川について



むかし、 川は、 山から海へ、 ではなくて、 海から山へ、 流れていた、 という。 ときどきは、 山をつき抜け、 空高く、 かけのぼることも、 あったかもしれない。 そのようなときには、 長い胴は、 右に左に、 のたうちまわり、 バサッ バサッ と、 しぶきをあげ、 赤く燃える眼は、 草木を、 焼き払っただろう。 人々は、 恐れ、 おののいたに、 違いない。 しかし、 それも今は昔。 川は、 山から海へ、 流れるように、 なったのだから。 でも、 昔と今とで、 本当に、 違いがあるのだろうか。


(C) Copyright, 2003 NAGAO, Takahiro
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