報い



仕事が少なくなってくる。 単価が下がってくる。 二分の一から三分の一、 四分の一を通り越して五分の一まで。 むかし経済学の教科書を読んだときにはわからなかったが、 これがデフレというものだ。 余裕たっぷりというわけではなくても、 少しは貯蓄もできた生活から、 その貯蓄を使い果たして、 日々赤字が増えていく生活に転落する。 転落だなんて陳腐な言葉だけど、 本当に落ちると身体中が痛いんだぜ。 同じ仕事をしても、 生活できなければ、 働いたことにはならないのだ。 慣れない仕事を新しく始めても、 五分の一と同じようにしかならない。 働く時間を増やそうといっても、 五倍はおろか二倍にだってできるわけがない。 決して元には戻れない。 まわりを見回しても、 同じような街に同じような人々が歩いているだけで、 何かが変わったようには見えないのに、 自分の手から金が離れていくときに、 以前とはもう違うんだということを思い知らされる。 金は毎日離れていくから、 毎日その思いをかみしめる。 何も変わらないように見える人々が遠くに消えていく。 そういう思いがあることを知らなかったことの これが報いというものなんだろうなあ。


(C) Copyright, 2007 NAGAO, Takahiro
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鈴木志郎康氏評
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