欠けた月は
するすると無花果の枝をつたわり
いく枚もの眠る葉を病む
カミキリムシの触角は
たましいのくらい韻(ひびき)と交感し
その夜ほっそりととぎすまされる
ああ 結実をする季節のなかで
夢の音色を奏でる無花果よ
熟れきった無花果は
ある夜ぽとりと土に落ち
腐葉土のぬくもりふかく
爛れきった内部をひらく
夢見る卵に似たそのすがたを
そっくり夜更けの中空(なかぞら)に吊るして
眩暈となってつきてゆくもの
ああ カミキリムシよ
今日だってわたしはおまえを想うあまり
うっとりふくらむ無花果の内部に
たくさんの欲情の種子を生みつけ
その無花果にこそ相応しい
夢見る微風の花びらを
ひたすらにそよがせているのだ
Booby Trap No. 1
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