詩人のためのInternet入門(Part 1) |
長尾高弘 |
実は私がInternetに本格的にアクセスし始めたのは、18号のWindowsヘルプの文章を書いたあとなので、いきなり知ったかぶりをしてこのような文章を書くのは気がひけるのだが、あれから4ヵ月ほどの間ですっかりInternetに染まってしまった。最初はそんなものなのかもしれないが、面白いのである。そこで、今回も技術的なことにはなるべく触れずに、Internetをどのように楽しむかについて思うところを書いてみたい。 Internetについて説明するときにまず困ることは、それがどういうものかということを説明し出すとキリがないというところである(しかも、一定線より先については、私自身ちゃんと知っているわけではない)。接続形態も様々だし、サービスも様々である。しかし、話をするためには共通の足場が必要なので、最小限必要な範囲で技術的なことにも触れなければならない。ここでは、WWW(World Wide Web)を使ってあちこちのホームページにアクセスするとともに、自分のホームページを作って人に見せるための方法を簡単に説明しよう。私の場合でも、Internetを積極的に使おうと思った動機はWWWであり、InternetとはWWWのことだと誤解されるくらい、人気のあるプロトコルである(プロトコルという言葉についてはまたあとで説明する)。 さて、そのWWWとは一体何なのかということなのだが、これまた正確に説明し出すとキリがない。18号のWindowsヘルプの文章でも簡単に紹介したように、まずはWindowsヘルプやHyperCardとよく似たものだと考えていただくことにしよう。ウィンドウのなかに絵や字がレイアウトされたページが表示され(オーディオデータ、ビデオデータなどを提供しているページもある)、決められた絵や字をマウスでクリックすると、別のページが出てくるいわゆるHyperTextである。ただ、WindowsヘルプやHyperCardなら、すべてのページが1つのマシンのなかに収められているのに対し、WWWは、世界じゅうのありとあらゆるところにページが分散しているというだけの話である。世界じゅうのページが見られるのはなぜかといえば、それら世界じゅうのコンピュータがInternetによって接続されているからだ。そして、大企業や大学、政府機関などのコンピュータは、すべてそれぞれの構内でネットワーク化された上で、全体が他のネットワークと専用回線でつながっている。これがInternetによって接続されている1つ1つのマシンである。 もっとも、家庭や私の会社のような中小企業のコンピュータは、当然そのような形ではネットワーク化されていない。しかし、(1)プロバイダとの契約、(2)モデム(と公衆電話回線)、(3)ネットワークソフトウェア、(4)WWWブラウザの4点セットがあれば、そのようなコンピュータでも、一時的に世界じゅうのコンピュータのネットワーク(Internet)の一部になることができる。そして、諸々の設定が終わって一度軌道に乗りさえすれば、あとはHyperCardやWindowsヘルプを起動するのと同じようにWWWブラウザというプログラムを起動するだけで、世界じゅうのページを見ることができる。 プロバイダとは、ただの孤立したマシンをInternetの一部にするためのサービスを提供する会社のことである。どのプロバイダと契約しても得られる情報は同じだが(ちょっと寄り道になるが、ここのところがパソコン通信ホストとの最大の違いである。パソコン通信の場合には、ホストが異なれば得られる情報も異なる)、その情報を低コストでスムースに得られるかどうかが違う。Internetは複雑なので、プロバイダが提供しているサービスもまちまちだが、家庭のコンピュータからWWWを見たければ、ダイアルアップIP接続というサービスを契約することになる(自宅のマシンからプロバイダのマシンに電話をかけ、電話がつながっている間だけ、自宅のマシンをInternetの一部にする)。プロバイダの詳細についてはInternet専門誌などを参照されたい*1。 モデムは、プロバイダに電話をかけ、プロバイダのマシンと自宅のマシンを接続するための道具で、パソコン通信で使われているものと同じである。電話回線とマシンの間に介在させる。最近のWindowsマシンには、最初から搭載されているが、できる限り高速なものがよい。28800bpsというかなり高速なタイプのものでも、今なら2、3万円で手に入る。 ネットワークソフトウェアは厄介である。複数のコンピュータが情報をやり取りするときには、さまざまなレベルで約束ごとが必要である。約束ごとがなければ、コンピュータは相手が何を言っているのか理解できない。これらの約束ごとをプロトコルと呼ぶ。プロトコルは階層状になっている。たとえば、何秒にどれだけの量のデータを送るかといった約束が確立されなければ、そのデータの形式についての約束をしても無意味である。この場合、データ量の約束は下位のプロトコル、データの形式の約束は上位のプロトコルということになる。通信で使われるプロトコルは、ISO(JISの親玉のようなもの)の規定では7層だが、一般的には5層くらいになるようである。ネットワークソフトウェアは、その土台の方のプロトコルを体現するプログラムである。 Windows 95、Windows NT、MacintoshのSystem 7.5には、標準で必要なソフトウェアがすべて添付されているが、Windows 3.1の場合には、別途入手しなければならない(雑誌の付録などでたいてい用は足りるが)。厄介なのはその設定で、色々設定しなければInternetには接続できないのだが、およそ技術的な知識がなければ一体それらの設定がどのような意味を持っているのかとんと理解できない。しかし、Internet雑誌、入門書を見れば、意味はともかく、しなければならないことだけはていねいに説明されているので、何も考えずに指示されたとおりに設定してしまおう*2。一度設定すれば、その後の接続のときには設定のことなど忘れてしまえる。 最後のWWWブラウザは、繰り返しになるが、WindowsヘルプやHyperCardのようなプログラムである。ただし、マシンがInternetに接続されているという前提のもとに世界じゅうの情報提供者から情報を取ってくるところが異なる。さまざまな種類のものがあるが、Netscapeというプログラムが世界の標準の地位をあっという間に確立してしまった。残念ながら、NetscapeはInternet雑誌の付録などの形では入手できないが、付録に含まれているプログラムを使ってダウンロードすることはできる*3。 ずいぶん紙面を使ってしまったが、これでやっとWWWホームページを見るための準備が終わった。しかし、何をどうやって見るのだろうか? もちろん、答はすでに書いてある。WWWブラウザに表示されたページのなかでリンクが張ってある部分をクリックすればよい。しかし、最初のページはどうやって表示したらよいのか? その問題は、WWWブラウザ自身が解決してくれる。たとえば、NetScapeなら、セットアッププログラムでインストールしたままの状態でプログラムを起動すると、NetScape社のホームページを表示する。 しかし、まだ問題は残っている。NetScape社のホームページからいくらあちこちのリンクにジャンプしてみても、詩と関連のあるページにはなかなかたどり着けないのである。それに、一度試してみれば痛感することなのだが、ページの切り替えには非常に時間がかかる。ジャンプするたびに、リンク情報が指定しているネットワーク上のマシンに出かけていって、ファイルを読むのだからそれも当然である。おまけにWWWのページには、グラフィックデータという重たいものが載っている。そして、PPP接続で転送できるデータは、たかだか毎秒2Kバイトほどだ。途中の接続の状態によっては、転送がぱたっと止まってしまうこともある。結局、1枚のページを見るためには分単位の時間がかかる。できれば、効率よく目的のページにポンとジャンプしたい。 まず役に立つのは、ブックマーク機能である。これは、また見てみたいと思ったページに栞を挟んでおくというもので、NetScapeを初め、多くのWWWビュアがサポートしている。たとえば、NetScapeの場合なら、「Bookmarks」というメニューから「Add Bookmark」というコマンドを選ぶだけで、表示されているページに栞が挟まれる。次に「Bookmarks」メニューをオープンすると、栞を挟んだページのタイトルバーに表示されていたテキストがメニューに追加されているはずである。その項目を選択すれば、目指すページにジャンプできる。また、「View Bookmarks」というコマンドを選ぶと、栞の一覧表がダイアログボックスに表示され、目的のページにジャンプしたり、栞をグループにまとめたり、不要になったブックマークを取り除いたりすることができる。 しかし、栞を作るためには、一度そこに行かなければならない。一度も行ったことのないところに直接ジャンプするためにはどうしたらよいか? 答は、URL(Uniform Resource Locators)と呼ばれるものである。 URLは、<プロトコル>://<接続先アドレス>/<パス>/という形式の文字列である。たとえば、私のホームページなら、http://www.st.rim.or.jp/~t-nagao/である。WWWページの場合、<プロトコル>の部分はかならずhttp(HyperText Transport Protocol)になる。<接続先アドレス>の部分は、サブアドレスを“.”でつないだ形になる。サブアドレスは英文の手紙の宛先と同じで、細かいものから順に指定していく。そのため、後ろの2、3個のサブアドレスは、URLの意味を知る上で役に立つ。私のホームページの場合なら、rim.or.jpの部分である。最後のjpは国名、japanを表わす。イギリスならuk、フランスならfrというわけである。しかし、アメリカの場合は、usを付けないものが多い。この業界では、アメリカが世界である。次のorは、組織の種類を表わす。ac、eduは大学、go、govは政府関係機関、co、comは企業、or、netはプロバイダを表わす。最後のrimは、組織の名前を表わす。rimは私が契約しているプロバイダ、rimnetを表わしている(ついでにその1つ手前のstは、rimnet東京を表わす。rimnetの場合、サービスを開設している都市ごとにそれぞれサブアドレスを使っているのである)。組織名では、たとえば、microsoft、apple、kantei(首相官邸)、u-tokyo(東大)といったものが実在する。最後の<パス>は、<アドレス>で指定されたサブネットワーク(ドメインと称する)で、問題のファイルにたどり着くための経路である。ファイルは木構造で管理されており、木の幹から葉に向かって、<幹(根)>/<枝>/<枝>/.../<葉>とたどっていく。~t-nagaoは、t-nagaoというユーザーの“幹”の部分を指す。プロバイダと契約している個人のホームページは、~<ユーザー名>という形になることが多い。 実は、リンクを使ってジャンプするときも、栞を使ってジャンプするときも、URLは使われている。ただ単に意識しなくても済むだけだ。しかし、WWWビュアをよく見れば、どこかに控えめに表示されているはずである。Netscapeの場合なら、ページ本体を表示している部分のすぐ上に1行分のテキストを入力できる場所が用意してあり、そこに今見ているページのURLが表示される。この同じ場所にURLを手で入力して、リターンキーを押すと、そのURLが指しているページを見ることができるわけだ。そろそろ紙面も尽きてきたので、最後に詩関連のページのURLをまとめて今回は終わりということにさせていただく。 詩関連ホームページのURLリスト
註1 インプレスの「Internet Magazine」1995年6月号には、プロバイダ各社が提供するサービス、料金の一覧、プロバイダの比較記事が掲載されている。 註2 たとえば、「Internet Magazine」1995年7月号には、Macintosh、Windows 3.1のTCP/IP、PPPの設定方法が書かれている。 註3 後述の方法を使って、http://home.netscape.com/に接続すればよい。 |