錠剤を呑み込もうとして水を飲んだら、 水だけなくなって錠剤が残ってしまう。 特に錠剤が大きいときにはありがちなことだけど、 今も口に錠剤が残って、 そうしたら、 去年死んだ犬のおじゃぐを思い出した。 毎年春から秋にかけて、 おじゃぐもフィラリアの予防薬を呑まなければならなかったけど、 自分では呑めないから、 私がおじゃぐの口を開けて、 大きな錠剤を入れ、 指でのどの奥の方に押し込んでいた。 ごっくんとのどが動いて、 口のまわりを舌でぺろりとなめたら成功だけど、 器用に舌を使って、 えっさえっさと前の方に押し出して、 ぺっと吐き出すことがよくあった。 たしかにクスリなんか呑みたくないよ、 という顔をしていた。 口をこじ開けられるのだから、 無理もない。 こっちも指をかじり取られちゃいけないので、 (おじゃぐはそんな乱暴なことはしなかったけど)、 ちょっと気持ちを集中させて、 反対の手でおじゃぐのあごの奥をしっかりつかんで呑ませていた。 今、口の奥に残った錠剤が、 ちょっと融けかかっているのを感じたとき、 おじゃぐに薬を呑ませて、 おじゃぐのつばでべとべとになった指を思い出した。 毎年何度か呑ませるのを忘れていたけど、 死ぬまでフィラリアにかからなくてよかった。2013年7月