ついに眼だけの存在となって、 ふわふわと漂っていった。 前と同じように、 日の光がさんさんと降り注ぎ、 草木が風になびいている。 音がしないというのは、 不思議なものだ。 何もかもが、 まるで平和であるかのように見える。 川を渡ると、 人の姿が見えてきた。 あの男もいる。 あんなことをしたのに、 何事もなかったような顔をしている。 口を動かしているから、 何かしゃべっているのだろう。 おれのことなど、 眼に入らないらしい。 でも、こうなった今は、 もうどうでもいいことだ。 欲望というものもなくなったらしい。 何をしたらよいのかわからないままに、 何を見たいということもなくて、 さまざまなものが眼に入っては消え、 ただいつも何かが見えていた。