エディタには、マクロ機能とか、一括変換とか、役に立つ機能があれこれついています。しかし、それらを使いこなすには、ちょっと勉強しなければなりません。また、使いこなせるようになっても、その機能がどうしても好きになれない場合もあります。アドオンとしてPerlやRubyが使えたらいいのに、とか、簡単なコマンド行ツール(sort、uniq、grepなど)を組み合わせて作ったパイプラインが使えたらいいのに、と思う人もいるでしょう。
PCKはそのような人のためのツールです。
たとえば、太字の指定のために、HTMLのタグを使っていたとします。<b>とか</b>とかいうものをいちいち手で入力するのは面倒ですし、これらは[Shift]キーを必要とするので入力ミスもよく起きます。そこで、次のような簡単なPerlスクリプトを使うことにします。
s{^}{<b>};
s{$}{</b>};
先頭に<b>を挿入し、末尾に</b>を挿入するというだけのものです。これにbold.plという名前を付けてファイルにしておきます。PCKでPerlプログラムを実行するには、珠(perl)を起動します。珠(perl)をよく使うのなら、設(pcksetup)を使ってデスクトップアイコンを用意しておけばすぐに起動できます。珠(perl)のデスクトップアイコンがなくても、エクスプローラで何かのフォルダを右クリックしてコンテキストメニューをオープンすると、「ここで「管」を実行」というものが入っていますので(下図参照)、まず管( pipe line)を起動してから、管( pipe line)ダイアログの「追加」ボタンをクリックすると、GUIフロントエンドのリストが表示されますので、珠(perl)の項目をダブルクリックすれば、珠(perl)が起動します。
珠(perl)が起動したら、「スクリプト」タブで「スクリプトファイルを使う」を選択し、「選択」ボタンをクリックすると、下図のようなダイアログがオープンされますので、bold.plファイルを選択します。次に、「オプション」タブで「-p: 暗黙のループとprint」をチェックし、「入出力」タブで「入力」と「出力」の両方の「クリップボード」をチェックします(入出力のクリップボードは、タブを変えなくても、ダイアログを右クリックしたときに表示されるコンテキストメニューで選択できます)。これで上記Perlスクリプトを実行する準備は整いました。
ここで、ちょっと動作を試してみましょう。この行の先頭の「ここ」を選択してから、マウスを選択の上に置いて左ボタンをクリックしてしばらく待ちます。すると、マウスカーソルの矢印の下に四角いマークが追加されます。このマークが出たら、選択したテキストをドラッグできるということです。マークが追加されたら、マウスボタンを放さずに珠(perl)のウィンドウまでマウスカーソルを動かし、珠(perl)の上でマウスボタンを放します(四角いマークを表示させてから、マウスボタンを放すまでをドラッグアンドドロップと言います)。すると、珠(perl)の「設定」ダイアログボックスの「結果出力用エディタ」がぱっとオープンして、
<b>ここ</b>
と表示されるはずです。「オプション」タブで「-p」を選択するのを忘れたりすると、正しく表示されません。正しく表示されるようになるまで、珠(perl)のコントロールを操作しましょう。
正しく動作することが確かめられたら、テキストエディタがいちいちオープンするのは邪魔になりますので、珠(perl)の「設定」ダイアログで「標準出力のためにエディタを起動しない」をチェックしましょう。そして、メインウィンドウのコントロールがない場所で右クリックをします。コンテキストメニューの一番下に「縮小表示」という項目がありますので、それを選ぶと、珠(perl)はデスクトップアイコンより少し大きいくらいの小さなウィンドウになります(下図参照: 実物大)。このウィンドウを、エディタのツールバーの横に置いてみましょう。少々ブサイクですが、ツールが1つ増えたということになります。もちろん、エディタウィンドウを動かしたときにツールバーは動きますが、小さな珠(perl)は動きません。でも、テキストエディタウィンドウの位置というのは、そうひんぱんに変えるものではありませんよね。
さて、この小さなウィンドウは、入力フォーカスを失っても、エディタウィンドウの陰に隠れません。ですから、エディタの操作中、常に見える状態になっています。<b></b>で囲みたいテキストが出てきたら、テストのときと同じように、マウスでそれを選択し、小さな珠(perl)にドラッグアンドドロップします。ドラッグアンドドロップは入力フォーカスの切り替えをともなわない操作ですから、キーストロークはテキストエディタに送られるようになったままです。ここで、キーボードの[Ctrl]-[V]を押してみましょう。Windowsスタイルガイドに従って作られているエディタであれば、クリップボードからのペーストが行われますので、選択したテキストの前後に<b>と</b>が追加されます。ドラッグアンドドロップとペーストのための操作が必要な分、ツールバーボタンよりちょっと面倒ですが、うんと面倒ということはないだろうと思います。
ドラッグアンドドロップは嫌いだという場合には、選択したテキストをクリップボードに送り、珠(perl)の「Go」ボタンをクリックします。クリックすると、入力フォーカスが珠(perl)に移ってしまいますので、エディタをクリックして入力フォーカスを戻してからペーストすれば、同じように<b>、</b>の追加が行われます。この操作は、入力フォーカスの切り替えの部分がちょっと面倒ですが、やはり面倒すぎるほどではないだろうと思います。
Perlスクリプトを書くのは1度だけで済むことですし、GUIフロントエンドのロード、セーブ機能を使えば、オプションの設定までファイルに保存できますので(ただし、入出力の設定はいちいちやり直す必要があります)、2度目以降の準備は楽になります。作者は、このような絆創膏(小さいGUIフロントエンドはそんな感じに見えると思いますが)をエディタのまわりに常時3、4個漂わせております。適切なラベルがついていないので、どれがどのコマンドを表しているのかわかりにくいかもしれませんが(でも、GUIフロントエンドにフォーカスを与えて「Go」ボタンの上でマウスを漂わせると、ツールチップにコマンド行が表示されます)、便利に使えると思っています。
小さいGUIフロントエンドには、別の使い方もあります。たとえば、テキストファイルをHTMLファイルに変換する通常の(PCK用ではない)バッチファイルを作り、そのコマンド行を行(command line)にセットし、行(command line)を縮小表示にしておきます。ある程度文章を入力してから、小さな行(command line)の「Go」ボタンをクリックし、Webブラウザに変換後のHTMLファイルを表示すると、変換後のHTMLがどのようになっているかをすぐに確かめられるわけです。HTMLファイルを1度ブラウザに表示したら、それをクローズせずに、「Go」ボタン→ブラウザの再表示という2つの操作だけで、テキストからHTMLへの変換の結果を確かめられます。
ver.2.3.0.0でこのような縮小表示機能を追加したので、1度に使えるGUIフロントエンドが増えたということが言えるだろうと思います。