さらに
考えてみれば、死んだのはKだけじゃない。
別のKもTもまた別のTも死んだ。
KとTは知り合いでTと別のKも知り合いだが、
Kと別のKは互いに知らない。
別のTはKも別のKもTも知らない。
別のTのときには、内輪向けに
追悼文のようなものも書いたが、
今は抹殺したい。
結局、あとで考えることはいつも同じなのだ。
K以外は通夜にも行った。
名前だけ知っていて面識のないAの通夜にも行った。
Oが電話をかけてきて、
おろおろした声でAが死んじゃったよと言い、
お前も当然行くんだろという勢いだったので、
つられて行ってしまったのだ。
通夜のあと二次会もあって三次会さえあったのだが、
全部行ってしまった。
Aはある党派に属していたことがあり、
それをやめてからしばらくして
ある労組でも働いていたことがあったので、
二次会には、それぞれ主張の異なる
雑多な人々が集まり、自己紹介などをした。
あの野郎、よく言うよ、
などと耳打ちしてくる、ひそひそ声などがあった。
私は、実はAとは面識がないんだけど、と正直なことを言った。
あとで、Oが、
あれ、お前Aのこと知らないんだっけ、と言った。
Oはいいやつだ。
(C) Copyright, 1998 NAGAO, Takahiro
|ホームページ||詩|
|目次||前頁(その後)||次頁(りんご)|
PDF版