神経質な午後
ジャンパーを着た中年男がひとり
花屋の露店の骨組みを解いている
小さく入り組んだ五叉路で
めかくしをされた曲がり角の
真空を感じている電柱の向こうから
老犬を連れた老人が現れる
青いワゴン車が音もなくそこに消えてゆく
世界はいったん そこで
途絶えているのかもしれない
私たちのふかい誤解が
騙し絵のように冬の死角を支えている
冷気の下りた丘の上のどこかで落ちる
巨きな日没の音響
北風がはらむ白のなか
むらがる打楽器よりもおびただしく
擦過する木の枝にうずめられた街
夕刊の文字の森がダンシネーンのように近づく
ねむりから覚めれば
みずべりには壮麗な寺院がある
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