9月1日(月) 鼻を流れる目薬九月のひかる船出 9月2日(火) 鈴虫を放ちわが庭売りにけり 9月3日(水) いなびかり生涯峡を出ず住むか 9月4日(木) 新涼や二人で川の石に乗り 9月5日(金) 定席は釣瓶落しの窓辺かな 9月6日(土) はるばると糸瓜の水を提げてきし
9月7日(日) 一家鮮し稲田へだてて手を振れば 9月8日(月) 合弟子は佐渡へかへりし角力かな 9月9日(火) 村からす戻り果てや秋の空 9月10日(水) ふる里は波に打たるゝ月夜かな 9月11日(木) 陸稲消え六〇万市さがみはら 9月12日(金) 鬼の子に虚子一行の立ちどまる 9月13日(土) わが嫁が鬘買ひたり秋暑し
9月14日(日) 老いよとや赤き林檎を手に享くる 9月15日(月) 月光写真まずたましいの感光せり 9月16日(火) 鶏頭のどこ掴みても剪りがたし 9月17日(水) 台風去る花器にあふるる真水かな 9月18日(木) 槇の空秋押移りゐたりけり 9月19日(金) 寂鮎を焼けくちびるの褪せぬ間に 9月20日(土) シベリヤという菓子の歳月鉦叩
9月21日(日) 颱風の心支ふべき灯を点ず 9月22日(月) 迎へ水足し野井戸汲む秋の昼 9月23日(火) 南無秋の彼岸の入日赤々と 9月24日(水) 子は電柱の裏側通る鰯雲 9月25日(木) このごろの蝗見たくて田を回る 9月26日(金) 銀漢や三つの国の銀貨持ち 9月27日(土) かの岡に稚き時の棗かな
9月28日(日) 物言へば唇寒し秋の風 9月29日(月) 石榴割れる村お嬢さんもう引き返さう 9月30日(火) みづうみのみなとのなつのみじかけれ
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