むかし、 川は、 山から海へ、 ではなくて、 海から山へ、 流れていた、 という。 ときどきは、 山をつき抜け、 空高く、 かけのぼることも、 あったかもしれない。 そのようなときには、 長い胴は、 右に左に、 のたうちまわり、 バサッ バサッ と、 しぶきをあげ、 赤く燃える眼は、 草木を、 焼き払っただろう。 人々は、 恐れ、 おののいたに、 違いない。 しかし、 それも今は昔。 川は、 山から海へ、 流れるように、 なったのだから。 でも、 昔と今とで、 本当に、 違いがあるのだろうか。