物言えば



物言えば唇寒し秋の風って言うけどさ、 最近本当に息苦しくなってきたと思わない? もう二年前になるけど、 さいたま市の九条俳句の問題があったよね。 公民館の俳句教室で会員が互選した作品が 毎月の公民館だよりに載ってたんだけど、 「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」 って句が選ばれたときには、 公民館が掲載を拒否したって話だよ。 さいたま市は、市内の全公民館に 「世論が大きく二つに分かれる問題で、 一方の意見だけを載せられない」 などと説明しなさいっていう マニュアルを送ったんだってさ。 公民館だよりに掲載される作品は、 市民の作品であって、 市の作品じゃないのにさ、 これって変な話じゃない? 色々な意見を自由に言えるのが、 民主主義社会ってものじゃないの? それに、掲載拒否された俳句は、 憲法を守れってものだよ。 憲法ってのは、 政府の暴走を防ぐために、 市民が政府に守ることを義務付けている法でさ、 その法を守れという俳句の掲載を拒否するなら、 市が市民そっちのけで暴走しますよ って言ってるようなものじゃん。 おっかないったらありゃしない。 また、あの戦争の時代を繰り返すことになるよ。 何も言わずに国のために死ねって時代さ。 その点、 区民文化祭でこの詩をそのまま発表できる横浜市は、 さいたま市よりはいいのかもしれないね。 だけどさ、 育鵬社の社会科教科書を使うのは止めた方がいいよ。 歴史の現実を見ないで、 日本はいい国だ、 よその国より優秀だって自慢したところで、 ろくなことはないよ。 故事ことわざ辞典によると、 物言えば唇寒し秋の風って言葉は、 もともと松尾芭蕉の「座右の銘」にある句で、 人の悪口を言えば、 なんとなく後味の悪い思いをする、 ってことなんだってね。 この句の前には、 「人の短をいふ事なかれ己が長をとく事なかれ」 と書いてあるらしいよ。 よその国の人を馬鹿にして、 日本のあることないことを自慢するようなことは、 しない方がいいよってことでもあるよね。 昔の人はちゃんと正しいことを言ってるわけさ。 もちろん、おれだって、 こんなことを書いて発表して、 後味が悪くないわけはないんだよ。 ただ、言うべきことを言わないで、 口を塞がれるのは嫌なだけさ。
[都筑区民文化祭パネル]


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