November 222004
兵庫県丹南町字牡丹鍋
平石和美
季語は「牡丹鍋(ぼたんなべ)」で冬。猪肉(ししにく)の料理、「猪鍋(ししなべ)」とも。関西で好まれ、肉を野菜と一緒に煮込み、味噌で味付けする。篠山、丹波などに多い。この句が作られたとき(1997)の「丹南町」は多岐郡に属していたが、五年前に篠山町などと合併して、現在は篠山市に属している。句は単に地名を並べたようでもあり、でもまさか「牡丹鍋」という地名はないだろうと思ったけれど、「牡丹」くらいはありそうだと調べてみて、どうやら牡丹以下はフィクションだとわかって、はじめて笑うことになった。つまり「字(あざ)」如何には勝手に当地の名物をくっつけちゃったわけだ。地名にしてよいくらいに、丹南町の牡丹鍋はポピュラーなのだろう。牡丹鍋をいただきながら、ふっとこの洒落を思いつき、心中にんまりしている作者が想像できて楽しい句だ。たまには、こういう遊びもよいだろうと、私もひねってみようとしたが、なかなかうまくいかない。以前住んでいた東京中野にちなんで、「東京都中野区丸井青井町」はどうだろうか。中野駅前には丸井本店があり、経営者は青井さんだ。現在の居住地だと、「東京都三鷹市キウイワイン地区」あたりになるのかな。三鷹市の名物はキウイであり、ワインも作られている。が、やっぱり牡丹鍋には負けるなあ。読者諸兄姉も挑戦してみませんか。『桜炭』(2004)所収。(清水哲男)
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