重力



いつでもとてもねむいので たとえば電車に乗ればコロリ と眠ってしまうくせに 夜 ふとんのなかにもぐりこむと 身体の重さが気になってねむれない 下になってしまったほうが 上になっているほうの重さに 耐えられず 交替してくれ 交替してくれとうるさくせっつく ので それではと寝返りをうって 反対にひっくりかえると それまで 楽していたほうがだんだん 苦しくなってきて しまいに 替わってくれえと悲鳴を上げる かくも重力は強い力なのだと 感心しているうちに夜は白々と 明けてきて これはまずいと 下になっているほうのうるさい 文句を聞かないよう 聞かないように心がけて やっと眠るとすぐに朝がきて 起こされる あまつさえ 下になっていたほうの腕が しびれていたりして 睡眠が 身体の疲れを取るものだとはとても 信じられない思いで一日がはじまり いつでもとてもねむいので たとえば電車に乗ればコロリ と眠ってしまうのだが なぜそのときには重力を感じない のだろうか


(C) Copyright, 1998 NAGAO, Takahiro
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