休み



他人が寝ているときに起きていたい、 外の空気を吸いたい、 五十近くなっても、 そういうことを思うわけだ。 家族が旅行に出かけていていないせい? いればふらふら出かけたりしないよな。 好き好んで家族が壊れるようなことはしないさ。 三十年前は別の家族に入っていた。 その家族はあまり好きじゃなかったな。 でも家族は家族で、その家族を守りたい人たちがいた。 もう死んじゃった。 だからその家族はもうおしまい。 どの家族も、 いずれはなくなる運命さ。 でも今の家族は壊したくない。 いずれなくなるのがわかっていても、 いつまでも続くと思っていたい。 今日は一時お休みだけどな。 家族がいなくて淋しいのかね? でも何となく解放感もあって、 だからこうして外の空気を吸っているんだろう? たった一人で、 夜の海に来てどうすんだよ。 ただ不気味なだけじゃないか。 夜の海が不気味なのは、 生きているものの影が感じられないからだろうか、 生きているものの存在を感じるからだろうか。 なんちゃって、 車のボディに守られているくせに、 不気味もなにもあったものじゃないよ。 車を停められるところもないから、 感じたくても何も感じられないや。 気がついたら日付が変わって、 誕生日になっていたよ。 お手軽に海を見て、 夜が明ける前に無事に空っぽの家に帰ってきちゃったよ。 で、これから寝るわけだが、 寝る前に思い出したくないことばかり思い出して、 なかなか寝られないんだろうな。 そして早く眠りから引き戻される。 他人が起きているときには寝ていたいんだけど。


(C) Copyright, 2007 NAGAO, Takahiro
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鈴木志郎康氏評
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