December 242002
屋台とは聖夜に背向け酔ふところ
佐野まもる
はっはっは。狷介というのか、世を拗ねているというのか。私にも、こんなふうな若き日がありました。クリスチャンでもないくせに、浮かれている人々が憎らしくもあり、嫉ましくもあり……。屋台のおやじさん相手に、ひとしきり不満をぶちまけて、安酒をあおったものです。文字通りに「聖夜に背向け」酔っていました。でも、当時の本音を叩けば、誰もいっしょに過ごす人がいないので、ただ心寂しかっただけのようでもあります。といって、今でもべつに進んで祝う気持ちはありませんが、楽しげな人々を見て、腹立たしく思うこともなくなりました。クリスマスであれ、何であれ、人は楽しめるときに楽しんでおかないと……、という心境に変化しています。これが、きっとトシのせいというものなのでしょう。その点、我が若き日に比べると、いまの若い人たちはとても楽しみ上手に見え、羨ましいかぎりです。さて、どうでしょうかね。そうはいっても、今夜も広い日本のどこかには、句のように屋台に坐って肩そびやかしている若者が、きっといるのでしょうね。それもまた青春、よしとしましょうや。では、メリー・クリスマス。大いにお楽しみください。『新歳時記・冬』(1989・河出文庫)所載。(清水哲男)
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