宙吊り生活者



これからは 糸にぶら下がって 生きていくんだ そう思ってから 何年たったことだろう 目の前にぶら下がっていた糸に たまたま気付いた ただそれだけのことだった 身体に巻き付けてみると 糸は不思議にぴたっとなじんだ 試しに地面から足を離すと 身体はそのままふわっと浮いた これは面白い なにもかもが小さく見える なにもかもが足の下に沈んでいる そう思ったのはつかの間のことだった もう二度と地面に戻ることはできなかった あのときのことを思い出すと いつも少し苦い気持ちになるのだ


(C) Copyright, 1998 NAGAO, Takahiro
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