都市を巡る冒険
渋谷・新宿・池袋(一)

清水鱗造



 繁華街を歩いている感じはこちらの状態でまったく変わってくる。渋谷、新宿、池袋は仕事が終わり、飲みに行く街である。ただ、家に帰る前の気分転換でひたすら歩くこともあるのだが、おおむねシンプルな目的でこれらの街にいく。渋谷の場合、場外馬券売り場のほうへ歩くと、二十年ほど前から寺山修司のことがすぐ頭に浮かぶ習慣ができてしまった。しかし寺山の美学を体現する風俗は遠く去ってしまったようだ。喫茶店のテレビで競馬を見ている人たちが日曜にはいつもいる。駅から北西方向に道玄坂を上ると円山町のラブホテルが集まっている街に出る。新宿にも池袋に酒場が集まっている場所、ラブホテルが集まっている場所などの歓楽街がある。田舎では僕は凝視するために道をあるく。というのも、植物を凝視するのが好きだからである。
 もし童話的配置を考えるのなら、「完備している」ところに注目する以外にはないように思える。しかし僕はわざと無駄を人工的に造ることの重要性がいつか気づかれるように思う。
○わざとドクダミやぺんぺん草を集中的に繁茂させる場所をつくる○サンシャインビルには水族館があるが、ビルの上のほうに大きな熱帯植物園をつくり、そこに露天風呂をつくる
 つげ義春の『貧困旅行記』(晶文社)にでてくるような無意味なうらぶれた物たちは、なにかしら安心させるのだから、わざとペンキの剥げた看板を作ってみる、等々。わざと男根や女陰崇拝の祠なども道に配してみる。

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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