曖昧模湖のネッシー

夏際敏生



きみの拙文は拝読した きょう、湖水は平らかだ 女たちに伍して 男手ひとつでなんとか沢をキリモリしている 喋々を壁にピン留めする代わりに 床いちめん観葉に資する時を蒔く なけなしの胸ははたいて 性器も失せた木を焚き付ける 刃には葉を、とか打(ぶ)っちゃってね その舌の根の下を水道管はうねり テレビの内外で ニンゲンがめそめそしている 服を着ている 笑いさえしている その上ファチマの糸瓜のと 日本人ったら日本語がぺらぺら! 世界は他界して 蠢かない春、動く自動車 風に揺れる うろの大木 さては肉体分裂症のH氏だ 微笑を荒らげているH氏夫人だ 思想膿漏のその愛人だ なにやってんだ いつも空の下で

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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