ちょっとへまをして入り浸ってしまった病院では、 消化器内科という診療科目のせいか、 患者はほぼ全員中高年、 五十代の私でも、もっとも若い方だ。 医師と看護師はみな若くて、 私から見て子の世代、 一部の入院患者からすると孫の世代かもしれない。 その子どものような孫のような人たちに、 管理されている。 患者に気を遣って、 優しい声をかけて、 少しでも明るくなるように、 しっかりと笑顔を作って。 ストレスが溜まるのは、 間違いなく彼らの方だよな。 体温や血圧を測ってもらったり、 問診のあとで腹を触診してもらったりするたびに、 彼らの若さを、 張りのある肌を、 まぶしく見上げてしまう。 三十年近く前に、 私が同じ病気で入院した頃には、 君たちはまだ小さな子どもだったか、 生まれてなかったか。 彼らはそれをデータとして難なく処理しているけど。 数日たつと、 私のような者でも、 調子がよくなってきているのを 身体のなかから感じる。 前に入院したときと同じようなペースだ。 自分が思っていたよりも、 生きる力というようなものが、 まだ残っているのかもしれない。 入院しているのに、 まだまだ若いという 気分になってくる。 自分には自分の姿が見えないからね。 次の入院が三十年後 ってことはたぶんないだろう。2013年6月