歌集をめぐる無限軌道を自在に往来する/時代・社会・文学の情況。茂吉個人が抱く特殊な事情。さまざまな事柄との特異な遭遇のしかた…。そして、『赤光』は多くの読者に読まれた、読まれつづけている――その理由を確定することはできないかもしれないが、この事実そのものは幾つもの謎とともに厳然としてある。図書館協会選定図書

秋韻　重延　鈴人　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　116ページ　　2012年11月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-860-0 C1092 \2500E

枯れ枝でつるし柿を見ている鴉。
枯れ枝でつむじ風を待っている鴉。

動乱の朝をたえている彼の頭蓋にはまるい小さな青空が映っている。
口を開けて闇をそっと吐き出す。
それから彼は飛び去り、狂風にとけ入る。
次の朝、その次の朝も……。

小冊子を腕に抱く異邦人　りぶるどるしおる18　　エドモン・ジャベス/訳=鈴村　和成　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　229ページ　　1997年12月20日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-427-5 C1398 \3000E

異邦人とは何か――言葉にのみ自己の出自を認めるジャベス。人間の内奥の根源的〈異邦人〉を問う。祖国を追放され、〈顔を毟り取られた〉異邦人=詩人ジャベスが、砂漠の砂粒に似た詩語を紡ぐ。言葉の僅かな偏光作用と遥か遠方への跳躍を介して、自己を問う。

白石かずこの世界　性・旅・いのち　　水田　宗子　
　　カバー写真=白石　由子　装幀=亞令
　　四六変（190×126）　240ページ　　2021年2月25日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-86725-007-5 C1095 \2800E

コトバ――
出逢う。交わる。
いだく。生きる。

白石かずこは、ひとりの人間であり、詩人である――迷い、もがき、突進する。
奔放な言動で袋叩きの目にもあう。けれども生きる。抗いつづ
ける。表現することをやめない。地球の遠い片隅まで身をはこ
び、手放してはならないものを劇しく見つめ、ふるえる息づきと
鋭い歓びと際限のない苦悶を人たちとともにする。その心の共
振だけを唯一の頼りとして、コトバを繰り出し、生をいとおしむ。

白石かずこは第二次世界大戦敗戦後からの日本現代詩
を代表する詩人の一人である。女性詩人の一人である。
その事実を出発点に、白石かずこの詩世界・表現行為に
伴走し、その思考と蛮勇ともいえる生き方に同行する。

The Illuminated Park 閃光の庭　なかにし　けふこ　
　　栞=新倉　俊一、阿部　日奈子　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×140）　122ページ　　2009年9月15日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-773-3 C1092 \2200E

まばゆいばかりの光が切り裂くところに苦悩と迷妄と凄惨ばかりが照らし出されるとも、木の緑は繁り、赤子が空に手を伸ばし、煮炊きの香りが立ち、世界はここよりはじまる。

時間のない時間　無時間的時間　　りぶるどるしおる9　　芒　克/訳=是永　駿　
　　解説=浅見　洋二　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　148ページ　　1991年12月30日発行　定価1922円　(本体1748円)　ISBN978-4-87995-268-4 C1398 \1748

負の方向ヘ滑落する〈時〉と対峙し、反転を重ねることによって〈時〉と抱きあい生を謳う。否認される言葉=否認する詩語の光芒によって世界を刺し貫く中国同時代詩

自画像のための忠実な画布　熊沢　加代子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　106ページ　　2015年10月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-928-7 Cl092 \2500E

もうカクレンボはしない
したくても出来ない…空にくっきりと線を描く飛行機雲。
だが、自画像はそうはゆかない。見えない線も描かれる。
姿を隠すのではなく、複雑に描き加えられ、見つけられる
ことなく消える線――日々の輝翳に応答しようとする思索。

ジョナス・メカス詩集　ジョナス・メカス/訳=村田　郁夫　
　　付録エッセイ=村田　郁夫、木下　哲夫、鈴木　志郎康、吉増　剛造　装幀=亞令
　　四六　292ページ　　2019年6月10日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-987-4 C1098 \3000E

異国からの流亡者が
故国のことばで綴る
心のふるえ――痛切な、懐旧と思索。

ジョナス・メカス――1922年リトアニアに生れる。ナチスの侵攻に抗し、49年難民船でアメリカに渡る。映像作家・詩人として知られるが、故国を捨てざるを得なかった孤独な異邦人として表現に身を賭すよりなかったのではないか。実験的映像作品プライベートフィルムも、アメリカでは理解されることのほとんどないリトアニア語での詩作品も、その弧心の疼きであろう。2019年1月ニューヨークマンハッタンで逝去。邦訳エッセイに『どこにもないところからの手紙』『メカスの難民日記』ほか。

衰耄する女詩人の日々　財部　鳥子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　88ページ　　2006年11月20日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-691-0 C1092 \2400E

私には
智慧もない、腕力もない。
あるのは、
非対称の妖しい二つの目玉と、
うべないがたい日々を肯定する煩悶の
ゆえ知れぬエネルギーばかりだ。

sketches　荒木　時彦　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×132）　48ページ　　2010年12月20日発行　定価1980円　(本体1800円)　ISBN978-4-87995-813-6 C1092 \1800E

私の傍らの深い穴から、いくつもの孤独な声がこだましてくる。ある日の私の…昨日の隣人の…少しずつ少しずつ、幾重にもずれていく。

sketches 2　荒木　時彦　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×132）　48ページ　　2012年2月10日発行　定価1980円　(本体1800円)　ISBN978-4-87995-840-2 C1092 \1800E

小さく響きをかわす――小鳥…「WE ARE ALL ALONE」…仰向けのシャチ…庭の木…黒いTシャツ…小鳥…バター・トースト…竹馬――いろいろなこと…僕…何処から…何処へ

鈴と桔梗　坂口　簾　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　108ページ　　2018年1月30日発行　定価1980円　(本体1800円)　ISBN978-4-87995-964-5 C1092 \1800E

地を這う影に向かって
烏は尋ねる
おまえが見たのは
執着か
背信か
それとも逸脱

いいえ
わたしが見たのは
幼年の日の紙飛行機
祭り囃子
それから
風に散る文殻の灰
ああ　それから
自死を選んだ人の落下

烏は考える
自分史の挿絵は
まだ乾いていないのかも知れない

スペイン　謎の台地　　齋藤　康子　
　　帯=旦　敬介　装幀=亞令
　　四六変（190×130）　140ページ　　2019年11月30日発行　定価1980円　(本体1800円)　ISBN978-4-87995-993-5 Cl095 \1800E

ウナムーノが見ていたものを追体験すべく、
サラマンカへと通い続けた50年―――いく
つかの奇妙な出来事の隙間からほの見えて
きた精髄をわれわれは何と名づければよい
のだろうか？ ――旦敬介

〈永遠に生きたい！〉スペインの思想家の言葉が若い学徒の心に
刺さった。何だろう、これは？　そんなことが不可能なくらい子
供でも知っている。生きることを考察する哲学者ともあろうもの
が、なぜこのような言辞を吐くのか…そして彼女はスペインに旅
立った――その地で起こるさまざまのこと。謎は解けるだろうか。

星界からの報告　りぶるどるしおる21　　池澤　夏樹　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　142ページ　　1995年4月30日発行　定価2136円　(本体1942円)　ISBN978-4-87995-352-0 C1395 \1942

山々を走り海に乗り出しせっせと地球を理想郷に造り変えてきた人問たち…その頭上はるかな空に星が光を灯す、人は遠い涯を見つめ、遠方からの通信に耳を澄ます

聖女たち　バタイユの遺稿から　　りぶるどるしおる13　　ジョルジュ・バタイユ/著訳=吉田　裕　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　172ページ　　1993年7月30日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-309-4 C1395 \2000E

禁忌と禁忌の侵犯に人間をみる。バタイユ/吉田裕。エロチックな物語の試みとその検証。

セメニシュケイの牧歌　SEMENIS*KIU** IDILE***S　　りぶるどるしおる22　　ジョナス・メカス/訳=村田　郁夫　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　159ページ　　1996年3月30日発行　定価2136円　(本体1942円)　ISBN978-4-87995-374-2 C1098 P200E

実験的な映像作品で知られるメカスは、母語リトアニア語で書きつづける詩人でもある。苛酷な流亡の現実のさなかでリトアニアの小さな村の日々を想う、第一詩集

*Sのうえにv
**Uの下にセディーユ
***Eの上に.

船舶ナイト号　りぶるどるしおる33　　マルグリット・デュラス/訳=佐藤　和生　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　154ページ　　1999年10月25日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-468-8 C1397 \2000E

ありふれた出来事、一つの愛の始まりから終りまで。デュラスはそこに何を見るのか。

全人類が老いた夜　りぶるどるしおる51　　石井　辰彦　
　　写真=普後　均　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　124ページ　　2004年10月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-622-4 C1092 \2500E

また星が流れるなんて！　行軍に疲れし馬の項垂るる野に
石井辰彦
深い夜闇の世界を往く、懊悩と嗟歎の歌

あの日、21世紀は苦悶の叫びとともに始まった。混迷する世界は老躯を曝し、夜明けを期することさえならない――空港も未来も封鎖。だって、全人類一気に老ゆる夜、だぜ

そこはまだ第四紀砂岩層　服部　誕　
　　装幀=亞令
　　A5　72ページ　　2020年10月20日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-86725-003-7 C1092 \2400E

小舟に乗った釣り人たちが
釣り糸をあげては天を仰ぎため息をつく……

日々のあれこれを磊落にいなしながらも、悲哀と
断念に顫えもする言葉たち。十四行の詩句にこめ
られて、どこまでも付き添ってくる嗟嘆のこだま。

そのコ　ぱく　きょんみ　
　　装画=岡崎　乾二郎　装幀=亞令
　　菊変（218×138）　128ページ　　2003年11月10日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-590-6 C1092 \2400E

ふうっと笑う/生まれはどこだろう/裸足がつめたい/小さな大荷物を背負い直し/ふるふるふるえるものを/みつめているのさ//そうだよ/わたしたちのことだよ//もういちど飛ぼうか

空に映す　大高　久志　
　　装幀=亞令
　　A5変（196×148）　124ページ　　2011年12月10日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-822-8 C1092 \2200E

世の渡り合いから少しはずれたところで、頬杖をつき、空に目をやっている…眉根をよせ、くるりと背をむけ、すたすたと歩きだす。その背を、月の光と小犬が追ってゆく。

宙音　林　美脉子　
　　装幀=亞令
　　菊変略フランス装（218×138）　58ページ　　2011年5月15日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-820-4 C1092 \2000E

これは宇宙の遥か古代から届けられた言付けだろうか。今それを聴く私はすでにして未来の者だ。今一度、耳を澄ます。ひとり歩く。そして今一度この音信を遙かな虚空へ発信する。第45回北海道新聞文学賞詩部門受賞

宙の上　是永　駿　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　96ページ　　2016年11月25日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-949-2 C1092 \2400E

そらのうえ――そこでも、やわらかな雨が谷を
ぬらし、小鳥と少女はさらなる天空をめざし、
男たちは迷い行き、女たちも時には笑みをこぼ
し、白い花びらが音もなく散る、のだろうか…。

空の庭、時の径　須永　紀子　
　　装画=浜田　洋子　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×136）　70ページ　　2010年4月10日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-788-7 C1092 \2200E

わたしは鳥と木について考える…飛翔と落下、陽光と落葉について考える…記憶とことばの要らない涯へ踏みだそうとして、狂ったピアノの鍵盤を叩いている…　第26回詩歌文学館賞（詩部門）受賞

空のマチエール　松浦　成友　
　　装幀=亞令
　　四六　100ページ　　2001年11月15日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-526-5 C1092 \2000E

増補新版・ギリシャの誘惑　りぶるどるしおる83　　池澤　夏樹　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　212ページ　　2017年12月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-962-1 C1395 \2500E

ギリシャはぼくに人間とは何かを教えた
池澤夏樹
賞讃者のまなざしで綴るギリシャ案内

古代ギリシャからの長い時間。時代とともに変るものがあり、変らないものもある…どこまでも青い空。過剰なほどに注ぐ陽光。その下で人々の生きること。

太陽の場所　りぶるどるしおる44　　イヴァン・ジダーノフ/訳=たなか　あきみつ　
　　装幀=亞令
　　菊変（220×220）　188ページ　　2001年11月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-532-6 C1398 \2500E

路上には誰もいない: 万象もなし、神もなし――光線だけだ　ジダーノフ　世界の縁を切り裂く　われわれはいったい何者なのだろうか、われわれはどこからおのれについて知るのだろうか。そしてわたしの心にひそんでいるものは、心の域外にも存在すべきであろうか。

対論◆彫刻空間　物質と思考　　りぶるどるしおる42　　若林　奮、前田　英樹　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　204ページ　　2001年12月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-533-3 C1370 \2500E

表現とは何なのか。表現する人間とは何者なのか。彫刻家若林奮批評家前田英樹による思考の交換。さまざまな角度から、表現・表現行為・表現する人間を見極めようとする、類を見ない試み。美術表現、言葉、思考、物質、ラスコー壁画・セザンヌ・マチス・ジャコメッティ、自然、そして人間について。

タエ・恩寵の道行　林　美脉子　
　　栞・帯=岡和田　晃　装幀=亞令
　　菊変略フランス装（218×140）　116ページ　　2017年5月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-954-6 C1092 \2500E

終りなき「テロルと惑乱」に晒される私たち
の日常。神々の血涙が染み出す宇宙は、不定
形に拡がりゆき、その公法秩序を瓦解させる。
星辰にて嗤うものの声は、孤立する人聞の身
中にこそ響き、巣食うのだ。―――岡和田晃

他者論序説　りぶるどるしおる35　　宇野　邦一　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　261ページ　　2000年4月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-483-1 C1390 \2500E

私と他者を隔てるものは何か。それは私たちの生き方にどう関わるのか。宇野邦一　思考の極限で〈他者〉と対面する。
私たちは〈他者〉とともに〈他者〉によって存在する。〈他者〉との出会いを、引き裂かれた〈私〉の反響・差異と多様性の肯定から見つめ直すことができないだろうか。

闘いの変奏曲ヴァリエーション　VARIAZIONI BELLICHE　　りぶるどるしおる10　　アメーリア・ロッセッリ/訳=和田　忠彦　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　117ページ　　1993年2月10日発行　定価1922円　(本体1748円)　ISBN978-4-87995-295-0 C1398 \1748

仏・英・伊の三重言語を強いられた言語的無国籍者が、凄絶な記憶・残酷な愛・ほとばしる精神を抱く肉体から軋み出る表現としてとりなおす自らの言葉、言語の狂気

種まく人の譬えのある風景　倉田　比羽子　
　　装幀=浜田　洋子、亞令
　　菊変（214×140）　108ページ　　2008年10月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-751-1 C1092 \2500E

この町では、抛られた「ことば」たちが硬い地面に毬のように弾み、不意に現れる急坂や段々や曲り角をかろうじて回り込みながらも、痛々しい残響だけを増殖させているかのようだ。人間たちはせっせと産みせっせと殺し、息絶えたのか――さあみんな、
窓を開けようよ、はじまり、はじまり！
種と卵を砂漠にかえし、つぎの氷河期までもちこたえる。

多方通行路　りぶるどるしおる49　　平出　隆　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　252ページ　　2004年7月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-609-5 C1391 \2500E

詩は自分が詩であることを放擲するほどにも道を逸れる　平出隆　言葉の深層海流をたどる。
詩の行為は、言葉そのものが疑われ否定されてゆく過程に立つ。そこで、ひとつの到着地を、到着するやたちまち切り崩すものとなる。行為はこうして、休みなく、終りない。

魂踏み　能祖　將夫　
　　装画=三嶋　典東　装幀=亞令
　　A5変（210×142）　114ページ　　2016年10月7日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-945-4 C1092 \2200E

夕陽と猫と魂と…梟と螢と泣き止まない子供と
…大人になった私を追いかけてくるのは誰？　
子供のままの私が追いかけているのは何？　と
つぜんおそってきたかなしみを、踏んで踏んで。

大地の黄身　後藤　美和子　
　　装画装幀=浜田　洋子、亞令
　　A5変（196×132）　130ページ　　2007年12月10日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-725-2 C1092 \2200E

いつの時だったか…この惑星の狂騒はとうに枯れ絶えていた。うずくまっていた寡黙な影が立ち上がる。地中のものの小さな声を受け、鉤ざきの腕をあげ、光の中に走り行く…裸足で…。彼方にも…もう一人…。

楕円形ノ夏no夜　大石　健　
　　装幀=亞令
　　菊変（220×148）　122ページ　　2007年10月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-719-1 C1092 \2500E

騎乗の婦人が木立のなかを行く。少し変だ…。木の手前の婦人の姿を背後の幹が侵している。木々の間には切り裂かれた空間が空無として描かれる。ねじれた視界がどっと押し寄せる。
本書があらわにする言葉たちもまた、よじれからまった視野のなかを痙攣しながら迫ってくる。見え隠れする「いまだ/すでに」の狂った曲率に翻弄されつつも。
――（きみはどこにいるの？）

ダチュラの花咲く頃　山本　博道　
　　装画=浜田　洋子　装幀=亞令
　　A5変（208×138）　114ページ　　2007年8月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-713-9 C1092 \2500E

トランペットを吊した形の花が小さく揺れる。
猛毒を抱いて、淡い光のなかで。
光の粒子は、ありとあらゆる不幸とあり得るかも知れない未来を攪拌すると発光するのだろう。それらは、折にふれて、途方もない数字に置き換えられるだろう。
……ぼくはくたびれてしまった。けれども、だからといって世界をほったらかしにしていいのだろうか？
……ぼくは伸びた鬚を剃りはじめる。

チェーホフが蘇える　りぶるどるしおる27　　アレクサンドル・ソクーロフ/訳=児島　宏子　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　157ページ　　1997年10月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-418-3 C1398 \2000E

チェーホフは私たちの心の中に沈んで小さく光る石なのか。映画監督ソクーロフが、その姿をとらえる。
映画『ストーン』に、百年を越えて私たちを感動させつづけるチェーホフの姿をとらえ、人々の心を揺さぶったソクーロフ。本書はその撮影日記である。

地球のカーブに沿って　香川　紘子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×142）　112ページ　　2004年7月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-610-1 C1092 \2500E

大きな書物の角を必死にたどる小さな尺取虫の背中。
そっと息を吹きかけて笹舟を往かせたころを思う、すこし老いた私の背中。
虹が地球の記憶を抱いてカーブするように、歩むこと
生きることの記憶を抱いてまるくなる。
ほんの少しずつ、少しずつ。

地球の蜜を吸う　亀井　知永子　
　　装幀=亞令　装画=亀井　知永子
　　A5変（196×132）　130ページ　　2014年9月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-903-4 Cl092 \2500E

不完全な星――人が、走り笑い疑い歌う。踊り矢印を放ち囁き泣く。拳を上げ問い信じ躊躇う…ダレノタメデモナイ。私は漆黒の深い森に踏み入る。

地上を渡る声　小池　昌代　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×140）　130ページ　　2006年4月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-668-2 C1092 \2500E

かすかな反射光が照らし出す白い空洞、白い塊のようなわたし
――死のほうへ死のほうへと進みながら、
不意の声に促され、
滾々とわき出る〈今〉に身をひたす。

父・母　菊地　隆三　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　138ページ　　2008年3月1日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-732-0 C1092 \2500E

母よ、骨で笑いながら、まだ傍で見守ってくれるつもりか。
苦労をかける。ごめん。
父よ、無理しなくていい。遠路はるばる迎えになど出てくれるな。
あっちで火にあたりながら酒でもやっててくれ。
間もなく俺がそっちに会いに行くから。
子らよ、もう付いて来るな。この先は一人で行ける。
ほら、仲のよいみみずが二匹。道案内だそうだ。

第8回山形県詩人会賞特別賞受賞

中空前夜　須永　紀子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　88ページ　　2006年1月10日発行　定価2310円　(本体2100円)　ISBN978-4-87995-661-3 C1092 \2000E

不器用な心とからだ/「わたし」は混乱している
中空を漂う「ことば」にぶらさがって流れていく。何かの終わりと始まりの境にある夜に。

蝶であった日　中本　百合枝　
　　装画=三好　豊一郎　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　126ページ　　2009年9月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-775-7 C1092 \2500E

ずっと探していたのですよ/わたしのほうこそずっと待っていました。ほんの偶然の風が草を揺らし、あなたが遠い蝶となった日から。あなたの忘れ物はここにはありませんが。

柄沼、その他の詩　阿部　宏慈　
　　装幀=亞令
　　菊変（218×144）　206ページ　　2020年3月5日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-995-9 C1092 \2800E

枯葦だけが揺れる沼。その水面を漂い来るもの――
あしおと、ささやき、なげき。往ってしまうもの、去
ってしまったものたちの背姿。葦の葉が触れた指先
の傷が疹く。いのちの揺らぐ影を託そうとするのか。第20回山形県詩人会賞受賞

月と重力　及川　馥　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　138ページ　　2014年2月28日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-893-8 C1092 \2800E

地球はわたしたちを抱きしめようというのだろうか。
それにしては手ひどい痛撃を見舞ってくれる。
それでも事後には言葉にあまる優しさや
悲哀を味わうことになるのだが。
太平楽の極みと言うべきか…。

茨城新聞社賞受賞。

月の庭|庭の月　渡辺　彰　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×142）　114ページ　　2015年5月1日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-916-4 Cl092 \2500E

一本の木のある庭。
月の光があるだけの庭。
――ふりそそぎあふれくつがえり行き悩む言葉の洪水。

テラスにて　及川　馥　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　90ページ　　2003年4月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-567-8 C1092 \2500E

今日の漁を終えて帰港する小舟のように/長い通りの角にあるカフェの/テラスにすわるのが/ぼくの儀式だ//はるか未来にたたずむものへ　ぼくの/なげかけた問いには/こだまさえもどってこない

天にも地にもいます神よ　江知　柿美　
　　装画=江知　柿美　装幀=亞令
　　菊変（218×138）　160ページ　　2008年10月31日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-755-9 C1092 \2600E

うまくないんだよ
どこかうまくないんだよ　ね――
奴は、神サマは、ちゃんと人間に化けるべきだ。
鬼だって、悔いてみたり嘆いてみたり、ひと通りのことは経験する。
混乱は悪いか、破滅は悪いか、考えるだろう。
わたしだって問うてみる。
どうして歓びは苦悩に先導されなくてはならないのか。
本当に何故?

冬至の薔薇　相澤　啓三　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×142）　140ページ　　2010年3月15日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-786-3 C1092 \2600E

死を眼前に凝視する詩人の脳裏を一人の少年がよぎる。
スキップして野を行く少年に死の日はまだ遠い。
彼は険しい道を辿りどこまでも川を遡ることになるだろう。
そして、そこに死があるとしても、
記憶は未来へと紡がれる。
時を越えて光の中の点景となるまで。
いつの時も人の心を揺らす花の香に紛れるまで。

時の嵐　諸行　響　
　　装幀=亞令
　　A5　122ページ　　2003年6月30日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-576-0 C1092 \2000E

自然を愛する人に。無常の時が痛みのように感じられだした人に。

飛びたたせなかったほうの蝶々　岬　多可子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　158ページ　　2015年8月15日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-921-8 Cl092 \2600E

…世界は狂おしく荒れ壊れた…それから…内
深くに秘匿されているものが、底の知れない
虚空で、身をねじ切るように羽を震わす――

遐い宴楽　入沢　康夫　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×140）　120ページ　　2002年6月20日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-545-6 C1092 \2400E

わたしたちは　脆く壊れやすい一生を授けられてここに集ふ。わたしは誰？　誰？　誰？　だれなの？/そして　ここ　ここはどこ？/どこなの？　どこなの？/遠い旅のあげくに/わたしは　わたしたちは　いま　ここに立つ/そして今朝　ぼくは最後の道連れ　きみとも別れた　第10回萩原朔太郎賞受賞

鳥　りぶるどるしおる65　　サン=ジョン・ペルス/訳=有田　忠郎　
　　装画=小野　絵里　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　96ページ　　2008年8月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-742-9 C1398 \2000E

飛翔する鳥は魂そのもの、魂の断裂そのもの、生命の不屈の現れ。
ペルス
宇宙エネルギーの可視的砕片として鳥を描く。
《行け、もっと先へ！……》生きかつ創造することの広大さに向って、われらの夢が出現させるよりさらに多くの岬を巡って、鳥たちは越えて行く/ペルス最後の長篇詩。

鳥？　その他　及川　馥　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　114ページ　　2004年5月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-604-0 C1092 \2500E

ふりそそぐ光に忍びよる闇をとらえ、永遠のしぶきを浴びて日々の沈黙を深くする…行先を喪って古い地図を手に立ちつくす旅人――風が鳥の声をはこんでくる

どこにもないところからの手紙　りぶるどるしおる55　　ジョナス・メカス/訳=村田　郁夫　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　201ページ　　2005年10月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-654-5 C1398 \2500E

故国リトアニアの人々とともに考え、思いをめぐらす
メカス
大地、世界、そしてそこに生きる人間について

どこにもないところ…それはおそらく人類が訪ねつづけてまだ到り着けないところ。映像作家・詩人メカスもまた訪ねつづける。流亡者こそが持つまなざしをたよりに。

drop　荒木　時彦　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×132）　50ページ　　2014年4月15日発行　定価1980円　(本体1800円)　ISBN978-4-87995-895-2 C1092 \1800E

水滴/一秒後の水滴…次の水滴を待っている…鳥が鳴く…知らない子供の声…遠い教会の鐘の音…私の耳殻はひずんでいはしないだろうか…聞こえるものを聴いているのが私の内部なのだろうか…

ナーサルパナマの謎　宮沢賢治研究余話　　りぶるどるしおる73　　入沢　康夫　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　260ページ　　2010年9月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-805-1 C1395 \2800E

ふとしたきっかけから氷解する謎…いかにしても残る謎…
入沢康夫
賢治作品の魅力と賢治研究の周辺を語る

賢治の作品はどうしてこんなにも人々の心をとらえるのか。それは生涯と文学創造のすべてを賭して、生きてあること・本当の幸福・見えにくい世界の真実の姿を問い、見つめ続けたからではないか。

なにしてても　片岡　直子　
　　装幀=亞令
　　B6変略フランス装（182×120）　148ページ　　2003年12月10日発行　定価1980円　(本体1800円)　ISBN978-4-87995-594-4 C1092 \1800E

夜道でじっとしている/夜があけきらないうちに帰ろう/台所の壁に皿をぶつけよう/勢いで掃除もしよう/おムツがえをして/つめ切りもしよう/問い掛けに返事はしないで/あなたのめがねをりょうてで/そっとはずす/あなたはとくべつなもの
せかいがゆれて/ことばがとまらない

菜の花句集　中堂　高志　
　　装幀=亞令
　　B6　102ページ　　2002年12月25日発行　定価1650円　(本体1500円)　ISBN978-4-87995-562-3 C1092 \1500E

海を来て陸の菜の花見てをりぬ/菜の花ややがては海に辿る道

奈良に吹く風　服部　由貴　
　　帯=中田　剛　装幀=亞令
　　B6変（172×108）　82ページ　　2021年5月25日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-86725-012-9 C1092 \2000E

松影を踏み尼寺の雛を見に

徐々に私の心の奥に浸潤してきた句。
やさしく手をひかれるままにしばらく
ついてゆくと、そこに不思議な景がひ
ろがっているといった印象。此の世と
彼の世の境を踏んだか。―――中田剛

お山焼白毫寺から手伝ひに
お水取り生駒の竹も運ばるる
塔いつもゆふぐれのいろ初桜
朝早くささゆり届く開山忌
二の鳥居より虫の闇はじまりぬ
綿の花橘寺も荒れにけり

ニーチェ詩集　フリードリヒ・ニーチェ/訳=河内　信弘　
　　栞=長谷川　龍生　装幀=亞令
　　菊変（220×138）　320ページ　　2007年3月10日発行　定価4180円　(本体3800円)　ISBN978-4-87995-700-9 C1098 \3800E

おまえはどこにいる。手を差し伸べてくれ。
あるいはせめて指だけでもいい。

トリノの広場で鞭打たれる馬に駆け寄って狂気の闇に落ちていったニーチェ。自分の中を嵐になってさまようものを追い求め、自らを追い立てる。その彼が抱く静謐な言葉。

探すことにうんざりしてからは/見つけることを覚えた。
風が私に逆らうようになってからは/あらゆる風に帆を張った。

ニーチェの誘惑　バタイユはニーチェをどう読んだか　　りぶるどるしおる25　　ジョルジュ・バタイユ/訳=吉田　裕　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　229ページ　　1996年7月25日発行　定価2670円　(本体2428円)　ISBN978-4-87995-383-4 C1310 P2500E

時代と権力が変造したニーチェを奪還する試み。生の力=欲望は諸々の現実を送出しつつも自らの否定=死を実現する外ない。不可能としての生を極限まで思考する。

逸げて來る羔羊　りぶるどるしおる81　　石井　辰彦　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　266+16ページ　　2016年7月11日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-936-2 Cl392 \2800E

にげてくるこひつじ―そのおののきとあらがい石井辰彦連作短歌　…一匹(イッピキ)の羔羊(こひつじ)が逸(に)げ來る

嗟嘆とともにあるほかない、未来へのひそやかな呼びかけ……白皙の（敗衣の）羊飼に問ふ。―何故に爾の羊は鳴かぬ/是の世の誰そ彼時に、ひとり問ふ。―何故あの夏に死ななかつたか？

西脇順三郎、永遠に舌を濡らして　りぶるどるしおる40　　中村　鐵太郎　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　244ページ　　2004年6月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-608-8 C1391 \2500E

永遠と無限は日々の散歩の途次に　中村鐵太郎　西脇順三郎詩の芳醇と孤影を味わいつくす。
詩人・西脇順三郎が飄然と姿を現す。20世紀中葉を行き、無言の季節をしのび、詩のみがなし得る現実把握と世界予見をなした。すなわち続く世紀を行く者たちの辿る「ヘナヘナとしてはてしない」道を孤り歩んだ。

虹はゼロに満たない　亀井　知永子　
　　装画=亀井　知永子　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（196×132）　150ページ　　2011年3月5日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-815-0 C1092 \2400E

国境を越えてゆくくねくねした道の傍には無数の哀しみと痛みが埋められている。七色のアーチが立つ。瞬時に消え崩れるのだろうが、何も無かったことにはならない。光の残影が、あなたを揺する。

日本モダニズムの未帰還状態　りぶるどるしおる82　　矢野　静明　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　258ページ　　2016年7月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-939-3 Cl370 \2800E

瀧口修造・北園克衛・鮎川信夫はいかに考えたのか。
問い返す矢野静明
瑛九・靉光・ベーコン・ゴッホはどのように描くのか。

世界を構成しながらも世界と対立する20世紀の、そして今世紀の芸術家たち…人はどのような思考に拠れば世界と共に、今をあらしめ、今を変容させ続けられるのか。絵画現場からの問い。

NEW WORK　松元　泰介　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　102ページ　　2007年8月31日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-712-2 C1092 \2400E

熱帯植物園　関口　涼子　
　　装幀=亞令
　　菊変（188×152）　154ページ　　2004年11月10日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-623-1 C1092 \2600E

鳥が鋭い啼声をひびかせる。空間を切り裂くラインをになって飛び立つ。目には捉えにくい刻々の変移と振動を背負って、声なく動かずにいるものの背後で。不規則な時の揺らぎを名づけようとし、思考の散乱する薄片を彫りとどめようとするものの前で。

ネフスキイ　りぶるどるしおる66　　岡井　隆　
　　写真=新見　恵里子　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　398ページ　　2008年10月25日発行　定価3850円　(本体3500円)　ISBN978-4-87995-753-5 C1392 \3500E

表現と記録のあわいに身をさしはさむ
岡井隆
日日の生に寄り添う視線が奔出させる世界と人間を描く歌群

歌人は、毎日数首の歌を書くという戒律を自らに課した。約一年間続けられたこの稀有の試みは多くの歌を誕生させた。それらから840首余を選んで編まれた書下し歌集。第1回小野市詩歌文学賞短歌部門受賞

眠れる花　村岡　由梨　
　　装画=一条　美由紀、鈴木　眠　装幀=亞令
　　A5変（196×134）　204ページ　　2021年7月30日発行　定価2970円　(本体2700円)　ISBN978-4-86725-016-7 C1092 \2700E

自分の体の一部なのに、自分の思うようには動かせない、
もどかしい6本目の指。
思い切ってナタを振り下ろしたら、
切り裂くような悲鴫をあげて、鮮血が飛び散った。
真っ赤に染まった5本指は私。
切り落とされた6本目の指は誰？
そんな風に、痛みで私たちは繋がっている。

ノート/夜、波のように　糸井　茂莉　
　　装幀=亞令
　　A5変（195×138）　130ページ　　2020年9月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-002-0 C1092 \2500E

幾つもの不穏な夜をくるみ、幾つもの訪れない眠
りからにじみでる――白い夢の記述。ちがう。白
い記述の夢。ちがう。……夢の白い記述/気の遠
くなるほどに甘やかな献立の白日夢をひきつれて。

背後の時計　新延　拳　
　　栞=岡井　隆　装画=森　雅代　装幀=亞令
　　A5変（195×138）　124ページ　　2011年9月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-826-6 C1092 \2500E

時計のなかに昨日が刻み留められる。昨日と今をへだてる数々の夢、完成されることのない夢――白い子犬、ずっと隠れたままの隠れん坊、ポケットのなかの小型のナイフと叫び、ぴたりと揺れの合う二つのぶらんこ……風が力をゆるめ、そっと押す。今なにか言った？

灰と緑　松本　邦吉　
　　装画=高須賀　優　装幀=亞令
　　A5変（210×146）　98ページ　　2005年8月25日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-650-7 C1092 \2400E

汝ハ何故泣クノカ
怒リナガラ通リ過ギテイルカラ
コノ生ノムナシサトハ何カ
碧空ノ臍ニカクサレタ薔薇
汝ハ何故悲シクナイノカ
死ノナカヲ帰ッテキタカラ

ゆっくりとみちてくる時
とぎれることなくひろがる光

白秋　りぶるどるしおる64　　高貝　弘也　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　224ページ　　2008年6月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-740-5 C1092 \2500E

北原白秋の童謡、抒情小曲、そして〈まざあ・ぐうす〉
詩人　高貝弘也
「トンボの眼玉」とともに詩のありかを見つめる

赤い鳥小鳥、揺籠のうた、銀の点々海雀…母を待ちつつ金魚を突き殺す少年や、墓場の血のような曼珠沙華――童心と抒情、過酷な現実と言葉の光。白秋の世界を歩く、清新なエッセイ。

薄明のサウダージ　野村　喜和夫　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　178ページ　　2019年5月20日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-986-7 Cl092 \2800E

さまよい歩いている、みんなどこへ行ってし
まったか…青い扉の小さな劇場…狭い路地の
奥…遠いオレンヂ…街はずれの空き地のサア
カス…魂をまねて輝く黄斑のような月…われ
われの背後を通り過ぎてゆく何かとても大切
なもの…骨の芯をふるわす何かとてもなつか
しいもの…それが薄明というものであるのか。

第38回現代詩人賞受賞

匣の中の宙　石井　茂　
　　解説=鈴木　志郎康　装幀=亞令
　　A4変函入（250×210）　80ページ　　2005年9月10日発行　定価4400円　(本体4000円)　ISBN978-4-87995-651-4 C1072 \4000E

鈴木志郎康●針穴写真機で写真を撮る写真家・石井茂。光と向き合い、フィルムの表面に直に光を掴まえ、光の堆積を待つ。光を受け止め、見えなかったものを撮る。この世に生まれ出た時の初めての光の体験を再現する。
女性の肌、植物、器物、石、そして風景に至るまで、瑞々しく生きているもののように感じさせられる。イメージが光に当たって砕けて、あるいはまた光を纏って、妖しく揺らめく姿となって生成してくる。

橋の上の人たち　りぶるどるしおる28　　ヴィスワヴァ・シンボルスカ/訳=工藤　幸雄　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　140ページ　　1997年7月30日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-413-8 C1398 \2000E

ノーベル賞受賞詩人・シンボルスカ　人間と世界の、小さな摘み取ることのできない可能性を奇蹟的に発見する言葉。奇妙な惑星がある。川に橋が架かり、橋の上には篠つく雨にせかれて走る人たちがいる…時の激しい雨脚をくぐり、行き着く先の見えない道を走り続ける人たちが。

機（はた）　──ともに震える言葉　　りぶるどるしおる60　　関口　涼子、吉増　剛造　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　250ページ　　2006年7月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-680-4 C1395 \2500E

詩とは何なのか…言葉はどのようにして他者と出会うのか…
吉増剛造　関口涼子
二人の詩人による言葉の交換・変奏・共振

そもそも詩とは、表現とは何なのであろう。何故に、一人一人の言葉は、否応なく他者に呼びかけ、ともに思考し、ともに震え、特別な時空を喚び出すのだろう。

二十歳できみと出会ったら　高　啓　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　110ページ　　2020年12月5日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-004-4 C1092 \2500E

風が吹いているよ―――ほんとうは目をつぶって頬に風を感じることが好きだっただけなのかもしれないのに、険しい表情をつくって駆け出してゆくものを追っている。どこに行きつくのだろうか。風が吹いている。

発熱頌　松本　邦吉　
　　装幀=亞令
　　菊変（218×138）　138ページ　　2000年8月15日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-488-6 C1092 \2800E

熱をおびている不安な肉の塊だけが、予期せぬ愛の稼動と孤独の深度を保証する。たましいはどこかへ飛んでいったまま応答がない。第42回晩翠賞受賞

波動　波動　　りぶるどるしおる16　　北　島/訳=是永　駿　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　247ページ　　1994年6月10日発行　定価2670円　(本体2428円)　ISBN978-4-87995-332-2 C1397 \2428

今日の中国に生を享け、文学の真摯な模索を手放さぬまま国外流亡という現実を選択した詩人・北島。その〈個〉を見つめ続ける精神の光芒が照らし出す同時代の憂悶

玻璃となって　岩﨑　風子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　116ページ　　2011年11月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-835-8 C1092 \2500E

惨たる混乱と破壊の中で、生は形を変えてしまった。もう叫びは声にならないのかもしれない。それでも、きみがそうっと小さな舟を水に浮かべる日のために、言葉をさがす――玻璃となって/虹となって/ここに居ますと/あおい空で光る。

春と豚　生駒　正朗　
　　装幀=亞令
　　A5変（196×134）　102ページ　　2020年11月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-86725-001-3 C1092 \2500E

セミの亡骸が転がっている
何者かがここを通り過ぎていった――

何の変りもなく、うららかであるべき日々の片隅に
潜む穏かならざる陰り。小さなつむじ風のなかを、
痛みに似たものをこらえながら、ひとり歩いてゆく。

　　　　　　　　　　……強い嵐になっていた

令和3年度茨城文学賞、第17回日本詩歌句随筆評論大賞・詩部門大賞受賞

半世記　高貝　弘也　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×136）　112ページ　　2004年7月25日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-611-8 C1092 \2600E

まだ創られていない
/未だ、みちてくる

根が、繊い芽を漂わす。睨まれているサナギは　解けて。もう五十年も待ったのだから、そろそろよいでしょう。しかし、あなたは、遥か永いときを待ちつづけていた。あなたは自分の生誕の日すら知らない。知るよしもない。この場所にはいなかった

それでは、何もかもなくなってしまうというのか。しろい茸が、岬の巡りから、胞子を汀へと振るい落としている。肉あるものは、いずれ　くずれ滅びるだろう。水際で絶えず、泡が寄せては又　返している。揺れ靡く、藍藻よ。それでも死んだら何もかもなくなってしまうのか。水平線の向こう、静かに振りかえれば　月が

（報われたように枝の上で）
鵯が、光りを産み。そして、光りが言葉を生むだろう。自発的で、予測不可能な、ふれ。土の、湿り。朝焼け。無花果の樹が、葉の付け根に舞うように実らせた、熟しつつある青い子を、乱れながら振り落としているという。この　無花果の樹の下で、あなたは不帰の人となった。しかし、その子は尋ねてくる。散々な音を連れながら。消えないかげを追うように。遅れつづけてきた時間帯に、目覚めたその子は歩いてくる。平衡から遠く離れ、無数の花々が寄り集まった塊を、熟しきったものばかり一つひとつ踏み潰しながら。

第29回地球賞受賞

伴侶　りぶるどるしおる2　　サミュエル・ベケット/訳=宇野　邦一　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　115ページ　　1990年4月15日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-207-3 C1398 \2000E

言葉の極北で表現を紡いだ作家の小品。時の層の下に拉がれた身体を把捉しようとする精神の闇の底で、少年期の煌く記憶を綴合せ、存在の不確かな光輝を手さぐる

パゴダツリーに降る雨　山本　博道　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　117ページ　　2005年10月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-653-8 C1092 \2500E

うんざりするほど降りつづく雨、うんざりするほどの旱魃…
泥の中で死んでいた男たち…やせた小鳥を売る少年…頭にの
せた籠のバナナを売る少女…丸はだかの赤子を抱え乞う女…
わたしはなおも歩いて行った――生きるのに意味なんてあるのだろうか？
遠くキラキラと常夏の青い海が広がっている　第13回丸山薫賞受賞

パステルナークの白い家　りぶるどるしおる46　　佐々木　幹郎　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　290ページ　　2003年9月5日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-584-5 C1395 \2500E

歩く。河内平野からネパールへ、アイルランドへ、遥かな空へ。佐々木幹郎の旅、詩の旅。
荷物をできるだけ小さくして、旅立つ――地球の上を吹く風が耳を撫でる。故郷の野の草がこの地にも生えている。言葉が行き交い、生の声が届き、人々の心は共振する。

ぱらっぱ　らっぱ　杜　みち子　
　　装画=杜　みち子　装幀=亞令
　　菊変（216×142）　142ページ　　2014年10月20日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-905-8 C1092 \2600E

遠くの知らない所で燃え盛る夕陽が明日へと墜ちてゆく。知らない時間が零れ落ちてゆく。ぱらっぱらっぱ――雨の音か。追いかけてゆこう、すばやく消えゆくものを。ずーっと遠くまで。

秘苑にて　松浦　寿輝　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　154ページ　　2018年11月25日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-978-2 Cl092 \2800E

秘苑を囲んで流れる川
濁った水には月も星も映らない
その岸に沿って忍び足で警邏する
醜く肥った老人がいるという……

………足を踏み入れてしまったそ
の鎖された庭で、不穏な日夜を踏
み迷い、すっかり白髪が増え、難
船しつづけているわたし。時には、
夢の酸敗を知らない、柔かい黒髪
の少年が脱出の錯覚に溺れもする。

（ひかり）、…擦過　岩成　達也　
　　装幀=亞令
　　菊変（218×142）　176ページ　　2003年6月25日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-574-6 C1092 \2800E

ひと　一人いない　街裏の小広場　陽の光の下で　一本の細い吹上げが　のびあがり　砕け　きらめきながら　落下する　　おそらくは　闇から闇へ　　私は　それを見ている……　　岩成詩学、さらなる展開。

光は灰のように　有田　忠郎　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×130）　90ページ　　2009年9月15日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-774-0 C1092 \2400E

今この時、降る光の下で葉を揺らす木々。
やがて葉は散るだろう、
何がしかの伝言を世に残して。
時から時へすばやく渡る記憶の影となって。第25回詩歌文学館賞（詩部門）受賞

光まで　加齢同行記　　宮田　澄子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　122ページ　　2003年8月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-582-1 C1092 \2500E

不可解な力の渦巻く空の下、来る日も来る日も往き還るふたりの、不可思議な道行――天真の極点で抗うひとと、受苦の底闇にかすかな曙光を手探るひとと。

日付のない断片から　りぶるどるしおる11　　宇野　邦一　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　101ページ　　1992年11月30日発行　定価1922円　(本体1748円)　ISBN978-4-87995-289-9 C1395 \1748

聞こえない叫びをあげてすベる時間。あたかも時間の骨のような生＝存在。振子動をなすかのような時間と欲望の関係を言葉から剥落する意味によって分光する断章

鄙唄　粕谷　栄市　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　158ページ　　2004年10月10日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-620-0 C1092 \2800E

この唄をうたった者、
そして、
この唄にうたわれた者は
どうなったか――
それは誰にも分からない。
あとには
桶と櫛と夢想と……
重い石臼が転がっている。
ただそれだけだ。
誰も知らない
芒の野をどこまでも
どこまでも走る
息づかいが聞える。
第55回芸術選奨文部科学大臣賞受賞

日々の終りに　殿岡　秀秋　
　　栞=芹沢　俊介　装画=殿岡　秀秋　装幀=亞令
　　A5変（210×142）　130ページ　　2009年3月10日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-760-3 C1092 \2200E

「ぼく」はいったい、いつになったら、寄る辺なさに震えているであろう子どもの日の「ぼく」のたましいを、自分の胸に抱きかかえることができるのだろうか。――生き難さの理由をたずねて、詩人はひとり、真っ暗な存在の基底へと降り立つ。――芹沢俊介

日々の、すみか　りぶるどるしおる77　　季村　敏夫　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　128ページ　　2012年12月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-861-7 C1392 \2500E

失われる。失われつづける。破局の現前と圧倒に心身をさらすしかない人間について。
季村敏夫詩集
そえがき=鵜飼哲「旅のさとり」/細見和之「災厄のただなかで書くこと」

「どこから来て、どこへ」答えを求める問いは禁じられ封じられる。日付すら忘れ、戻りつつ逆らう。（…）道のべの風は、どんな輝きでほほえむのであろうか。

フーガ　ひとつの花　山口　保　
　　装幀=亞令
　　B5変函入(225×150)　96ページ　　2003年10月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-587-6 C1092 \2500E

フェスティーナ・レンテ　来主　順　
　　装画=浜田　洋子　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　96ページ　　2003年3月30日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-565-4 C1092 \2200E

道はないのかもしれない――「ここから歩いて永遠とひとつになるその場所へ」の。《Festina Lente》――そう、ゆっくりと、だが急いで、ただ往きつづけるしかないのだろう。

深さ、記号　りぶるどるしおる69　　前田　英樹　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　438ページ　　2010年1月15日発行　定価4180円　(本体3800円)　ISBN978-4-87995-783-2 C1310 \3800E

思いがけぬ角度から発出し、驚きに満ちたカーヴを描いて一点に収斂する思考。
前田英樹
人と宇宙の在りようを考える。

絵画・彫刻・映画…あるいは詩や言葉。人間は表現と思考のあらゆる不可能性をつねに突破して、表現することも思考することも決してやめない。何故そうするのだろう。

二つの市場、ふたたび　りぶるどるしおる39　　関口　涼子　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　90ページ　　2001年5月30日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-512-8 C1392 \2000E

小さい生きものと剛腕のものが行き交う市場。そこで交される言葉は、一度一度の性愛に似て、関係でありながら、関係の輪郭を曖昧にする。関口涼子のさまよう視線。

フタを開ける　西尾　勝彦　
　　装幀=亞令
　　B5変（182×122）　80ページ　　2010年4月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-789-4 C1092 \2000E

いろいろのことが思うようにはこばない…
おもいもよらないなりゆきになる…
それでもぼくは、古井戸に小石を落として水底に映る空をゆらしてみたり、ひぐらしの声を追って道に迷ったりしている。

普通の女　高橋　順子　
　　装幀=亞令
　　菊変（218×142）　137ページ　　1993年9月30日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-316-2 C1092 \2800

愛のふるえを胸の底深くに味わう、時に人々の機智の輪に入り、時には宇宙の系に添って思索の測鉛を傾ける。そしてある一瞬に愛を喪うこともある孤りの人間

不束もの　杉山　弘子　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×142）　110ページ　　2012年5月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-844-0 C1092 \2500E

浮遊する母、都市　白石　かずこ　
　　装幀=亞令
　　菊　138ページ　　2003年1月10日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-563-0 C1092 \2600E

片肺ながら不死身の惑星が三日月にぶらさがって口笛を吹く。死と生がここではよく顔をあわせます。もつれた夢をポケットに、母たちは飛ぶように歩いてゆく、魂のころげ落ちる音に耳をかしながら。いくつもの暁と夜。次の朝はもうすぐ。ひとびとの住む星は、未来と過去をまぜこぜにつめた記憶のザックを背負いなおすだろう。第44回晩翠賞受賞

物質の政治学　バタイユ・マテリアリストII　　りぶるどるしおる37　　ジョルジュ・バタイユ、吉田　裕　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　259ページ　　2001年1月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-502-9 C1310 \2500E

現実に立ち戻ること、下劣なことがらに、眼をかっと見開きながら、叫び出さんばかりに魅惑されること。ちょうど足の親指に眼を寄せて大きく見開くように。バタイユ
美的なもの・秩序だったもの・合理的なものを排して、折り合うことのできない他者との遭遇を現実の運動の中で体験する。ファシスム批判を中心に。

ブラジル日記　りぶるどるしおる32　　吉増　剛造　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　190ページ　　2002年4月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-540-1 C1395 \2500E

遥かの地で、地の囁き・人の声・風の震えに耳傾ける　吉増剛造　遠い記憶の影と現在の揺らぎを見つめる。　“木の葉に貌を埋めて一角獣は考えていた”――彼は、あたうかぎり自他の迷宮の境を歩み続け、果てしない遠さを歩き続ける、途上の旅人。心の層に幾筋もの戦ぎを抱き、未知の境域へ入って行く。

ブリキのwe　大石　健　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×138）　96ページ　　2002年9月20日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-552-4 C1092 \2200E

ひとつの言葉が発語される瞬間、おびただしい意味声音が同調し、おびただしいコダマを喚び出し、この詩空間は全存在の反響そのものとなる。

分極論　小林　弘明　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×140）　120ページ　　2009年4月25日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-762-7 C1092 \2400E

すべてを映す盲目の目で触れ得ないものに触る白髪の老人…救出し得ないものに涙し滅び続ける女…灰色の点として投擲される子、廃棄される子の日々…落下する石、飛ぶ鳥…際限なき忘却、錯乱、誤謬でしかない言語の連なり…そこにはない真実の泥…あなたは誰なのか。誰でないのか。本物と偽物をかきまぜる（わたし）に隣する者よ。

プロスペローの庭　相沢　正一郎　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×132）　76ページ　　2012年11月10日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-859-4 C1092 \2400E

そこでも、
日々の難儀はつぎつぎに到来する。かすかなたよりをよすがにとぼとぼ歩む。たよりないたよりであっても何かがみつかるかもしれない。目覚めのとき、耳底に響くかすかな葉ずれの音。小さな手がかりのような。私は颯颯たる風となる。草を薙ぎ樹を躱し…カーテンにからまり自転車にぶつかり……足跡の隠されている道をみつける。

蛇の舌　石井　辰彦　
　　装幀=亞令
　　菊変（218×144）　146ページ　　2007年9月11日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-715-3 C1092 \2800E

人々の心を灼く言葉を発するために、預言者は蛇の舌を与えられたという。《うたびと》は、いかなる舌を持つだろうか？
…小鳥を空へ放つ少年/光のなかへ奔り去る少女/失くした片方の靴/読みさしの本/人生の苦艾の酒/お砂糖の白い粉/昨日砕けた夢/美しい嘘/真つ白な帆/真つ青な空/血の色のリボン/猛猛しい背中/あどけない戦士/星の悲鳴…
この世界をそっくりそのまま抱きしめるために。

蛇を仕留めて　吉岡　又司　
　　装幀=亞令
　　菊変（214×142）　124ページ　　2005年5月31日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-639-2 C1092 \2500E

小便こき嘘こくように詩をこけ、志も死もこけと誘き出すものと一緒に出て行こう。何もかもほったらかしにして。あてもなく。もっと遠くへ。
捜すな。
帰りがけの駄賃に蛇を仕留めて、少年のように口笛を吹いて戻るから。
今年もあの峠を越えるつもりなんだが……

変身のためのレクイエム　りぶるどるしおる68　　ヤン・ファーブル/訳=宇野　邦一　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　177ページ　　2010年5月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-793-1 C1397 \2500E

私はやめないだろう/一枚一枚/魂の皮を剥ぐ　ヤン・ファーブル　残酷に、また滑稽に、そして静かに〈死〉をあばき出す

生の単なる終焉として〈死〉を捨て置くのではなく、生の現実の出来事である〈死〉を見つめること。生の惨状を受容し鎮めるのではなく、生を少しだけ〈変身〉させること。

ベオグラード日誌　りぶるどるしおる78　　山崎　佳代子　
　　写真=ジタレビッチ　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　232ページ　　2014年3月30日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-894-5 C1395 \2600E

山崎佳代子　見つめる　陽ざしそそぐ葉陰の目には見えにくいもの。
2001年から12年。世界は変わってしまった…。これらの日付のある日々を刻むベオグラード、人々…。こわされたもの、深い闇に沈むもの、幽かな光となって現れ生まれてくるもの。第66回読売文学賞随筆・紀行賞、図書館協会選定図書

ページェントの台本　上　　ジェイムズ・メリル/訳=志村　正雄　
　　装画=浜田　洋子　装幀=亞令
　　菊変（218×142）　368ページ　　2008年5月15日発行　定価5280円　(本体4800円)　ISBN978-4-87995-729-0 C1098 \4800E

その昔…そこに緑のものがひろがった…ケンタウロスが走る…人間が二足歩行を始め…巨大な閃光が炸裂し…そしてまた今、ひとりの赤ン坊が初めての呼気をはく…
ほんとう？そういうことだったの？
死すべきともがらとともに生じた、時間の壮大な歴史、その人間語訳、血わき肉おどる、否、霊わき気おどる創世についての書。

ページェントの台本　下　　ジェイムズ・メリル/訳=志村　正雄　
　　装画=浜田　洋子　装幀=亞令
　　菊変（218×142）　324ページ　　2008年5月15日発行　定価5280円　(本体4800円)　ISBN978-4-87995-730-6 C1098 \4800E

その昔…そこに緑のものがひろがった…ケンタウロスが走る…人間が二足歩行を始め…巨大な閃光が炸裂し…そしてまた今、ひとりの赤ン坊が初めての吸気をのむ…
ほんとう？そういうことだったの？
死すべきともがらとともに生じた、時間の壮大な歴史、その人間語訳、悩める天界からの伝言。霊わき気おどる創世についての書。

北島（ペイタオ）詩集　北　島/訳=是永　駿　
　　栞=唐　暁渡　装幀=亞令
　　四六　408ページ　　2009年1月30日発行　定価4950円　(本体4500円)　ISBN978-4-87995-758-0 C1098 \4500E

Bei Dao [北島]――20世紀なかばの中国に生を享け、混迷に迷妄を重ねる人類世界を裸身で生き抜く孤高漂泊の詩人。その思索と言葉の全貌。

きみは霧の海を走る
帆もなく
きみは月夜に停泊する
錨もなく

路はここより消え
夜はここより始まる

北島[ペイタオ]　1949年、北京生れ。高校在学中に文化大革命が勃発、学業を中断、十年にわたり建設現場の肉体労働にたずさわる。70年より詩作を始め、芒克らと地下文学雑誌『今天』（=今日）を創刊するも、停刊処分となる。89年「六・四」天安門事件をめぐる活動の結果として国外流亡を選択、以後、欧州各国及びアメリカに活動と生活の場をもとめて漂泊。ノーベル文学賞の候補に数度名を挙げられ、世界での評価と注目は高い。詩集に『北島詩選』『ブラックボックス』『旧き雪』『天涯にて』『零度以上の風景』『鍵を開ける』ほか、小説『波動』、随筆集『青い家』など。

方位なき方位　底なき井戸　りぶるどるしおる3　　ヴィクトール・セガレン、豊崎　光一　
　　解説=渋沢　孝輔　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　138ページ　　1990年11月30日発行　定価1922円　(本体1748円)　ISBN978-4-87995-231-8 C1398 \1748

セガレンの作品を介して多様にして対立する世界を生き、その批判的思想と方法を受けて還元=縮減不能な差異をそのまま現前させようとする詩と思考の本源的営為

星またはストリップ・ショウ　松沢　宥/編=宥学会　
　　栞=建畠　晢　装幀=亞令
　　菊変（218×140）　136ページ　　2013年10月15日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-885-3 C1092 \2800E

Yearningly
Unspoken
Things
Always
Kiss
A to Z

Meet
And
Take
Something
Unseen
Z to A
Alas!
Whatever
Around

――瀧口修造
松澤宥に

日本における観念美術の創始者にしてコンセプチュアルアートの世界的草分け、松澤宥の表現の原点=詩を集成。

蛍、探して　館　路子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　156ページ　　2006年1月30日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-664-4 C1092 \2600E

雨は降りしきり河が氾れる。
雪が降りつのり地底の河を行く龍が暴れる。
それでも、猫たちは何度目かの春を迎え、幼いものが来る。
少しずつ遠ざかる人…地平線をうつむきがちに往く父、
迷子になっている母、会うことのなかった妹…
仄青い燐光の流れる行方から声がする
「ここにいる」――

ホッチキス　細見　和之　
　　装画=浜田　洋子　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　96ページ　　2007年7月15日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-707-8 C1092 \2400E

ホッチキス売りの幼い少年…
歩むべき道を示すホッチキス占い…
ありとあらゆる取り返しのつかないこと
どもを束ねつづける伝説のホッチキス芸人…
…ホッチ、ホッチ、キス、キース…
内部と外部について深刻な考察をめぐらす男の
耳に、ホッチキスのかそけき鳴き声が囁
く…君たちは、ホッチキスなしには
一日たりとも暮らせないのだ。

ホバリング　中堂　けいこ　
　　栞=富　哲世　装幀=亞令
　　A5変（208×136）　106ページ　　2010年8月22日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-800-6 C1092 \2500E

引力の法則に逆らうことができるだろうか……
生きるものの、かくも切ない、おおわらわの、あてのない抗い。

ボイシャキ・メラ　山本　博道　
　　装画=百田　智行　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　138ページ　　2009年7月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-768-9 C1092 \2500E

今、この部屋に、老いた鳩が一羽…ぼく…あちらには、黙々と布地に色糸の針を刺す少女…竿の綿菓子を売り歩く少年…街道には、置き忘れられた荷物のようにうずくまる老人…それでも、
ボイシャキ・メラ――今日はめでたい正月祭りだ
ズズンチャズズンチャズンチャッチャ
もう夢なんて一つもないのに青い空を白い雲が流れていた

紡錘形の虫　いのうえ　あき　
　　栞=野村　喜和夫　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　144ページ　　2020年12月10日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-86725-005-1 C1092 \2600E

いのうえあきという詩人は、空間を詩に変えることができ
る稀有な能力の人である。ポエジーはどこか彼方や天空や
地下や無意識にあるのではなく、いまここの空間に隠れ、
潜んでいるのだ。それをつぎつぎと明るみに出してゆく。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――野村喜和夫

ぼんやりと白い卵　柿沼　徹　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（195×132）　96ページ　　2009年8月31日発行　定価2420円　(本体2200円)　ISBN978-4-87995-772-6 C1092 \2200E

一個の卵。
夜明けの薄い光の底に落としてみる。
すでに終ってしまった落下の始まりが、
すでに始まっている落下の完成へと連続する。
朝のやわらかい光の中で
変形崩壊した存在の散乱様態へと、
〈今〉へと

また終わるために　りぶるどるしおる30　　サミュエル・ベケット/訳=高橋　康也、宇野　邦一　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　123ページ　　1997年11月20日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-420-6 C1397 \2000E

きちがいじみた思い出の堆肥としての生を見つめるベケット。終局まで「死の時」を重ねる生を描く。

二つの言語で書くベケットはまた、寒々とした生の現実を不可思議なおかしみとして描く。自身の内部に響いている幾つもの声・思考の呟きを聞く。

マチュピチュの頂　パブロ・ネルーダ/訳=野谷　文昭　
　　装幀=亞令
　　菊変（220×140）　120ページ　　2004年11月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-624-8 C1098 \2500E

ゲリラ戦を闘うチェ・ゲバラは、夜になると兵士たちにネルーダの詩を読んでやるのをつねとしていた…
お前たちの死せる口を通じて語ろうとわたしはやってきた
地上に散在する
ありとあらゆる黙した唇を集めるのだ

わたしの血管と口に来い

わたしの言葉と血を通して　さあ話すのだ
――山頂に登り、アメリカ大陸の過去を生きた人々、未来を生きる人々の声に耳を傾ける。

幻の木の実　阿部　はるみ　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×132）　88ページ　　2013年7月10日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-879-2 C1092 \2400E

木の実がこぼれる微かな音に耳を澄ましていた。一緒に。その夜。それから…やや忙しげに一日一日をこなし…ふと気づくと、その遙かな木霊を聞いている。これからも――そんなことが何度も何度もあるだろう。
第46回横浜詩人会賞受賞

三日月をけずる　服部　誕　
　　装幀=亞令
　　A5略フランス装　126ページ　　2018年9月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-973-7 Cl092 \2500E

日々の片隅にうずくまっている記憶の小さなかけらたち。

この日―それらは濃い影をともなって立ち上がり、特別な一日をかたちづくる。

第14回三好達治賞受賞

右から二番目のキャベツ　服部　誕　
　　帯=岩阪　恵子　装幀=亞令
　　A5略フランス装　86ページ　　2017年10月20日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-960-7 C1092 \2400E

詩人服部誕は、日々見慣れた生活の光景をくるり
とひと皮剥いてみせます。あらわされるのは洒脱
で骨太な、ときに少々黒いユーモアにつつまれた
生への親和です。
たとえばパスであなたの隣に座っているのが熊だ
ったら、どうしますか。服部誕にきいてみてくだ
さい。　　　　　　　　　　　　　　―――岩阪恵子

みずたまり　すとう　やすお　
　　装幀=亞令
　　A5変（195×132）　122ページ　　2010年7月31日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-799-3 C1092 \2500E

ちり
あり
いしころ
そしてぼく
ちさく
あたりまえで
みすてられたものたち
あるとき　それらが
「ある」ときづいて
そのおどろきをうたう
みずたまりにうつる
うたのかずかず

水のクモ　藤本　真理子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×142）　138ページ　　2017年9月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-958-4 C1092 \2500E

　まるまっている
マリモ
　　　ミノムシ
　　　　　　　
ダンゴムシ
　　　　シーッ

宙空を漂い、身内を
震わす無数の声をす
くいとる。影のよう
にありながら飛び交
い響き合わせる言葉
たち――

ミゼレーレ　沈黙する季節　　岡本　勝人　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×140）　130ページ　　2004年11月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-625-5 C1092 \2500E

地球は回転する――
いくつもの冬が
その上を過ぎた。
冷たい風が
街路樹の幹を揺らす。
親しい者たちは
親しい者たちについて
ほとんど語らなかった。
幼い者たちは
路地裏に朝顔をみつけて
夏が
変わらずに
やってきたことを知る。
葬送と序奏が繰り返され、
自問が繰り返される――
わたしたちは
どこへいこうと
いうのだろうか。

見ちがい言いちがい　りぶるどるしおる4　　サミュエル・ベケット/訳=宇野　邦一　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　120ページ　　1991年11月15日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-257-8 C1398 \2000E

まなざしもことばも錯誤としてしか機能しないという視座から、錯誤の総和であるしかない生を見つめ、死という終結に向う待機時間としての極限的な生を語る作品

みどり、その日々を過ぎて。　岩成　達也　
　　装画=杉本　彩子　装幀=亞令
　　菊変（220×140）　116ページ　　2009年8月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-771-9 C1092 \2500E

突然の「断ち切られ」/一つの死、そして生。
深く訴える慟哭の声、悲痛な想い…ともに在るための言葉。第27回現代詩花椿賞受賞

緑の帽子　鈴木　研之輔　
　　手紙=井坂　洋子　あとがき=鈴木　英明、鈴木　東海子　写真撮影=松浦文生　装幀=亞令
　　B5　152ページ　　2011年3月31日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-817-4 C1071 \3000E

水底の　窓の灯りがともり　詩=峰岸　了子/画=峰岸　伸輔　
　　装幀=亞令
　　B5変（220×188）　116ページ　　2020年8月25日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-999-7 C1092 \2500E

行ってしまう人。残りつづける人。風が樹々を揺らす。光が水底でためらう。うずくまり、そして、翔びたつ、思い。

見晴らしのいいところまで　塚本　敏雄　
　　写真=塚本　敏雄　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　116ページ　　2013年7月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-880-8 C1092 \2500E

明日は国境を越える
振り返ってはいけない

ひととして社会に生き
人生という長い一日の午後を渡る
詩人の声はどこまでも柔らかく
どこまでもまっすぐに届く

みみぱぁまぁ　毛利　珠江　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　138ページ　　2010年11月30日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-811-2 C1092 \2600E

小さな、けれども決定的なしぐさ…いなくなった人をいとおしむ女の、れんげ畑をひとり走る幼女の。――花々に寄り添う言葉が覗き見る内界。

ミラベルの数の書　ジェイムズ・メリル/訳=志村　正雄　
　　装画=伊藤　聚　装幀=亞令
　　菊変（218×142）　480ページ　　2005年1月30日発行　定価4950円　(本体4500円)　ISBN978-4-87995-632-3 C1098 \4500E

メッセージ:
誠実であれ
何かに
何にせよ
誠実であれ

ふたたび、さまざまな制約をくぐりぬけて出現する魂の交わり。そこで語られるのは、人間の歴史・宇宙の歴史――人間よ、人間は自分の宿命の支配者なのだ/忘れるな　偶然は存在しない。……そうであったのか。生の深く過酷な衝動こそが、宇宙の、地球の、人間の歴史なのだ。悩みまどう魂たちの天界から発するメッセージが、詩人のペン・詩の希求を介して私たちの胸にとどく。〔全米図書賞受賞作〕

麦笛のかなた　渡辺　宗子　
　　装幀=亞令
　　B5変（220×182）　152ページ　　2011年5月15日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-819-8 C1092 \2800E

幾つもの鍵を束にして持ち歩く一人の老人。
どの鍵も昨日今日の現実の扉を開けるには役立たない。
けれども、鍵老人の
かつての日々への憤りと抗い、
そして麦笛の響きの記憶とともにある深い肯いは、
耳をそばだてる少年の背をそっと押す。
あやうい未来の空への見えない扉を開く。

無垢なる夏を暗殺するために　高柳　誠　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×126）　126ページ　　2019年8月10日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-990-4 Cl092 \2600E

言葉の蕾が一つはじける。そのとき、隠れ潜
んでいた世界が姿を見せるだろう。ひびきか
わす幾つもの声と幻像――風の…地の…星々
の全き孤独の…ただ立ちつくす少年と弟の…

夢想の大地におがたまの花が降る　四ッ谷　龍　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×122）　144ページ　　2016年9月10日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-943-0 C1092 \2400E

反響し、谺する言葉。
揺れ続ける音と形象の境を浮遊する…憂鬱
からの恢復…武蔵野の地形の探求…災禍の
衝撃…天界と冥界の混交…全感覚の融合…

おがたま〔小賀玉、招霊〕：
モクレン科オガタマノキ属の常緑高木。三月から四月にかけて、直径3cmの花をつける。12枚の細い花被片は、尖のほうが白く、基部がうす赤い。モクレン科特有の甘い香りがするが、その芳香は儚いものである。神木として扱われ、熊野速玉大社、京都白峯神宮などの境内に植えられたものがとくによく知られている。自生の北限は房総半島南部で、東京以北に野生状態の木を見ることは稀である。

村への道　木村　迪+夫　
　　装画=田村　明日香　装幀=亞令
　　菊変（215×138）　100ページ　　2017年2月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-951-5 C1092 \2500E

祖母の詠う悲痛な歌を草臥れきった身体の
底に響かせながら、凍える日々に這いのぼ
り、緑萌える日と黄光色の稔りを夢みて走っ
た坂――村の行く末を見詰めつつ、村へと
つらなるその道を、今、ゆっくりとたどる。

+点1つではなく2つ

memories　荒木　時彦　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×128）　72ページ　　2013年5月15日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-874-7 C1092 \2000E

10000ピースからなるジグソーパズル…小さな記憶のかけらたち…たちまち僕のなかに無限の時が組み立てられる…たくさんの人のなかを行くひとりぼっちの僕…口を結んでいる僕のなかの無数の言葉たち…

「メランコリア」とその他の詩　池澤　夏樹　
　　装幀=亞令
　　A5変（198×136）　78ページ　　2021年7月5日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-86725-014-3 C1092 \2400E

視界の隅をかすかに揺らし遁げてゆく気配
ぼくは追う…気配はまた遁げてゆく
すっくと立つ樹に吹きよる風
ひるがえる葉裏から若い光が
たわむれ遁げてゆく

心という砂漠の井戸から
詩のための水を汲む

もう一人の祖父に　I　田部　武光　
　　装画=田部　武光　装幀=亞令
　　菊変（218×140）　114ページ　　2004年12月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-630-9 C1092 \2500E

祖父よ、
一度も会わずに終わったわが祖父よ、
あなたはこうして現われた…

僕の胸ははじめ散りそうだよ!
母がとうとう自分の父親のことを語り出したのだよ

もしも僕が居なかったら　杉山　弘子　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×142）　106ページ　　2012年5月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-845-7 C1092 \2500E

百枕　りぶるどるしおる71　　高橋　睦郎　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　198ページ　　2010年7月10日発行　定価2970円　(本体2700円)　ISBN978-4-87995-798-6 C1392 \2700E

沢山の言葉の枕に頭をあずけ、詩の夢天にあそぶ
高橋睦郎
三百三十三の句作と自在奔放なエッセイ

森鷗外の『うた日記』　岡井　隆　
　　装幀=亞令
　　四六　292ページ　　2012年1月15日発行　定価3520円　(本体3200円)　ISBN978-4-87995-838-9 C1095 \3200E

森鷗外の生誕から150年。その間に、世界は大きく動揺し、激しく変貌した……軍医部長として日露戦争に従軍した鷗外の詩歌句集日記をつぶさにたどることで、私たちは、私たちの「今」と鷗外の「今」を問い直すことができるのではないだろうか。

森が棲む男　宇佐美　孝二　
　　装幀=亞令
　　A5変（196×136）　134ページ　　2015年10月5日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-924-9 Cl092 \2500E

生きることの陰を帯びながらひそやかにただ在る
物たち…ざわめき生きる物たち…。それら物たち
の息づきと震え。切れ切れの悲鳴のような。記憶
の底に棲みついている森の透明な物語りのような。

森の中で　MIS*KE　　りぶるどるしおる23　　ジョナス・メカス/訳=村田　郁夫　
　　詩=吉増　剛造　解説=鈴木　志郎康　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　139ページ　　1996年3月30日発行　定価2136円　(本体1942円)　ISBN978-4-87995-375-9 C1098 P200E

揺らぎつづける世界を流浪者のやわらかく震えるまなざしで見つめるメカス。この世紀に生きることの孤独と苦難と絶望を幾度も見つめ直す。またたきにも似た詩語

*Sのうえにv

森へ行く道　山本　楡美子　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×142）　146ページ　　2009年11月15日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-778-8 C1092 \2600E

世界から忘れられてひたひたと歩む道で、「ここにいる」――
あなたの言葉が聞こえたと思った。不意に、木の葉がひらひらとひるがえり花が色を帯びる。小さな記憶のひとつひとつが、生れたばかりの獣のようにふるえ、走り出す。…再び消え行くために。第2回小野市詩歌文学賞詩部門受賞

夜陰の梢　杉山　弘子　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×142）　100ページ　　2009年12月10日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-781-8 C1092 \2400E

考えに考えぬいて
何処へ行こうとしているのか
眠くなって　しもうた
よく生きた　柿の実　一つ食す

やがて麗しい五月が訪れ　原條　あき子　
　　編=池澤　夏樹　装幀=亞令
　　A5変函入（210×138）　232ページ　　2004年12月15日発行　定価3520円　(本体3200円)　ISBN978-4-87995-628-6 C1092 \3200E

原條あき子はぼくの母である。
生きることは誓いにそむいて心を変えることだ。
あるいは捨てられて恨むこと。
人間は、そこが魅力なのだと原條あき子はいう。――池澤夏樹

私の中に白い鳥がいて
ときに高く高く月に飛びたがる
私の中の大きな翼の鳥は
帰れない旅へと私を誘う

心を鬼にして　私も行こうか
白い翼の鳥の飛ぶままに
街々がひそかにしじまに沈むころ
月の暈が赤く夜空に浮かぶころ

あそこでは物語りもうたもなく
手をつなぐ人も　さよならもない
この世のうすいえにし　重い絆
髪を切る日のときめきもないと

私の中に白い鳥がいて
帰れない旅へと私を誘う
私のそばに眠る人を捨て
飛び立とう　月へ　翼広げて

やさしいめまい　佐々木　浩　
　　栞=中上　哲夫　装画=宮﨑　恵子　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　120ページ　　2005年6月30日発行　定価1650円　(本体1500円)　ISBN978-4-87995-640-8 C1092 \1500E

明日になれば、鳥も歌うよ――
ほんとうだろうか。
ぼくはあなたのことを想って眠れないし、
眠れたとしてもあなたの夢ばかり見る。
ぼくの影からあなたの影へと
時の影がめまいを起こした蝶のように飛んでいる。

奴草　吉岡　実　
　　序=高橋　睦郎　解題=宗田　安正　装幀=亞令
　　四六変函入（190×１２７）　128ページ　　2003年4月15日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-575-3 C1092 \2800E

詩人・吉岡実の遺した全句作
品川や馬糞はなるる白き蝶
あけびの実たずさえゆくやわがむくろ
奴草【やっこうそう】椎の根に寄生する寄生植物。葉は五、六片の鱗片となって十字形に対生。晩秋、茎頂に淡黄色奇形の両性花を単生。花弁を欠く。花に蜜あり鳥媒花。

やわらかい檻　川口　晴美　
　　写真=田村　尚子　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×142）　114ページ　　2006年5月25日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-669-9 C1092 \2400E

シーッシーッシーッ。約束を破るなんて人間じゃないってママは叫んだ。寄り道をしないでまっすぐ帰るというのは約束じゃなくて命令だとわたしはおもったけど言わなかった。シーッシーッシーッ。――ここは壊れかけている。わたしも壊れかけている。そうじゃない、ちいさな音をたてて出口を探る。

幽界より　小林　茂　
　　装幀=亞令
　　A5変（208×138）　96ページ　　2006年11月10日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-689-7 C1092 \2400E

どういうわけか、
まっくらやみを
歩いている。
よくあることだ。
なんだか不思議に心がさわぎ、
なぜかはだしのままで、
ただひたすらに
どこまでも
歩いてゆくのだ。
いつから
そうなったのか
よくわからない、
どうして
そうしているのか
全然わからないのだが…

夕映え　及川　馥　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×138）　72ページ　　2005年5月31日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-638-5 C1092 \2400E

ひとりの女の子が走っている/髪を風になびかせ/わきめもふらずに一散に走っている

老いた母は、
ベッドの上で
見えない猫を見つめている。
あるいは、
見えない<それ>を追って
夕陽のなかを一心に走っているのだろうか。

夕焼け　小焼け　菊地　隆三　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×138）　120ページ　　2000年5月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-485-5 C1092 \2500E

〈老い〉を人生の哀れな終末とポイ捨てするのは勿体ない。夕焼けが美しいように〈老い〉もまた楽しさと豊かさをたっぷりと含んでいる。〈老い〉はわが宝。第8回丸山薫賞受賞

夢々忘るる勿れ　高柳　誠　
　　装画=三嶋　典東　装幀=亞令
　　菊変（220×1４０）　128ページ　　2001年6月20日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-514-2 C1092 \2800E

寓話？　小説？　詩？　それとも夢？　《ああ　あなたは夢を見ていたんですよ》――そうだろうか。一体誰が真実の語り部なのだ。ある時、とつぜん、何事かが了解され、すべてが私を呑み込んで大展開する。

吉岡実アラベスク　秋元　幸人　
　　装幀=亞令
　　四六上製カバー装　500ページ　　2002年5月31日発行　定価4180円　(本体3800円)　ISBN978-4-87995-543-2 C1095 \3800E

その詩人は、吉岡実、と名乗った。彼の紡ぎ出す言葉は多くの人を魅し、彼が創り出す言語世界は人を驚かせた。彼は何者だったのか。その作品世界に潜められた宇宙大の複雑な地紋に様々の角度から光を射てる。

夜の碇の下で　鳩　仁彦　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×134）　116ページ　　2018年6月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-971-3 Cl092 \2500E

影の奥からこちらを窺う者がいる――
私たちを生につなぎとめるものは何か、と。
　　　　　軽やかな足どりはもう不可能だ。
　　　　だが、空はかぎりなく深く、広い。

零度の犬　建畠　晢　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×140）　106ページ　　2004年11月29日発行　定価2860円　(本体2600円)　ISBN978-4-87995-626-2 C1092 \2600E

いつとはなく始まった私たちの時代が切断された夢と忘れ去られる過去を一片一片積んで行く。今日も。私たちの未来はさらに寂しい。遠く、姿のない犬が吠える。人はその遠い虚空を目指すしかない。そして捜しつづける。腕の細い灰色の少女を、姿をさだめぬ誘惑者の後影を。第35回高見順賞受賞

冷麵　青山　雨子　
　　カバーオブジェ=井坂　奈津子　装幀=亞令
　　A5変（198×138）　84ページ　　2018年10月20日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-976-8 C1092 \2500E

槐の花があんなに咲いている。
山椒の種がぱらぱらとはじける。
パッパッと唐辛子の実が飛ぶ。
時が
時が
こんなに降ってくる。

レモン　青山　雨子　
　　カバー写真=渡邊　博史　装幀=青山　咲子、亞令
　　A5変（196×138）　76ページ　　2013年2月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-869-3 C1092 \2500E

雪と霜はどうちがうの。――どうだったろう。問が投げ込まれたうす暗がりの奥にレモンがある。…いや少しちがうようだ。…レモンのようなものがある…レモンに見えるものがある…

廊下で座っているおとこ　L'HOMME ASSIS DANS LE COULOIR　　りぶるどるしおる14　　マルグリット・デュラス/訳=小沼　純一　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　99ページ　　1994年3月10日発行　定価2200円　(本体2000円)　ISBN978-4-87995-328-5 C1397 \2000E

あらゆる装飾をそぎ、極度に凝縮されたポルノグラフィ。じかに見る、見ることができないものをも見つくそうとする「知る」ことについての欲望とその不能性を描く

老梅に寄せて　窪田　般彌　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×142）　114ページ　　2002年11月20日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-559-3 C1092 \2400E

死がない生活は深刻だ/死がない人生は残酷だ/おお死よ　詩の無限の戯言よ！
この世に残るものは何もない/この何もないものが残るだけ

六波羅カプリチョス　飯島　耕一　
　　装幀=亞令
　　四六変函入（190×120）　240ページ　　1999年7月10日発行　定価3080円　(本体2800円)　ISBN978-4-87995-460-2 C1093 \2800E

『暗殺百美人』（第六回ドゥマゴ賞）の詩人による超現実主義長篇ロマン。今は何世紀なのだろうおれは千二百歳なのか八百歳なのか二十歳なのか…愛をよすがに、地球の上をめぐる時間をひっかきまわして、ひた走る、かけ飛ぶ…

露光　りぶるどるしおる72　　高貝　弘也　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　80ページ　　2010年7月30日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-801-3 C1392 \2700E

音なく跳ねる小さな雫のなかに映る影
…生まれ出で誘われ捨てられるはぐれ子…
高貝弘也　の詩が壊さないように、そっと、聞き取る。
…はかなく脆いものの声…
ゆがみもがく生の呻き…
やみがたい　人の性…

露光のさきを、あなたが必死に庇いつづけている。
この世の濡れ縁――　その下で蹲るものを。真っ先に
蔑ろにされたものを………　第48回藤村記念歴程賞受賞

I.W──若林奮ノート　りぶるどるしおる53　　若林　奮　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　290ページ　　2004年5月30日発行　定価3300円　(本体3000円)　ISBN978-4-87995-603-3 C1370 \3000E

洞窟の壁に一本の線を引く――絵を描く最初の人。何万年か前に。なぜそうしたのだろう。彫刻家　若林奮　の観察と思考
あるとき、人は絵を描いた。そして、多くのものをつくり、変更し、消去し、不明のものを繰り返し補充して「現在」に立つ。そのことに自身はどう関わるのか――彫刻家は見る、考える。

わが山川草木　岡田　哲也　
　　装幀=亞令
　　菊変（214×140）　130ページ　　2009年10月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-776-4 C1092 \2500E

苦く冷たい水のなかに、ほんのわずかに捨てがたい味…無人駅のひだまり…まっかな柿…宇治金時…となりのコロ…ビリッケツの子…夢野をはしるオオカミ…又留さんの一本だけの歯…気付きにくい傷…遠い仲間たち…あの日――ことしでなんねんたったかな…

わが祝日に　新延　拳　
　　跋=高橋　睦郎　装幀=亞令　口絵=ヘンドリック・コルネリスゾーン・ファン・フリート
　　A5変（196×138）　126ページ　　2001年12月15日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-534-0 C1092 \2500E

思い出はいつも夕焼けの中…
…この後に瑠璃色の宵がくるのだ
思うに作者は最愛の母を失うことによって過去をふり返り過去を語る地点に立った。（…）過去の美しかりし日日は祝日となった。（…）ふり返り語る時間も祝別された時間になった/高橋睦郎　第27回地球賞、第1回詩と創造賞受賞

惑星の紀行　村山　りおん　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×138）　94ページ　　2003年6月15日発行　定価2640円　(本体2400円)　ISBN978-4-87995-566-1 C1092 \2400E

光が射す、たぶん何億光年も前からの光。この惑星のうえにあって、わたしのかたわらにあって、ただひっそりと黙しているものに。すべての言葉は溶け、すべての記憶は飛散する。沈黙と忘却をくるみこんだ光の粒子が、遥かなサインを見つける。

鷲か太陽か？　りぶるどるしおる45　　オクタビオ・パス/訳=野谷　文昭　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　212ページ　　2002年10月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-555-5 C1092 \2500E

今日、僕は独りきりでひとつの言葉と闘っている。オクタビオ・パス　決死の飛躍。
女の胎で一羽の鷲が翼を広げ、太陽に向かって飛ぶ。鷲は腹を空かせた希望、無数の存在の海・無名の不在の空へと真っ逆さまに墜落する僕の叫びだ――パスの詩と散文。

忘れもの　関根　愛子　
　　装幀=亞令
　　A5変略フランス装（210×144）　140ページ　　2006年3月5日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-665-1 C1092 \2500E

足もとにわだかまるひとすじの光、
それは、わたしの中からほとばし
り出たわたし自身かもしれない…

「おまえは生きて　そこにいていい」

　　　　　　　身をこごめ、掌に光をすくいとる。

私は、エマ・Sを殺した　J'AI TUE* EMMA S.　　りぶるどるしおる7　　エマ・サントス/訳=岡本　澄子　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　157ページ　　1991年6月15日発行　定価1922円　(本体1748円)　ISBN978-4-87995-246-2 C1398 \1748

愛の交感で充填されるはずであった自己の存在完成を、精神の錯乱と自己の肉体を抹殺することにより実現しようと試みる作家の〈エクリチュール〉との真寧な対峙

*アクサンテギュ付きのE

わたしは血　りぶるどるしおる62　　ヤン・ファーブル/訳=宇野　邦一　
　　装幀=亞令
　　四六変（190×120）　128ページ　　2007年2月15日発行　定価1980円　(本体1800円)　ISBN978-4-87995-699-6 C1398 \1800E

私には小さな足と翼がある。静脈の中を走り、動脈の中を飛び回る。
不可思議な声　ヤン・ファーブル
私は外に出る。自分を解き放ち、自分を空っぽにする。

血は生のしるしであり、死のしるしである。血なしに、あるいは、血を流さずに人の生きる日は一日もない。私は自分の無力を、微かな傷跡を残すだけの蝶の力を愛する。

ワルツ　佐野　カオリ　
　　装画=浜田　洋子　装幀=亞令
　　菊変（214×148）　122ページ　　2006年3月10日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-667-5 C1092 \2500E

身中の琴線を弾く曲とともに舞いはじめる〈わたしたちの古びた物語〉。
肉にさわり骨を盗り…待っていたい。
永遠と響きかわす一瞬を踊り狂う〈古びた物語のわたしたち〉。第五回山形県詩人会賞受賞

花冠　原口　哲也　
　　装幀=亞令
　　A5変（210×136）　118ページ　　2013年11月25日発行　定価2750円　(本体2500円)　ISBN978-4-87995-889-1 C1092 \2500E

きみの空、ぼくの時……それらを架橋する深みに身をよせ、過ぎゆくものたちのために光と風で編む花のかんむり

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