一身



とうとう食糧が尽きた。 どこに行っても何もない。 数日後にじいさんが死んだ。 そんなことはしたくなかったが、 背に腹はかえられないということで、 死体を食べた。 骨までしゃぶりつくしても、 すでにガリガリに痩せ細っていたので、 食べられるところはほとんど残っていなかった。 数日後に限界が来た。 父さんが食糧を探しに出かけたあと、 みんなで相談した。 共倒れになるくらいなら、 誰かに犠牲になってもらうしかない。 父さんが手ぶらで帰ってきたときに、 心臓を突き刺した。 じいさんよりは食べられるところが多かった。 数日後に限界が来た。 父さんを食べてから、 母さんは一歩も外に出なかったが、 兄さんがちらりとこちらを見てから、 母さんの心臓を突き刺した。 兄さんが左半身を食べて、 私が右半身を食べた。 数日後に限界が来た。 目覚めると、 兄さんが首を吊って死んでいた。 一人で兄さんの死体を食べた。 一人で食べたので、 限界が来るのを数日延ばすことができた。 その通り 私は殺人者である。 しかし、私の身体には 祖父と父と母と兄の身体が含まれている。 私の身体は私一人のものではない。 食べるものに困ったことのないお前らに 私たちを殺す権利があるのか?


(C) Copyright, 2000 NAGAO, Takahiro
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